古賀:あー、環状線だ。
三土:そうです、これ、ほとんどは都電荒川線を使うんですが、なにを思って作ったのか説明します。
三土:荒川線の終点、早稲田で降りると、突然放り出される感じがするんですよ。
西村:わかります。周辺になんにもないんですよね。バスの営業所はあるけど。
古賀:リーガロイヤルのところだ。このへんバスでいかなきゃいけないイメージありますね。
三土:鉄道の接続がなにもないんです。でも、道が広いので、もうちょっと伸ばしてももらいます。
西村:江戸川橋の方にですよね、伸ばしてほしい。むかし会社がこの辺にあったんですよ。都電が江戸川橋まで伸びてればなーって、なんども思いました。
三土:そうなんです、便利だと思うんですよ。でも、江戸川橋は地下鉄で、新目白通りはここから先ちょっと狭くなるんです。
西村:首都高があるから。
三土:路面電車はそのまま飯田橋まで行ってほしいので、ここで5000垓円の予算をふんだんに使いまして、神田川の水面ギリギリのところを電車で走ってもらいます。
西村:川の上を走る! 名古屋城のお堀走ってた瀬戸線みたいですね。
古賀:でも、めっちゃ近未来って感じもしませんか?
三土:しかも、このあたりは水深が浅いので、船が上ってこれないんですよ。だから船のじゃまにもならない。で、飯田橋からは、日本橋川っていう川になるんで、船に乗り換えてもらいます。
古賀:ここから船になるんだ! これ、インバウンドが戻ってきたら、需要ありますよ、めっちゃアーバンラインですね。最高!
三土:で、荒川線のもうひとつの終点、三ノ輪橋ですけど、ここも放り出される感あるんですよね。だから、南千住、汐入まで路面電車で行きます。
三土:三ノ輪橋から南千住までは、住宅が建て込んでますが、豊富な予算をつかって、立ち退いてもらって、線路を引きます。
古賀:5000垓円ありますから。
三土:汐入からは、船に乗り換えてもらいます。汐入のここにはむかし船のドックがあったんですね。そこに船の乗り場を作っちゃう。ここから先は都電隅田川線という路線にしました。
古賀:いきなり川に行くというのが、ギミックが凝ってておもしろいですねー。
三土:せっかくあるのに、使われてない川がいっぱいあるんですよね。
西村:これ、よくみると、新規に線路を引くのは、早稲田から飯田橋。三ノ輪橋から汐入ぐらいまでで、あとは既存の線路や川をつかうわけですよね。そんなに大工事でもないところがいいですね。本当に実現できそうな気がしてきた。
子供の頃にあったら良かった地下鉄
最後は、古賀さんの路線図をみせてもらいます。
古賀:私の路線図は、皆さんのように特に鉄道にこだわりがあるというわけではないので、子供の頃に大変だった思い出を成仏させるという意味で、鉄道を建設しました。武蔵台鉄道です。
古賀:わたしは埼玉県の日高市というなにもないところで育ったんですが、名物はウドです。鉄道は西武池袋線が飯能まできておりまして、そこから秩父まで西武秩父線が伸びておりまして、その途中にある高麗(こま)駅というところにある武蔵台というニュータウンに住んでおりました。電車に乗っていたら、飯能でスイッチバックするんですね。だから、前向きで座っていたと思ったら、いつのまにか後ろ向きで池袋まで高速移動することになるんですけども。
古賀:全長六キロほどの鉄道ですが、これはどういうことかというと、私は子供のころ、徒歩移動していたところを、全部鉄道で結びました。バスは1時間に1本。山なので自転車を使うのも難しいんです。
西村:古賀さんまえ、武蔵台の人は山越えしてスーパーに買物に行くって……。
古賀:はい、ここのマミーマートですよね。
古賀:武蔵台にあったスーパーが潰れてしまったので、住民の人はマミーマートまで山越えして買い物に行くんです。こっちの近道の山道はほんとに危険です!
西村:でも、特急路線の新駅と武蔵台が繋がりますね。
古賀:この2番の新駅っていうのは、西武秩父線がずっと駅を作るって言ってたところなんです。秩父線は単線なんですけど、列車と列車がすれ違うのに待たされたりするところなんですよ。
西村:なるほど、すれ違いの信号所なんですね。
古賀:ここに駅ができれば、もっと武蔵台が栄えるはずだったんですが、頓挫しまして……。その怨霊を鎮めるため、新駅をここにつくります。あと、マミーマートに行けます。
古賀:武蔵台には私が住み始めたころは、書店もスーパーもあったんですが、どんどん潰れて、書店がなくなっちゃってしょうがないから、行ってたのが、ひまわり書店です。
西村:ひまわり書店駅ですね。三越前みたいですね。
古賀:次の駅はみんな大好きな物産市のあるJAいるまの駅。これはおかあさんやおとうさん、おじいちゃん、おばあちゃんが必要っていうでしょうから、駅を作りました。で、終点は日高市立図書館です。ここに図書館があるんですよ、ここは昔AVシアターがあって、昔の『長靴をはいた猫』とかの古いアニメが見られたんです。私はそれが好きで、図書館大好きだったんですよ。この図書館まで、5キロぐらい、歩いて通ってたんです。バチクソに遠いでしょう。
西村:数少ない娯楽を求めて、小学生が5キロも歩いて、涙ぐましい。
古賀:子供はまあ暇ですから、1時間半ぐらいかけてあるいていきますけど、今はもう5000垓円ありますから、鉄道を通します。武蔵台の隣に、横手台という駅がありますけど、これは友達に会いに行くときに使います。そして、いちばん重要な駅。終点のセブンイレブン飯能永田店駅。
西村:コンビニの駅ですね。
古賀:昔はコンビニはここぐらいにしかなくて、わざわざここまで買い物にきてました。このコンビニ、全国のセブンイレブンのうち、3位の売上を誇るという都市伝説があるほど、みんなここに買い物にきていました。雑誌をここまで歩いて買いにいってました。
西村:えーっ。行く途中に、山を越えませんか? 高麗駅の方にコンビニはなかったんですか?
古賀:今はローソンがあるのかな。でも、昔はなかったような気がします。ただ、武蔵台のニュータウンの住民は、高麗駅より北側の町へ行くには心の壁があって、秩父線の鉄道が進撃の巨人の壁みたいになってたんです。
西村:高麗駅より北側は、昔からある町なんですよね。巾着田(秋にはヒガンバナが咲く観光地)もあったりして。
古賀:そうですね、ニュータウン側と北側の町は学区が違うんですよね。それも心理的な距離の理由かもしれないです。
西村:新レッドアロー号はどうですか?
古賀:西武のレッドアロー号は、遅いって揶揄されることがあったので、武蔵台を始発にして、飯能っ子の大好きな所沢だけに停まって、池袋までノンストップで、線路も真っ直ぐに敷いて、めちゃくちゃ高速運転できるように路線を建設しました。西武線とは別に。池袋のアニメイトにもいけるように。
三土:これは地上線になるんですか?
古賀:地上線です。
西村:地上に敷くんだ! 地下ではなく。
古賀:はい、5000垓円あるんで。
もっとみたい!
というわけで、いろんな人が考えた妄想路線図、をみせてもらいました。
鉄道に対する思い入れがなくても、その人が暮らした町や土地に対する思い入れは如実に出てくるところなどは、ほんとにおもしろい。
これはもっと色んな人の妄想路線図の話をききたくなってきました。
逆に、全く知らない町の鉄道延伸計画を策定するときは、どんな町なのかを調べないと、その町に住む人に失礼なので、事前にグーグルマップで予習するわけですが、なんとなくその町の地理にちょっとだけ詳しくなってしまうのもおもしろい。辻堂と慶応SFCと湘南台があんなぶっとい道で繋がっていたとか、知らないことを知ることができるのは純粋にたのしいのです。
これ以来、いろんな町の妄想路線図を勝手につくるようになってしまい、京都市営地下鉄の妄想延伸計画、福岡市営地下鉄の妄想延伸計画など、勝手につくってしまいました。
ほんのお詫びに、まとめ欄外にリンクをはっておきますので、もしよろしければご笑覧いただけますと幸いです。
それではよろしくおねがいいたします。
京都市営地下鉄妄想延伸計画
福岡市営地下鉄妄想延伸計画