特集 2018年10月16日

ドキュメント、市場が豊洲にやってきた日

9時集合で9時に起きる!

まじめな書き出しでジャーナリズム満載な記事だと思っただろう。そういうのは真面目なところにお願いするとして、個人的な大事件を聞いてほしい。

あれは木曜日、ネタの相談を担当編集の安藤さんとメッセンジャーで行っていたときのことだ。安藤さんの提案で開場初日の豊洲市場に行くことになった。

築地市場に詳しいライター西村さんも誘い、3人で混雑する前に行こうと9時に勝どきから向かう予定だった。

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全員、行く気まんまんである。

前日、残業やらなんやらで少し寝る時間が遅くなったが、6時半ぐらいに起きようと、スマホで目覚ましを設定し就寝をした。

そして、3日の朝。ひとつのメッセージの着信音で目覚めた。

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ただいまの時刻、8:57をお知らせしているな。

遅刻というものがある。人と会う予定した時間に遅れることだ。2018年10月13日、豊洲市場が一般開場したその記念日に大遅刻をした。ただの遅刻ではない大遅刻である。担当編集からの絶望のモーニングコールで起きた。

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あまりの大遅刻に笑ってしまった。人は待ち合わせの時間に起きると笑う。

人生で初めて寝過ごしだった。自分の寝過ごしっぷりに笑ってしまう。5分とか10分ではない、2時間以上の寝過ごし。なぜだ、なぜ目覚ましがならなかった。設定したはずじゃないか。怒りをおぼえながらスマホを確認した。

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設定途中だね。

前日に設定してはずだったが設定途中で寝てしまっていたようだ。眠かったんだろうね。

大事なのは原因を調べることではない、急いで連絡しなければとグループにメッセージを送る。こんなにビクビクしながらメッセージを送ることが今後の人生であと何回あるのだろうか。ないでほしい。

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送った結果、解雇だった。

普段ならこんなことを言われても「なに言っているんですか!やめてくださいよ!!」と言えるが、遅刻しているこの状況だと「あれ、本当かな」と思ってしまう。今、訪問販売が来たらやたら高い水や高級布団を買ってしまうかもしれない。

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その後、デイリーポータルZのアカウントから恐ろしいコメントがきた。
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マジかよ。

 

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1人いないが豊洲を回る

いない間の写真をもらったので想像と聞いた話を混ぜて書いていく。

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豊洲市場に着いた西村さんと安藤さん。
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豊洲市場の最寄り駅はゆりかもめの市場前駅である。

市場前駅は元々、市場が開設されることが決まった際に2006年に作られた駅である。しかし、市場が12年間できず、駅の使用者は作業員がほとんどで「東京都で使用者が一番少ない駅」と呼ばれていた。

そして、それに合わせて周辺施設もできず、あまりの何も無さに「都内にある秘境駅」としても一部で有名になった。

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駅の近隣には空き地がある。

今も一部では空き地が見られる。これから色々と建設されるのだろう。

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歩いて数分、見学可能な施設が見えてきた。
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使用者が一番少ないと言われた駅に大勢の人が。

話によると、9時半には列が並んでいたそうだ。日本人だけではなく、海外からの観光客も大勢来ており、テレビ局の取材もかなりの数いるようでその注目度のすごさがうかがえる。

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一方その頃、タクシーが全然捕まらずにいた。(画像はイメージです。)

通路にも大勢の見学者がいたが内部もにぎわっている。そして、中に入ると今までの市場とは違ってかなりきれいな内装になっている。

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築地との違いに驚きの表情(だと思う)を見せる西村さん。

市場が移転するにあたり、築地から豊洲へと移ってきたお店もある。昔、西村さんが書いた記事「あえて魚を食べない築地うまいものめぐり」で訪れたお店も移転している。

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大正元年創業の老舗カレー屋、中栄(なかえい)。
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こちら築地時代の中栄。古き良き時代のカレー屋の雰囲気だ。

 

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量が多く、キャベツがトッピングされているのがポイント。

また、西村さんの別の記事「築地のシュウマイを勝手にシュウマイ弁当にする」で訪れたふぢのも移転していた。

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ラーメン屋のふぢの。
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築地時代も市場で働く人たち、地元の人たちに愛されたお店である。
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西村さんが記事で「チャーハンにシュウマイ。という組み合わせが最高にうまい」と紹介されている。絶対おいしい。

そんな西村さんおすすめの飲食店も多く移転しており、お店はどこもお客さんで満席だ。並ぶお店も出てきている。

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「江ノ島は何してんだろ」
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東京タワーが見えたので撮ろうとしたが焦って失敗していた。

遅刻者が到着した

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電車なら1時間で着くところを40分弱だった。早い。東京無線が好きになった瞬間だった。

周辺の道路は混雑しているかと思いきや、渋滞などは発生せずすんなりと来ることができた。なんとか無事について本当に良かった。

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着いた瞬間に送られてきたメッセージ。おじさんたちがはしゃいでいる。
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はしゃぐおじさんをよそにこちらは少し涙目だった。

着いたのはいいが、ベテランライターの西村さん、忙しい編集部の安藤さんを1時間近く待たせてしまっているのだ。申し訳ない気持ちと怒っていたらどうしようという不安感がつのる。

届いたメッセージを見ると怒っている感じはしないが、実は怒っている可能性だってあるだろう。今、世界一難しい「このときの筆者の気持ちを考えなさい」が出題された。

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そんな不安を胸に着いた。いや、着いてしまった。急ごう。

 

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怒っているかもしれない人たちと見学をする

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合流。安藤さんの笑顔が逆に怖い。
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「俺のメッセージで起きたでしょう(安藤)」と核心をついてきた。

到着してすぐに謝り、「いや~人多いですね!来たときも混雑してましたか?」と軽く聞いてみる。

「さっきはそんなじゃなかったよ。江ノ島くんが遅れなければきっともっと空いてるときに回れた」と安藤さんは少し笑いながら言った。「すみません」そう言ってこの会話は終わった。

豊洲市場は大きく分けて、青果棟、水産卸売場棟、水産仲卸売場棟があり、それぞれの市場を見学できるようになっている。

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見学者カードとパンフレットを受付でもらって中に入る。
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見学ブースにも飲食店が入っている。

話題の新しい施設、そして立ち並ぶ飲食店たちに本来なら心がおどるだろう。ただ、2人からの無言のプレッシャーである意味、心がおどっている。いや、ざわざわしている。

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見学者ブースではクロマグロが歓迎してくれる。

進むと展示パネルやガラス越しに場内を見ることができる。楽しみながら市場内を見学できるので子どもたちの勉強におすすめだが、今は無の気持ちで奥の方を見ている。

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心を落ち着かせるために一番奥にある壁を見る無の時間があった。
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通路にも市場の小ネタを教えてくれるパネルが置いてあったり、
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築地から今までの市場の歴史が写真で展示してあるなど博物館のようだ。

色々と勉強になる展示物が設置してある。スマホをかざせば翻訳してくれるQRコードがあるので海外からの観光客も楽しめる施設だ。

普通のエンターテインメント施設として楽しいと思っていたが、この新しい施設に疑問を持つ男がいた。築地を愛する男、西村である。

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「こういうことじゃないんだよな...」

載せられないような過激な発言もあったが、抜粋すると「前は自分の家から市場が見えたんだけど、豊洲だと見えなくなったのも不満」と。

「それは我慢してください」と言いたい気持ちもあるが、遅刻した身分なので我慢した。もうご飯を食べに行きましょうよ。今回食べに行ったのはセンリ軒である。

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築地時代のセンリ軒。大正3年創業の老舗だ。
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あえて魚を食べない築地うまいものめぐり」でも行ったお店である。
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築地時代は味のある内装だったが、
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内装がガラリと変わっている。
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築地の頃に好きだったお店もいくつか教えてもらったが、閉店しまっているお店もあるようだ。

西村さんは「市場で働いている人たちの仕事や熱気を目の前で見ることができて、それが築地の良さだったんだけどな」と教えてくれた。思い入れのある人の言葉は深くささる。

そして、安藤さんの「西村さんの思い入れのある場所でのいい話もいっぱいあったんだけど、江ノ島くんはいなかったから聞けなかったな」の言葉も心にささった。

話していると注文した料理が運ばれてきた。どれもセンリ軒の名物で、見た目だけでもおいしさが伝わってくる。

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半熟たまご入りクリームシチュー。

クリームシチューのまろやかな味に黄身が混ざると、それはもう幸せな味だ。見た目よりもさっぱりとしているのでペロッと食べられる。

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朝ご飯にちょうどいい!

そして、カツサンド。トーストしたパンにソースがしみこんだカツ、そこにからしの風味が食欲をそそる。最高においしい。

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遅刻したことを忘れるおいしさ。
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豊洲に移っても味は変わらないそうだ。

土地は変わっても変わらないものがある。そして、今まで遅刻をしたことがないからといって遅刻しないとは限らない。豊洲は色々と教えてくれた。

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お店を出るとき伝票を手に取ると「いや、出すよ」と言っていただけたが「いやいや、遅刻した僕が払いますよ!!」と言うと「そうだね。」と満場一致だった。
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いいところなので早く起きて来てください。

豊洲市場も味がある

この日、大行列のお店に少しだけ話を聞いた。初日ということもあってか、150人ぐらいのお客さんが並んでいて、こんなに混雑したのは初めてだという。他のお店も早めに閉めたり、一部売り切れたりなど大繁盛のようだった。余談ですが、帰りに目覚まし時計を買いました。
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ちなみに海鮮丼を食べようと軽い気持ちで列に並んだら4時間ぐらい並びました。

 

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