重りを取り付けると自立できた
やはりクマがうまく立ってくれないので、支えに使っている棒の先に重りを取り付けることにした。
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重りは何の意図もなくペットボトルの水である。なにがなんやら分からなくなってきたが、これでひとまずは踊れるだろう。たぶん。
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なかなかのものだろう。そして、ここまで仕込んで恐ろしいことに気がついた。
僕は踊れないのである。踊ってみたことすらない。なんで踊りたいなんて思ったのだろうか。今となっては不思議でならない。そういうわけなので、ここから先は誠に遺憾ながら「踊り」ではなく「動き」を披露させていただくことにします。
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武道館デビューする
クマの手を動かす棒が長いせいで家の窓ガラスを割りそうだ。せっかくなので外に出て全力で動いてみよう。
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もう夜で外は真っ暗だが、おあつらえ向きの場所があるのだ。
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武道館公演はすべてのアーティストの夢だ。だから最寄りの武道館に来た。でももう閉まっているので会場の外で踊る。観客は街灯に集まってきた蛾とカメムシ。あと施設を巡回している警備の人。ボルテージは最高潮だぜ。
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動きのバリエーションのなさに震えてください
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自分では横でクマがどんなふうに動いているかわからない。正直なところ、動いている最中はピンときていなかったが、動画で見るととても楽しそうだった。
このクマも、他の持ち主のもとでは味合わせてもらえなかったであろう体験に喜んでいる気がする。彼も一生分の喜びを得たことだろう。やるだけやった。満足だ。
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捨てよう
車にクマを連れ帰ってライフジャケットを脱がせた。
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もう悔いはない。ここまでしてあげたのだから恨まれることはないだろう。車に大きなゴミ袋を積んでいるので、詰めて捨てたらめでたくハッピーエンドである。
むりだ。この子を手放すことなんてできない。読者諸兄姉の大方の予想どおり、愛着が湧いてしまい余計に捨てられなくなってしまった。そもそも思い出づくりをしてその後すぐ処分できたらサイコすぎるだろう。
当面の間、クマさんは車のなかで過ごしてもらうことに決めた。
じゃあ、これまでのことは一体なんだったんだ。僕が一番そう思っている。君子豹変す。一時間前の自分と現在の自分が必ず同じ意見を持ってなきゃいけないなんて法律はない。
我々は自由ですから、僕はこの子と生きていきます。