特集 2019年2月26日

おれはチャーハンなら無限に食べられる~東急沿線さんぽ

チャーハンを無限に食べたいときがある。

突然、「あ、チャーハン食べたい」と思うことはないだろうか。地元のおじさんが経営する中華料理屋のチャーハン、チェーン店のチャーハン、自分で作ったチャーハンでもいい。むしょうにチャーハンを食べたい。チャーハンなら無限に食べられる気がする。

 

※編集部安藤より
この記事はデイリーポータルZの運営元であるイッツコムのサービスエリア、東急沿線の魅力を紹介する記事です。

前作:おれはそばなら無限に食べられる

1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

前の記事:おれはそばなら無限に食べられる~東急沿線さんぽ


チャーハンは永遠(とわ)

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ラーメンと一緒にチャーハンとギョウザを注文するじゃないですか。あのチャーハンっていつの間にかなくなっていませんか。
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食べたからじゃないかな。
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永遠に続けばいいと思いませんか。
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そうやって君は永遠という言葉を簡単に使う。
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チャーハンに対しては本気です。

 というわけで今回は魅力的なお店が集う東急線沿線でチャーハンを無限に食べてきました。チャーハンよ、永遠なれ。

 

 

1.5キロの大盛りチャーハン

お店ではたまに半チャーハンなどが置いてあるが、なに甘いことを言っているのだと思う。大盛りのチャーハンを食べたい、いや無限に食べたい。
そんなことを思って探していたら東急田園都市線の高津駅に願いをかなえてくれるチャーハンがあった。

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野球選手で高津っていたな。

歩いて10分ほどで大通り沿いにそのお店はある。「長崎ちゃんぽん」という名前だ。

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ストレートなお店の名前である。わかりやすい。

その名の通り、長崎ちゃんぽんをメインに皿うどんや丼ぶりや定食を提供しているお店である。近所に住む常連さんや働き盛りの人で人気のお店だ。

メニューを見ると、ちゃんぽんや皿うどんの名物が並ぶ中、違和感がある食べ物が。

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テイクアウト以外でひとつだけ1000円を超えるメニューがある。

ほとんどのメニューが1000円以下なのに、チャーハン大盛だけが1200円。キャビアとかトリュフが乗っていたら焦る。どんなものが出てくるのか期待に胸を躍らせながら早速注文する。

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マンガを読みながら待つ。地元の料理屋っぽいマンガのラインアップだなと思っていたら
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かなり新しいマンガも置いてあった。

鍋とお玉が一定のスピードで振られており、カンカンと心地よい音が厨房から聞こえる。クラブとかで流したら盛り上がるし、お腹も減ると思う。

そして、10分ほどでチャーハン大盛がやってきた。

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パッと見ると普通の量に見えるかもしれないが、
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近くで見ると中華バイキングの大皿ぐらいある。取り分ける前のやつ、持って来ちゃったのかな。

お米だけで1.2キロ、具材と会わせたら1.5キロあるそうだ。わかりやすく説明するとお茶椀8杯ぐらいである。末広がりで縁起がいい。

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めちゃくちゃ熱いですが、おいしい!

具材はかまぼこ、ネギ、たまご、細切れのチャーシュー、そして味付けも塩味というシンプルなチャーハンだ。

よく茶色のチャーハンがあるが、オイスターソースや醤油を使っているのでお米に色がつく。しかし、塩をメインに隠し味で仕上げたこちらのチャーハンは白く、さっぱりとした中にも奥深い味がある。

そして、もちもち感とパラパラ感が絶妙である。よくパラパラを売りしているチャーハンがあるが、それよりも少ししっとりしている、家庭でつくったような雰囲気のあるチャーハンだ。絶品のチャーハンである、無限に食べられるぐらいおいしい。

あまりのおいしさに「どうやって作っているんですか?」と聞いたら、「ダメだよ兄ちゃん!企業秘密だよ!!」と気さくな人柄の店長に笑いながら秘密にされた。

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中華スープも水とうに入れたいおいしさ。

チャーハンと言えば、一緒についてくる中華スープである。ラーメンのスープであったり、鶏ガラスープだったりと様々だが、チャーハンには欠かせない存在だ。特にチャーハンの量が多いと絶対に必要である。
口の中を一度リセットするのに、またはスープチャーハンにして、お茶漬けのようにさらさらを口の中へかっ込んだりするのにいつでも横にいてほしい。

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うまいチャーハンが減らない。新しい幸せの形だ。

休憩中の店長にチャーハンについて聞いてみた。「この量が出てくるのを知らないで注文してしまう人もいて、持ち帰りをする人もいるね。兄ちゃんも無理しないでいいからね。あ、でも食べきるな、すごいね、頑張れ!」と声援をもらい、「俺も負けられない」と自分のまかないを急いで食べ始めた。

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そして、20分ぐらいで1.5キロのチャーハンを食べきった。2日ぐらい分食べた気がする。さすがに翌日は食べられないと思っていたが、てんやで天丼を食べた。そういう胃袋だ。
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お店を出る際にアイスをもらった。隠し味は優しさなのだろう。

「また来てよ!」と店長に声をかけてもらいながらお店を出る。素敵なお店だった。

そして、知ったことはチャーハンは1.5キロぐらいが満腹になる。自分の限界を知ることができてよかった。このあとも無限にチャーハンが出てきます。

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フライドチキンが乗ったチャーハン

カニチャーハン、あんかけチャーハンなど色々な種類があるが、もっとチャーハンには無限の可能性があるのではないか。そんなことを感じさせるチャーハンがある。

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そんなチャーハンがあるのは東急田園都市線の宮前平駅。帰りには駅の近くにある湯けむりの庄(日帰り温泉)に行こうと思います。
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途中、「もう、今日は行けないんじゃないか」と思うぐらい急な坂があった。
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坂を登り切った者だけが見ることが許される景色。小高い。

興奮しているのか、急な坂を登ったせいかはわからないが、息を荒くしながら歩くと見えてくるのか、新しい世界と書いて「ラーメン新世」である。

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土曜日のお昼過ぎに行ったら人が家族連れでにぎわっている。
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「おいしいチャーハンを食べたい」に選ばれた名店である。どんなチャーハンか楽しみ。

普通盛りと大盛りがあったが、いつだって大盛りを選ぶ人生でありたい。大盛りでお願いします。
メニュー表を見るとラーメンもおいしそうである。

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ラーメンもおいしそうだ。もし、足りなかったら頼もう。

チャーハンの量が少なかったら追加でラーメンを頼もうとしていた。しかし、やってきたチャーハンを見て考えが変わる。

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誰か中華バイキングの大皿にフライドチキンを載せたやつがいる。
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チャーハンよりもフライドチキンの方が多い。

チャーハンが見えないほどの大きなフライドチキンが3つも乗っている。こんなワイルドなチャーハン見たことがない。
ちなみに普通盛りでご飯だけが500グラム、大盛りにすると700グラムだが、フライドチキンのおかげでもっと大盛に見える。

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ラーメンを頼まなくてよかったかもしれない。
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ちなみにスープは30円で注文できる。卵スープで優しい味。

注文する人の多くは、家族や友人たちと分け合って、ラーメンと一緒に食べるらしい。確かに分け合って食べる人が多く、一人で食べようとしている人がいない。でも、チャーハンに対して全力でぶつかっていきたいので、一人で食べさせて頂きます。

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チャーハンを食べたあとに、
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チキンを食べる。
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最高なやつです。

フライドチキンは胸肉を揚げたもので、サクサクした衣に濃いめの味付けなのに対して、チャーハンはさっぱりとした味。ちょうどいいバランスで飽きずに食べられる。
ご飯がパラパラとしていてチャーハン単品でもかなりおいしい。家の近くにあったら通いたい。

おいしい。それは間違いのない真実なのだが、フライドチキンってお腹にたまるな。

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本気を出してチャーハンを食べる。
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ちなみに友人が頼んだみそラーメン。少しピリッとしたみそ味が食欲をそそる。チャーシューもほろほろして絶品。
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また、餃子につけるようのタレが置いてある。川崎ではみそタレで餃子を食べるB級グルメがある。これがまたおいしいのです。
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そんな色々なメニューがあるなか、チャーハンを食べ続ける。なぜならチャーハンが減らないから。

量で言うと先ほどの「長崎ちゃんぽん」のお店ほどではないのだが、気持ちを強く持たないと満腹になってしまう。もし、お腹いっぱいになりたかったらフライドチキンとチャーハンを一緒に食べることをおすすめします。

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最後の一枚になった。ラストスパートである。

もうすぐ完食であるが、普通ならこれで1人前ぐらいの量である。そう思うと笑ってしまう。友人に「食べたいならあげるよ」と聞いたが「大丈夫です」と敬語で言われたので自分で食べる。

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スープと一緒にかきこんで
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無事に完食。意外と余裕がある。チャーハンを食べる才能があるかもしれない。

途中「まだフライドチキンが1枚まるまる残っているな」と思ったときは完食を諦めかけたが無事に食べ切れて安心した。この経験を自信につなげていつか何かしらで優勝できるように頑張ります。

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きれいに食べきった真っ白を大皿を見ると達成感がある。デスクトップの画面にしたい。
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デザートに食べた杏仁豆腐の味が優しすぎて笑ってしまった。
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渋谷にある町の中華屋

最後は若者の街、渋谷で愛される中華料理屋である。大盛りのチャーハンがそこにはあるらしい。

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大盛りファンの間では有名な仙台や。
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編集部の安藤さんと食べに行った。

ラーメンやチャーハンはもちろんのこと、とんかつやカレーなど町の中華料理屋っぽいメニューが並ぶ。

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中華料理屋でカレーとかあると食べたくなりますよね。
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そして、今回はチャーシューチャーハンを食べる。

手際の良さが厨房から聞こえてくる音で伝わってくる。どんなチャーハンが出てくるのかを楽しみにしながら周りを見ると男性しかいない。
大皿のレバニラ定食や中華丼を食べている。それもおいしそうだ。あとから入ってきた若者(男)は嬉しそうに「からあげ食べちゃおうかな~」って言っていた。

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まだかなー。
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他にも色々とおいしそうなメニューがあるな。
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まだ、来ないかな。
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来た。

チャーハンがやってきた。僕らの町にチャーハンがやってきた!そんなテンションにもなる。なぜなら2日間、ごはんを抜いてきたから。でも、あまりの空腹にお昼に雑炊を食べた。

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こちらが普通のチャーハン。
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そして、こちらが大盛りチャーハン。普通のチャーハンの2杯分。
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どうしても食べたくて頼んだ餃子も1つが大きく、具がたっぷりと入っている。ニンニクがガツンと効いていてビールに絶対合う。

黄金色で輝いているチャーハン。たっぷりの卵と、チャーシューから出る甘みや抜群の塩加減が空腹の胃袋をわしづかみしてくる。男性が好きな味である。

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普通盛りのチャーハンを食べる安藤さん。お昼においしいパンを食べたそうです。

「普通盛りのチャーハンと餃子でちょうどいい」「味もちょうどよくて、家でたまにできるうまくいったチャーハンの味」「ここまた来よう」と太鼓判である。

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熱がっている。チャーハンの中って熱いんですよね。(表面から冷めていくので中をすくって食べると熱い。チャーハンあるある。)
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チャーハンや餃子、スープを三角食べしながら食べる。

今まで2店に比べると量が少ない(それでも一般的なお店よりも多い)ので気持ちに余裕を持って食べられる。気持ちに余裕があると、ご飯は2倍おいしいし、世界が楽しく感じられる。

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そして、最後のひとくち。
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余裕で食べきる。

食べた結果、腹5分目ぐらいだった。これぐらいの量なら全然大丈夫だろう。せっかく来たのだから、2杯目に行ってみようじゃないか。

大盛りチャーハンが牙をむく

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2杯目、エビチャーハンもおいしそうだな。
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すみません、五目チャーハン下さい。

そのとき、思いも寄らない注文に厨房から笑い声が聞こえた。あいつ、まだ食うのかと思われたのかもしれないがこっちは1.5キロ食べた男だぞ。どんと来い。

そして、注文して10分もかからないうちに五目チャーハンがやってきた。

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思っていた量じゃないのが来たな。

びっくりするぐらいの量が来た。1.3キロぐらいありそうである。思い返すと、先ほどのチャーシューチャーハンは「たいしたことがないな」と思っていたが、あれは試されていたのかもしれない。


女将、店主たちの「冗談みたいな注文をする奴は許さない」という強い気持ちが五目チャーハンに込められている気がする。その挑戦、受けようじゃないか。しかし、見た瞬間に5割だった満腹度が、8割になった。視覚だけで満腹になれるチャーハンだ。

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具材はチャーシューやたまごの他ににんじんなどの野菜も入っている。
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安藤さんもあまりの重さに笑う。
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序盤から苦しい展開である。

ほぼお腹いっぱいになったときにチャーハンを食べたことがあるだろうか。全然減らないのだ。本当に無限にあるのでは思うぐらい減らない。誰か見てないすきに足している気がする。

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黙々と食べる。今、todoリストを書いたら「チャーハンを食べる」と赤ペンで書くと思う。
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15分ぐらいで半分ぐらい食べた。

空腹の時だったら15分あれば4分の1ぐらいは余裕で食べられるだろう。だが、大盛りを食べたあとは進まない。そして、限界が近くなってきた。こういう大盛りを売りにしているお店では「残った分はお持ち帰り」ができるお店が多い。
確認していないが、きっとできるだろう。

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半分で全く食べきれなくなった。持って帰ろう。

「持ち帰って家でもチャーハンを食べたらずっとチャーハンを食べなきゃいけないですね」と談笑していた。
その場で食べきらないのはなんとなく負けた気がするが、無理をするのも良くない。思い切って「持ち帰れますか?」と聞いた。

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「すみません、持ち帰りって可能ですか?」

しかし、女将から意図しない衝撃的な返ってきた。

「うちは持ち帰りはやってないです。」

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この瞬間、食べきるしか道はなくなった。

もしかしたら「無限に食べられる」という言葉を安易に使い過ぎていたのかもしれない。そして、1.5キロ食べられたということに慢心していたと思う。チャーハンが牙を剥いた瞬間だった。無間地獄チャーハンの始まりである。

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お慈悲を下さい。

持って帰れないという事態に絶対に食べきらないと行けない状況が生まれてしまった。ご飯ってのびのび食べるものだろう。なんだ、この緊張感と絶望感漂う食事は。

そして減らないのだ。どんなに食べても減らない。あと少しだろうと思うが、その少しが全然減らない。本当に無限のチャーハンがそこにはあった。
減ったようにみせるために、一部分だけを集中的に食べて、お皿の底が多く見えるように食べたりした。お皿の白い部分が多く見えると、「減ってきたな」と心の安心感を生む。工夫をしないとこの量は食べきれない。

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そんな工夫もむなしく、胃は限界を超えて120%である。

いつもなら1分もかからない量が15分ぐらいかかる。「近くのシェアオフィスに誰か編集部の人っていないですか?食べてもらえないですかね」と安藤さんに聞いたら苦い顔をしていた。

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「すみません、ここのひとくちだけ食べて下さい」と満腹の担当編集にお願いする。
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「無理かもしれない」といいながらもなんとか食べてもらう。
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そして、なんとか無理矢理口の中に入れて、
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ギブアップ寸前でなんとか完食。
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あれだけあったチャーハンがもうない。食べきった写真と共に大盛りチャーハンを2杯食べた男として、大英美術館に銅像を飾ってほしい。
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思わず出るガッツポーズ。食後に初めてガッツポーズをした。

料理を食べきった達成感に満ちあふれている。チャレンジメニューでもないので賞金などは出ないがこのうれしさは普段の食事では味わえない。餃子を食べなければ余裕で食べきれた可能性もある。そういう強がりをしていきたい。

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この様子を見ていて感動したのか泣いていた。満腹すぎて泣いているのかもしれない。

安藤さんから感想をもらった。
「帰りに横浜駅で電車が止まったが、立っていると体がぼんやりと重く、熱い。なんだろう、消化している感じがしない。胃があきらめた感じがする。帰りにガリガリくん買って食べながら歩いて帰りました」

僕は1時間歩いて帰りました。お腹は全然減りませんでした。


中華料理屋のメニューをずっと読んでいたい

冷蔵庫に食材を使って家で食べるチャーハンもおいしいが、お店で食べるとまた違ったおいしさがある。全然関係ないが、中華料理屋のメニューだけで1時間は過ごせる。カバンに入れていつでも読めるようにしたい。
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食べきった直後、1歩も動けなかった。
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