特集 2024年4月29日

そんなつもりじゃなかった散歩

光ることだけ期待され

家の壁からDVD-Rがぶら下がっていた。カラスよけだろうか。最近はあまり見なくない気がする。なつかしの「そんなつもりじゃなかった」だ。

DVD-Rは、あの薄いディスクに何GBもデータが入るすごい技術だ。出た当初は「これでビデオテープが不要になる!」とびっくりしたもんだ。

でも民家の壁にぶら下がる時にデータ量とか関係ない。反射で光るだけでいい。CD-Rでもいいし、何なら鏡でもいい。オーバースペックである。

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足元のペットボトル

ふと足元を見ると、水が満タンに入ったペットボトルがそこかしこに置かれている。「ペットボトルがネコよけになる」と言われていたから、ネコよけだろうか。 

ペットボトルの隣に「待って、ここはトイレではありません」「ふんの始末は飼い主の責任です」と書かれているものもあった。ネコじゃなくて犬が描かれている。
 

 

飼い主の人間に訴えているのかな。ペットボトルは標語を支えるただの重りになっている。

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すまきのホッチキス

不動産屋ののぼりに四角いものがぶら下がっている。よく見たたらホッチキスだ。ビニールテープでグルグルにされた”すまき”のホッチキス。苦しそうだ。
 

ホッチキスだよね

店頭イベントとかでホッチキスを使う時のために置いてあるのかなと最初は思ったが、ビニールテープがガチガチに巻かれていてはがれそうにない。のぼりが翻らないよう重しにしているだけみたいだ。 

ガチガチだ

このホッチキスは誰のものだったのだろうか。何かやらかして逃げた社員の備品だったりして。その社員がたまたま通りかかって「あ、俺の……」ってなったりして。その姿を、店内から恨みがましい目で見られたりして。

のぼりの周辺には「そんなつもりじゃなかった」が隠れていることが多いので、別の店ののぼりの下に置かれた、白くて丸い何かをよく見てみた。

「リスの重石」と書いてあった。ふつうに重石だった。そういうのもあるのか。

「リスの重石」というかわいい名前で5kgある

 商品名で調べたら「漬物石」らしいので、屋外で使われるのは想定外かもしれない。日々紫外線を浴びているせいか、表面のプラスチックが劣化して割れている。

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そんなつもりじゃなくなかった

あっ、スーパーのカゴだ。お手拭きタオルがいっぱい入ってる。スーパーのカゴがお手拭きケースにされちゃってるな、と思ってよく見たら「おしぼり専用箱」と書いてあった。

そんなつもりじゃなくなかった

スーパーのカゴじゃなくて、おしぼり専用の箱だった。本来の使い方だ。

「そんなつもりじゃなかったのに」は、「そんなつもり」……そのものの本来の使い方を分かっていて初めて成立する。

そのモノをよく知らないと、本来の使い方なのに、勝手に「そんなつもりじゃなかった」と思い込むことになる。
そんなつもりじゃなかった散歩を楽しむには、幅広いモノの知識が必要だとわかった。

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自由でいいじゃない

でも、モノの本来の使い方なんて、一つに決める必要はあるだろうか? 役割を前提にモノを見るか、モノから用途を考えるか。

日本中の洗濯ばさみのうち、洗濯に使われている割合はどれぐらいだろう? 洗濯物をはさまない洗濯ばさみ。ビールを入れないビールケース。ドリンク入れじゃないペットボトル。自由でいいよね。好きだ。

「私はこれ専門!」とガチガチになるよりも、「あれもできるし、これもやれっていいんだ」と思うほうが、ラクに生きられる気がする。

いきなり人生論に飛躍してすみません。


娘が3歳ぐらいのころ、オセロを出しっぱなしにしていたら、ひっついたオセロのコマを横倒しにし、おもちゃの包丁で切り離しはじめてびっくりした。

オセロをままごとの食材にしてしまったのだ。
 

その発想はなかった

オセロはゲーム板の上で表裏を返すだけじゃなくていい。横に倒して食べ物にしていいのだ。

「子どもの自由な発想」なんて言葉は正直うさんくさいと思っていたが、これは自由だなと思ったし、人生こうありたい。

また人生論に飛躍してしまった。 

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