特集 2020年1月23日

バスバースって何? 駅前にあるものを知る

駅前には広場がある。あまり気にしたことはなかったが、確かにある。

駅前にはなぜ広場があるのか。そして広場には何があるのか。そんなことを教えてくれる本に出会ったので、山手線の駅をめぐってみた。


駅前にあるものとは

さっそく山手線の高田馬場駅に来てみた。

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ああ駅前だなあという風景で、それ以上の感想はふつうない。しかし、ここにあるものを機能ごとに塗り分けると実はこんなふうになる。

 

なんかいろいろあるでしょう(それぞれの意味は後述)。

などと偉そうに書いてしまったが、べつにぼくは駅前の構造に詳しいわけじゃない。とある本を手に入れただけなのだ。

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それがこの「駅前広場計画指針」。駅前にはなぜ広場が必要で、そこにはどんなものをどれくらい置いたほうがいいかという目安が書かれている。旧建設省による「駅前広場計画指針研究会」がまとめた。

この本を見ると、いままで漫然と見ていた駅前にある施設の名前や役割が分かる。ぼくはそういう瞬間が好きなのだ。その感動をおすそわけしたい。

まずはロータリーにあるもの

駅に来る人は、たとえばバスで来て電車に乗る。あるいは電車で来て徒歩で帰ったりする。こんなふうに駅は交通手段が変わる場所(交通結節点)なので、そのためにいろいろな施設が必要になる。これを駅前広場の交通結節機能というそうだ。かっこいい。

では具体的には何があるのか。

バスバース

本を読んで最初に感動したのが「バスバース」という言葉だ。

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バースとはもともとは船が停泊する場所のことで、転じて車が駐車する場所もバースというらしい。

見慣れた風景に「バスバース」というすごい名前がついていた、というようなことを知る瞬間が大好きだ。

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バスが止まっている道路はちょっと白くなっているでしょう。こういう舗装のことを「半たわみ性アスコン」という。

バスは重いので、バスがずっといる場所がふつうのアスファルトではへこんでしまう。なので丈夫にするためにセメントミルクというものが混ぜてあるので白くなっている。なるほどー。

バスベイ

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さっきのと似ているが、歩道に切れ込みを入れたような形をしているやつをバスベイという。

特に上から見たとき切れ込みが台形をしているやつを台形バスベイというそうだ。

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台形バスベイ。ふだん見て知っているはずの景色にそんな名前がついていることに震える。それを今まで知らなかったことにも震える。

バスバースもバスベイも、バスと鉄道という交通手段を結ぶために必要となる施設なのだ。こういうとただのバス乗り場がちょっとかっこいいものに見えてくる。

タクシーバース

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そして同じようにタクシーバースがある。タクシーと鉄道の交通結節機能を果たす場所だ。

ようするにタクシー乗り場なんだけど、この記事では最後までこのノリでやっていきたい。

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タクシー乗り場ってたしかに屋根があるが、これはシェルターというそうだ。いちいちかっこいい。

「タクシー乗り場の屋根」じゃなくて「タクシーバースのシェルター」とかいうと通っぽいのかもしれない。

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これは聞いたことあると思う。客待ちをする間のタクシーを駐車しておく場所がタクシープールである。同様にバスプールもある。これらはそこそこの空間を必要とするので、あらゆる駅にあるわけではない。

そういうことを言い出すとバスベイすらない駅だってあるわけなんだけど。

一般車乗降用バース

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「いま駅にいるから車で迎えに来てくれない?」という状況があると思う。そのとき待つべき場所は一般車乗降用バースである。

ふだん車に乗る人でもそんな言い方をしたことはたぶんなかったと思う。かっこいい。

通勤や通学のときに車で駅まで送ってもらい、キスをして別れて電車に乗るという形があり、それをキスアンドライドというそうだ。なので本には「キスアンドライドの乗降場」という言い方もされていた。おしゃれ。

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歩道

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写真がなぜか暗い

こんなに当たり前のこともないが、駅には必ず歩道が接続している。「徒歩」という交通手段との結節が必要だからだ。

逆に言うと、どんなに駅前になにもない場所でも、必ず歩道は接続している。バスバースがなくても、タクシープールがなくても、歩道だけはある。

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なにもないということがよく言われる田端駅南口だが、そうではない。「歩道」という施設があるのだ。もし歩道がなかったら飛んでくるしかないでしょう? 交通結節機能を歩道が満たしてくれている。ありがたい。

プラザ

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ここまで交通の話ばかりしてきたが、駅前にあるのはそのような交通空間だけではない。環境空間と呼ばれるものがあるのだ。

プラザとはいわゆる「広場」という意味の言葉で、駅前においては「憩い、集い、語らいの中心」となる「交流機能」を持っているという。駅前ってそんな機能もあるのか。

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と思ったら大塚駅前の広場ではこどもたちが遊んでいた。なるほど。

モニュメント

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JR函館駅前

そして駅前にはモニュメントがある。都市の顔としての景観を形成する「景観機能」の一部なのだそうだ。

これまでモニュメントについては「あるな」くらいの低い意識だったが、「景観機能としてあるんだな」くらいには改めようと想う。

サービス機能

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駅前には電話ボックスがある。なんとなくあるなと思っていたがそうじゃなかった。

駅前広場には多くの人が集まるため、各種情報や公共的なサービスを提供することが求めらるのだという。そういうことだったのか。

駅前でサービス機能を提供する施設は他にもある。

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駅前ってよく交番あるでしょう。あれ偶然じゃなかったんだ。駅前のもつサービス機能の一貫だったんだ。

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広い歩道

単なる広い歩道が「集い、語らい」の交流機能をもっている例が面白かったので最後に紹介したい。

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台風の日に必ず紹介される新宿駅南口である。歩道がやたら広く、休日となるとなにかの人だかりができていることが多い。

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この日は歌を歌っている人と行商の人が20メートルおきくらいに連続していた。

本来、交流機能を持つ広場は、徒歩で駅前をただ通過するだけの人たち(通過交通)と交わらないように、歩道とは分けられることが多い。

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JR目白駅の例

しかし、新宿駅南口の歩道をつくった人たちは、広い歩道の一部が広場的に使われることを想定していたんじゃないかと思う。あまりに広いため、通過交通のじゃまにも(そんなに)なっていない。いろんなやり方があるものなんだなと思った。


見る目の解像度を上げていきたい

冒頭でとりあげた本は、駅前の施設の名前を紹介するような内容ではない。それらをなぜ、どのくらい設置したほうがいいかを計算式や事例などで紹介する内容になっている。

しかしぼくにとってはものの名前と、そこにある理由を知るだけで街を見る目の解像度が上がって嬉しい。「バスバースが駅前にあるのはバスと鉄道の交通結節機能のため」と思うだけで、いままでと同じ景色がちょっと違って見える。

で、それは駅前に限らないはずなのだ。そんなふうな感覚を増やしていければいいなと思う。

駅前広場計画指針―新しい駅前広場計画の考え方

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