デジタルリマスター 2022年8月18日

電車のドア際不動産を評価する(デジタルリマスター)

電車に乗って、座席が空いてなかったらどこに陣取るか。私は真っ先に「ドア際の三角コーナー」(上の写真)ですね。並んだ座席の真ん前に立って、座った人の視線を浴びるのは耐え難い。ドア近くの広いスペースは吊り革がない。断然「三角コーナー」。たいていの人もそう考えると見えて、三角コーナーはいつも取り合いだ。

嗚呼、魅惑の三角コーナー。全身を壁に預け、流れる景色さえ堪能できる三角コーナー。ひとりになれる三画コーナー。乗降時にはちょっと邪魔だが三角コーナー。

そんな三角コーナーをいろいろまわって、どの電車の三角コーナーが居心地がいいか、評価してきた。保存版「三角コーナー物件情報」です。

2005年10月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

前の記事:ヤクルト容器でシャンデリアを作る(デジタルリマスター)

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3時間で20路線

とにかくいろいろな電車に乗ろうと、ニフティのある大森から主に私鉄を乗り継ぎ、池袋まで北上してみた。

同行をお願いした編集部古賀さんが池袋経由で帰省するというので、とにかくそこまで乗れるだけの電車に乗ってみようというわけである。もし自分たちにGPSが取り付けられていたら、ものすごく奇妙な乗り継ぎの軌跡が描かれ、怪しまれているに違いない。

途中の行程でも、三角コーナーで思い思いにくつろぐ人が見受けられた。

(編集部注:2005年当時、ニフティ株式会社は大森にオフィスがありました)

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自分の部屋のようにくつろぐ人々。
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こちらはぜひとも三角コーナーが必要な人。

くつろぐ人々のお邪魔をしてはならない。混んでいては取材もしにくいし。ということで、午後2時から5時まで、比較的電車の空いているであろう時間に取材を行った。

以下のようなことも行うので、本当に、お邪魔にならないようにしないといけない。

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奥行きはバーの内側からパーティションまでを測る。
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幅はパーティションの幅をほぼそのまま採用。

さて、いろいろまわった中から当社の厳選した物件のみをご紹介したいと思います。

ドア際三角コーナー不動産 物件一覧

こんな方に
オススメ
 
交通 賃料 敷/礼 間取り 専有面積
(平方cm)
広い物件をお探しの方! 京浜東北線他、JR 130円 なし/なし 1DK 940
東急東横線  120円 なし/なし 1LDK 1108
地下鉄半蔵門線 160円 なし/なし ワンルーム 606
小田急線 120円 なし/なし 玄関のみ 245
デザイナーズ物件をお探しの方 東急世田谷線 140円 なし/なし ワンルーム
(ロフト有)
292
都営大江戸線 170円 なし/なし ワンルーム 1078
京王線 120円 なし/なし 1K 不明
京王井の頭線 120円 なし/なし ステューディオタイプ 253
古くてもかまわない!昔ながらの落ち着いた物件を、という方 都営新宿線 160円 なし/なし 1K(6畳) 660
西武線 140円 なし/なし 1K(6畳) 528
東武線 140円 なし/なし 1K(6畳) 725
狭いほうが落ち着く!という方 東急多摩川線 120円 なし/なし 2輪駐車場
のみ
168
東急大井町線 120円 なし/なし 門のみ 32


※賃料は、もちろん「初乗り」運賃です。これだけの賃料で、一駅分のリラックスがあなたのものに。(取材2005年時点)
※間取りは、もちろん適当です。 だいたいこんな雰囲気というのを感じていただければ。ステューディオって何だ。

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とにかく広い物件をお探しの方へ

よくおいでくださいました。当方自慢の広々物件を厳選してご紹介します。将来お子さんが生まれても大丈夫。ベビーカーもらくらく横付けできますし。

またお一人暮らしで会社と家往復するだけの生活、という方にも、くつろげる背板が作りつけてございますので、通勤時のリラックスをお約束いたしますですよ、はい。

京浜東北線

陣取れるのはこれくらい。

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FAXで詳細を取り寄せてみました(嘘)。「三角コーナー」といいながらも、図面は四角で。
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エルゴノミクスに基づいた出っ張り(か?)
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ほら、しりのラインにぴったりです。

快適だ。何が快適って、面積も今回調べた中で3位の広さだし、背もたれに出っ張りがついていて、それがちょうどおしりを乗っけられる高さにあるのだ。

どおりで、ニフティに打ち合わせに行く度に途中で激しく眠くなると思ってたら、こんな快適を提供されていたのか。なら仕方が無い。

背もたれがポール状でなく板状であるため、席に座る人とコーナーに立つ人との「ひじ と しり との小競り合い」を平和的に解決できる。

この秀逸な三角コーナーはJRの新型車両にはおなじみのものである。が惜しいことに、下の2路線は背もたれは合格であるものの、面積の点では京浜東北に劣る。

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快適なので体が全体的にゆるんでいる。気がする。
総武線 
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専有面積:647.5平方cm。
山手線 
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計測忘れたが、ほぼ総武と同じと見ていいだろう。

ところでちょっと話はそれるが、JR新型車両に乗るたび、私はある違和感を感じるのだが、皆さんはどうだろうか。

下の写真は、ドアの足元を、なるべくドアの断面がわかるように撮ったものだ。足元に行くにつれてどれだけ手前(つまり車両の内側)に入り込んできているか見て欲しい。

このドアの前に立つと、太いチューブの中にやっと立ってるような錯覚を起こし、落ち着かないことこの上ないのだ。妙な浮遊感を感じ、居心地が悪いのです。

では話を戻して、ふつうに広めの物件をご紹介。

東急東横線

オーソドックスな間取り

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最後のは「なぜか おちつく」という意味です。

背もたれはなく、「座るとひじの高さまでの板+ポール」というオーソドックスなタイプだが、まっすぐに区切られシンプルな間取り。奥行きがあるので安心できます。凝った間取りも面白いですが、こういうシンプルなところに人は帰ってくるのでしょう。適当なことを言い続けます。

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A5サイズの本も楽に読めて、店子さんも満足のようです。
地下鉄半蔵門線 

あら長い

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地下鉄なので、日当たりは悪いです。当然です。

背もたれが変則的な形。これは座るほうの人の便宜を図ってのことと思うが、立つほうにしてみれば中途半端この上ない。

でもまあ、ポールタイプよりはくつろげそうだ。

京都の町家にあこがれる方は、思わずふらふらとこのスポットに吸い寄せられるに違いない。

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寄りかかっていいやら悪いやら。
小田急線

小田急線。実は三角コーナーはすごく狭い。でもなぜここに挙げたかというと、開口部が広いのだ。

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奥行きは49cmあるのに、幅が5cm!せまい!
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でもドアがでかい。対するコーナーの人と十分住み分けられる。

測ってはいないが、他の路線に比べてあきらかにドアがでかい。1割~2割はでかいのではないだろうか。このドアのおかげで、お隣さんとの距離が十分取れる。部屋は狭いけどその開放感はプライスレスですよ!

なんだかインチキ不動産みたいな口調になってきたので、先を急ぐ。

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デザイナーズ物件をお探しの方へ

いや、デザイナーズではないのだが。ちょっと変わった物件をお探しで、人と同じものはイヤだという とんがったあなたには、こちらをどうぞ。

東急世田谷線

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いきなりの変則プレー。

中途で路面を走る世田谷線。かわいいバスみたいな2両編成だ。車内もバスのように、左右に1列ずつ座席が並んでいる。そのドア際に迫ってみよう。

私んちも多角形の部屋です

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間取り応相談にはワケがある。

なんとなく体側に沿った感じのしつらえのせいで、割とコンフォータブルなコーナーとなっている。そしてもう1段階ドア際に寄るスペースがあるので、本当にまるでロフトスペースのようなのだ。いや本当に。間取り応相談の ゆえんである。

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ほら、雑誌入れもある(嘘)
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もう1段階ドア際に寄り、たたずむ。
都営大江戸線

都内のもっとも深いところをもぐって進む地下鉄大江戸線は、当初からその車両の造りが話題になっていた。幅が狭くて、天井に行くほどすぼまっている。

といいつつも、コーナー部でとくに取り立てていうほどの変化はないのだが、ちょっと見てみてください。

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この背板の形の由来はなんだろう(奥行き22cm・幅49cm)。そういえば奥行きが広いせいで、今回で一番面積が広いんだった。忘れていた。
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ほらこのように、上に行くほどドアが手前に倒れてきている。これもどっちかといえばロフトっぽい。
京王線

これも何がどうというほどではないのだが、古賀さんが発見したものがあります。

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縦ポールの台座の出っ張りも注目すべき点ではあるが……
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足元の横ポールをよく見ると、切りっぱなしで壁との間にスキマが。カバンのヒモとか引っ掛けそうでこわい。
京王井の頭線

何がステューディオかはよくわかりませんが、背もたれがちょっと変わっています。立つ人を応援してくれているのか、排除したいのかよくわかりません。

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調理器具みたいな背もたれ。

「背もたれ変わってる」というだけで「デザイナーズタイプ」にエントリー

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詳細文面も、背もたれのことばかり。
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古くてもかまわない!昔ながらの落ち着いた物件を、という方へ

当店では昔ながらの付き合いも大切にしております。多少古くても、畳部屋のような落ち着きが欲しいというあなたにオススメなのが、こちら、「オール・ポール化の家」でございます。

ポール・ポーラー・ポーレストですな。

都営新宿線

見よ、どこまでもポール。ポール三段造り。

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いや、畳は敷いてないので、わざわざ見に行かないように。
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お隣さんの目と鼻の先に私のしりが。迷惑そうである。
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実はこのように、左右で広さが違っていたりする。

ちなみに、「稍」は「やや」と読む。競馬をやられる方ならおわかりですね。

ややフル。やや古。今の時代、都心をそうそう古い電車は走ってないので「やや」としたが、古く見えることにはかわりない。

もたれると、尾てい骨が棒にあたり、すごく心もとない。見ると、座っている人はほぼ皆ひじをポールに乗っけているので、各地で日々小競り合いが繰り広げられているだろう。

西武線
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奥行き12cm・幅44cm
東武線
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奥行き14.5cm・幅50cm

西武線の新しい車両は、グレーと青の2色塗りだ。でも前は黄色も黄色、まっ黄色の車両だった。

すごい変遷ぶりだが、何がその間にあったんだろうか。

それはおいといて、三角コーナーだ。ここも3段ポール造りだ。古めの車両は総ポール造り。が、西武のは一番上のポールがわずかに手前(立ってる人のほう)に出っ張っている。立たれるのを拒絶しているかのように。

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狭いほうが落ち着く!という方へ

さて、そろそろ当社のとっておき物件をお教えするとしますか。蔵出し・激セマ物件でございますですよ。

東急多摩川線

一見、コーナーなどまったく無いように見えるが。

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かろうじて駐車スペースくらいはあります。

本当は、いつも乗っている東急池上線の三角コーナーがこのような激セマタイプなのだ。この企画自体、そこから思いついたものだったのだが、この日たまたま乗った池上線はこのタイプの車両ではなかった。

なので、やはりこれも蒲田から出ている東急多摩川線に急遽乗り換えた。

どうですこの狭さ(と胸を張る)。これを「三角コーナー」と言っていいかどうかさえ疑わしいが、私は現にこの狭いところにへばりついて都心に出ているのである。

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乗降時にはこれくらい気を使いたい。というか降りろ。
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3cmのフリースペースで、君は何をする?

しかしもっとレアな物件があったのだ!やはり東急で!

東急大井町線

この写真ではわかりにくいですが……

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狭いというか、「0か1か」で言ったら0ですね。
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もう降りたい。
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奥行き1cmの理由はこれ。縦ポールとの間にかろうじてスキマ。

私は狭いところが結構好きで、だだっ広いところよりも落ち着くと思っている。

そんなわけでこの取材は楽しかったが、こんなに狭い物件があるとは正直思っていなかった。

世の中には、どんな三角コーナーがあるのだろう。それを確かめてみたくなった。日本中、世界中で、ぼくのくつろぐ場所を探すために。私の心地いい空間を見つけるために。

わざわざ乗りに行くのは疲れるけどな。

皆さんも、地元のはこんな物件だ!というのがあったら、そっと教えてください。

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