夢は醒めるもの
今日は楽しかったが、また明日からつらい毎日が始まる。夢は醒めるものなのだ。またもしどうしようもなくつらくなったら、また僕はパジャマで走り回るのだろう。
その時には、またこのように公開するのでみんな見てくださいね。
最近、仕事がうまくいっていない。遊びもおもしろくない。家の中でくさっている日々が続いている。現実はこんなにも厳しいのか……。そう思うことしきりである。
いや、現実がダメなら「夢」はどうだろうか。夢の中なら全てがハッピーだ。そこで「パジャマを着てフォークダンスを踊ってみる」ことにした。夢の中っぽいだろう。
フォークダンスには相手が必要だ。代々木公園に集まってくれたのはライターの北向ハナウタさん(左)と、編集部の藤原浩一さん(右)である。
ここ数日天気が悪かったのだが、今日は過剰なほどの晴天だ。昨日までは家の中に閉じ込められていた人も多いだろう。みな、まるでそれを取り戻すかのように遊んでる。
この光景だけで夢の中のように思えてくる。絶好の「パジャマを着てフォークダンスをしたら夢の中みたい」日和と言えよう。
さっとパジャマに着替えて、ナイトキャップをかぶる。夢の中っぽくするための熊のぬいぐるみも持って来た。過去に似たような企画を2回やっているので、もう手慣れたもんである。
パジャマになると、ここ最近の憂鬱な気持ちが嘘のように消し飛んでゆく。思わず走り出してしまった。
すぐ近くにはドッグランがある。僕はさきほどパジャマを準備しながら、犬が走り回っている様子をなんとなく横目で見ていた。今の僕はあの犬と同じだ。
メガネを外しているので(なぜなら夢の中ではメガネは不要だから)この時の僕は前がよく見えていない。それなのに全力疾走しながらこんなにニコニコしている。
これはやべえやつだな……。そう思えるのは、後になってからの話だ。
撮影している編集部の古賀さんが「あー、夢っぽいですね、いいですね」と褒めてくれたので、僕はうれしくてしょうがない。
なお念のために書いておくと、公園での撮影許可はとっている。パジャマではしゃぐことは、誰にもとがめられない。
北向さんと藤原さんもパジャマになった。こちらに近寄ってくる2人の足どりがなぜか重い。
聞いてみたら「裸足で草の上を歩くとゴツゴツしていて、なんか恐い感じがする」とのこと。確かに草って意外と固い。僕は2人に言われて初めて気がついた。
2人の表情がまだ固いけど、だいぶ夢の中っぽいのではないのだろうか?
とりあえずフォークダンスを始めたい。事態が進行するにつれて2人の緊張も解けていくことを期待しよう。
まずはフォークダンスの中でもかんたんな「ジェンカ」をやってみたい。一列に並んで肩を前の人の手に置く。
さらに前に3回ジャンプする。うん、やっぱりかんたんだ。
僕たち3人の表情を見てほしい。満面の笑みである。なにがそんなに楽しかったのか、と言われるとちょっと思い出せないのだが、これは「苦しみのない夢の世界」ではないだろうか。
いま「3人の表情」と書いたが、先頭にいるぬいるぐるみの熊の表情も笑っているように見えはしないか。特に口元。
ぬいるぐみが笑うのは夢の世界の出来事である。やはりパジャマを着てフォークダンスを踊ると夢の中みたいになるということが証明された。
……と思うんですが、どうでしょうか。
オクラホマミキサーを踊る
次はオクラホマミキサーだ。2人一組になって、対面の人と手を繋ぐ。
テトリスの時に流れるあの音楽だ。あるいは途中で「パンッ」という手拍子が小気味よく入る。
やってみたのだが、けっこうむずかしい。ジェンカにくらべて振り付けがやや複雑である。
さらに熊のぬいぐるみを入れたのが、よくなかった。なにがなんだかわからないことになってしまっている。
しかしなにがなんだかわからない夢というのも実際にはあるので、これはこれでありなのかもしれない。
せっかくだからいろいろやってみた方がいい。「だるまさんが転んだ」が始まった。
やばい。強烈に夢の中みたいな写真が撮れた。
この写真も夢の中みたいだ。光の加減ででそう見えるのだろうか。それとも「追いかけられる」というシチュエーションだろうか。
見れば見るほどに既視感を感じる。ふしぎとしか言いようがない写真だ。
ここまでやってみたらみんな息切れしてしまった。夢も楽ではない。
相撲をとってみることにした。悪ノリ、という気もするが、最初からずっと悪ノリをしている可能性も否定できないために、止める者はいない。
この光景は夢っぽいだろうか? 僕には判断がつかなくなってきた。
判断がつかないのは夢の中から出てこれていないからかもしれない……。
逆光で人の顔がよくわからない。こういうのって夢でよくある光景だと思う。ただ、組体操をする夢、というのは見たことがないけれど……。
寝ている光景が一番夢っぽいのでは? と思って撮ったのだが、たんに「よく寝ている人」の写真になってしまったかもしれない。3人とも寝ている人の演技がうますぎる。
後日、参加した2人の感想を聞いてみた。
2人とも信じられないくらい丁寧でポジティブな感想である。ちなみに撮影には僕の妻も同行していたのだが、「楽しそうでうらやましかった」と言っていた。みんなが幸せになれた一日だったと言えよう。
今日は楽しかったが、また明日からつらい毎日が始まる。夢は醒めるものなのだ。またもしどうしようもなくつらくなったら、また僕はパジャマで走り回るのだろう。
その時には、またこのように公開するのでみんな見てくださいね。
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