特集 2025年10月18日

さよならシチューうどん

シチューうどんを再現してみよう

ここから先は余談だが、あのシチューうどんの味をしっかり覚えているうちに、家でできる限りの再現してみることにした。

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材料は茹でうどん、牛バラ肉薄切り、タマネギ、ジャガイモ。あとは塩と水だけ。

シチューうどんの味の決め手は、なんといっても当日仕込んだシチューに前日残しておいたシチューを継ぎ足すという特殊な行程にあるのだが、それを家庭で再現するのはさすがに大変。

そこで細かく刻んだタマネギとジャガイモを加えることで、それらが溶けてスープに奥行きを与えるのではという実験をする。

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具にするもの、スープに溶けさせるものでサイズを変えて野菜を切った。塩分濃度は水の1%。

 

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30分後に味見をすると、そのスープはまったくコクが足りない塩水だった。そして具のジャガイモはまだ硬いのにタマネギは全部煮えすぎている。
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ならばとお玉でつぶして、これを「昨日のシチュー」とする。
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別の鍋で30g前後にカットしたジャガイモだけを50分ほど塩水で煮て、そこに大振りに切ったタマネギを加えて10分煮るという時間差攻撃を決めて、「昨日のシチュー」と合わせて深みを与える。
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うどんを茹でる。丼はこのお湯を注いで戻して温めておく。
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麺を茹でている間に牛バラ肉をシチューで煮る。
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ちょっとスープが濁ってしまった。
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ついでにかやく御飯も作ってみた。お米3合にニンジン60g、ゴボウ30g、油揚げ1枚、白だし20g。色が薄いから白だしよりめんつゆがいいかも。

こうして「シチューうどんとかやく御飯の小」セットが完成したのだが、わざと潰したジャガイモの澱粉のせいか白濁したシチューは、どこか奥行が不足していて物足りない。

こうして自分で真似して作ってみると、タマネギとジャガイモという適切な加熱時間が違う野菜を、形を保った麺類の具にする難しさがよくわかる。どう考えてもオペレーションが大変そうだ。

やっぱり簡単に思える料理ほど難しい。店主しか知らないコツがあと10個くらいはあるのだろう。もうあの味は食べられないのだという寂しさを黙って受け止めつつ、うま味調味料を二振りした。

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パっと見た感じはそれっぽいけど、ジャガイモやタマネギを潰したことによるあざとさが濁ったスープに表れている。かやく御飯はまだ思い入れが薄い分、自分にケチをつけずおいしくいただけた。
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本物と比べるとやっぱり違うけど、それは当たり前のことなのだ。

この厳しい自己評価は、あくまで「あずま食堂と比べると……」という話であり、オリジナルを知らなければ十分おいしいはず。

これでもシチューうどんが持つ唯一無二の雰囲気や方向性はそれなりに伝わると思うので、興味のある方は試してみてほしい。本物はその味の倍くらいすごいんだけど。


あづま食堂のシチューうどんを紹介した「大阪の奥深き食文化を巡る旅」をお女将さんに献本させていただいた。社交辞令かもしれないが、記念になると喜んでもらえたことがすごくうれしかった。やっぱり大阪まで来てよかった。

ありがとうございました! そしてお疲れ様でした!

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じっくり二時間くらいインタビューしたかった。
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