適材適所という言葉がある
二通りを食べ終えて、頭の中のスクリーンに大きく「適材適所」という四字熟語が映し出された。
その人の適性や能力に応じて、それにふさわしい地位・仕事に就かせるという意味だ。
ほんとうに、まったくもってそのとおりだねと深くうなずきながら、のりたまごはんとゴールデンチョコレートをもう一度食べて一日を終えた。

ゴールデンチョコレートというドーナツがある。
シンプルなチョコレートドーナツに、商品名の由縁たる黄金色の小さなクランチがトッピングされている。
このクランチがほの甘くてカリカリしていて、ドーナツのまったりしたチョコレート味と相まってとてもおいしい。最近このクランチが卵黄と砂糖から作られていると知った。
卵から作られた甘くておいしいトッピングと聞いて思い浮かぶものがもうひとつある。のりたまだ。
のりたまの「たま」とゴールデンチョコレートの「ゴールデン」。ふたつが入れ替え可能だとしたら、大スクープなのではないか。
突然降って湧いた大スクープの予感に気持ちがはやる。
入れ替え可能かどうか、実際にやってみて検証したい。
のりたまの「たま」を取り出してチョコレートドーナツにかけてみよう。
のりたまから「たま」だけを選り分けていく。
一粒ひと粒つまんで選り分けているうちに、だんだん頭がボーッとしてくる。霞の向こうに、ほかほかののりたまごはんが見えてきた。
のりたまごはんは何故あんなにおいしいのだろう。
ひとくちめを食べたときに「あまい!」と感じる。それがすごいと思う。だってふりかけってお米に味のフィルターをかけて食べ飽きないようにするためのものだろう。
じんわり静かな波みたいに広がる、お米の甘みと、玉子の甘み。
たまとチョコレートドーナツの組み合わせも、ほろほろのたまとふかふかしっとりのチョコレート生地とが溶け合っておいしいと思う。エクレアのカスタードとチョコレートの組み合わせもすばらしいものだしね。
ゴールデンチョコレートに比べると色味が鮮やかで、ハロウィンの季節なんか特に似合いそうだ。さっそくひときれ食べてみよう。
ひとは驚きのあまり表情が無くなることがあるらしい。
口の中で、たまとチョコレートが大暴れしている。
ふかふかのたまが舌の水分をさっと奪う。水分を奪う代わりにじわっと塩味を残して走り逃げようとする。そうか、たまはしょっぱかったのか!と、衝撃が脳に到達する頃にはチョコレートが逃げるたまを捕らえて、そのまま背負投げた。一本!勝負あり!
レフェリーが(誰だ)チョコレートの腕を掲げようとするも、既にチョコレートは次のたまを追いかけている――。
咀嚼し終えたときにはチョコレートが全てのたまをなぎ倒し、丸め込み、いわゆる「甘じょっぱい」という状態になるのだが、塩キャラメルやチョコかけポテトチップスにはない、荒々しさが垣間見えた。
急に手のひらを返すたまも、力で押し切るチョコレートもこわいと思った。饅頭こわい的な意味でなく、純粋に食べものをこわいと思ったのは初めてだ。
のりたまのたま以外と、ゴールデンチョコレートのゴールデンをかけ合わせた「のりゴールデンごはん」も試してみた。
のりたまごはんと同じく、一口目の印象は「あまい」。しかしこれは砂糖の甘みだな。お米、カリカリの砂糖、海苔、鰹…それぞれの味が好き勝手に踊り、そして順番に退場していく。
アリーナ会場で行われたライブの後方席で、ステージを映し出すモニターを一生懸命眺めているみたいだ。自分の口の中での出来事なのに、なんだか現実味がない。
二通りを食べ終えて、頭の中のスクリーンに大きく「適材適所」という四字熟語が映し出された。
その人の適性や能力に応じて、それにふさわしい地位・仕事に就かせるという意味だ。
ほんとうに、まったくもってそのとおりだねと深くうなずきながら、のりたまごはんとゴールデンチョコレートをもう一度食べて一日を終えた。
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