2日目からは友達と合流してちゃんと旅行した。
地元の人からすれば「なにもないよ」の場所であっても、旅行者からすれば巡る場所なんていくらでもある。最後の写真のラーメン屋は、観光地ではない町中にあるお店だけれど激ウマだった。
色々と今回の旅行について考えたのだけれど、自分の地元に友達が遊びに来て「雨の日になにかすることある?」と聞かれたら、「何もなくて絶望するよ」と送ってしまうものなのかもしれない。地元ってそんなものである。とりあえずイオンに行け。
やることがないので、せっかくなら店長にすすめてもらったイオンに行くことにした。宮崎のイオンは九州で一番でかいらしい。
駅からは遠いのでタクシーに乗り込む。タクシーのおじさんもおおらかで優しい話し方の人だった。美容師の店長と同じく、ふんわりとした温かみを感じる。ゆっくりと丁寧な接し方だ。
ただ、やっぱりタクシー運転手も言うことは同じだった。「宮崎は何もないよ」である。
もっとがっかりしたのは、宮崎は地頭鶏が有名であるはずなのに「地鶏は炭火で焼いているからどこで食べても同じ味だよ」と言われてしまったことだ。
宮崎の人たちは笑顔でゆっくりと優しく地獄を見せてくれる。優しい鬼。
宮崎に来てから何も食べていないことに気づいたので、イオン内のレストランに行くことにした。
しかし、旅行先で日常生活を送るうえで一番難しかったのが食べ物選びだった。
「このお店は関東にはないローカルなレストランなのか?」などと考えてしまう。「考える」を抑えることの難しさに、普段の日常生活をいかに無意識で生きているかを思い知った。
ビールを注文するときに、店員のおばさんに「アサヒですか?エビスですか?」と聞かれたので、悩んだ末に「アサヒ!!」と大声で答えたら、ポカンとされたあとに大笑いされた。
どうやら「後ですか?先ですか?」と聞かれていたらしい。店員さんの言葉がなまってたから勘違いしてしまった、恥ずかしい。しかも出てきたビールはサッポロだった。全てが間違ってる。
いきなりステーキならば何も起きないと思っていたが、ここでも地元の人とのほっこりエピソードができてしまった。その土地にいる人間と関わればそれはもう旅行。
一つ勉強になったことがある。美容院とタクシーはお金を払って合法的に地元の人と話せるチャンスの場だということだ。どうやら今回は自ら宮崎の地元を感じられる場所に飛び込んで行ってしまっていたのである。
とはいえそれらを避けて部屋に一日中いたとしても、「宮崎のホテルでダラダラしてる」という、むしろ余裕のある旅行ならではの精神的優位性のようなものができてしまうだろう。コンビニに行ってもローカルな食べ物を見つけてしまうし。
すべてが敵に見えてきた。いや、そもそも俺は誰と戦っているんだろうか。だんだん普通に旅行がしたくなってきた。
極楽湯は店舗数日本一を誇る温泉施設だ。
ここなら……と思ったが、温泉やサウナに入っていると、周りでは宮崎弁が飛び交っている。日常ではありえない風景。
あくまで日常を過ごすため、飲み屋街に行きてぇ〜〜という気持ちを抑え、最後はホテルに戻ってビールやおつまみを楽しみながらマッサージを頼むことにした。
マッサージのおばちゃんに宮崎のことを聞くと、「なにもないですよ」とやっぱり言われた。本当の本当の本当の本当の本当にやることがないらしい。自分の県を卑下するとかじゃなく、本当に。
ただ、今日1日過ごしてみて、宮崎の人たちはみんな温かくて良い人だということがわかった。その温かさに触れたことで、旅行を感じられた。それでいいじゃないか。
うん、そうだ、きっとそうだ。
宮崎にはなにもないかもしれない。しかしとても温かい人たちがいる町でした。
私は日常生活を送ることに失敗した。でも大切な人の優しさを知ることができた。以上。
あー、いい文章の締めだ。これは良い記事になるぞ。
と、マッサージされながら記事の構成を頭の中で考えていたら、おばちゃんから、
「人が温かいわけじゃなくて、東京の人と違って暇なんですよ。なにもないし忙しくないから、みんな余裕があって話す時間があるだけです」
と言われてしまった。真理。
やっぱり宮崎は、笑顔でゆっくりと優しく地獄を見せてくれる優しい鬼がいる国だった。
2日目からは友達と合流してちゃんと旅行した。
地元の人からすれば「なにもないよ」の場所であっても、旅行者からすれば巡る場所なんていくらでもある。最後の写真のラーメン屋は、観光地ではない町中にあるお店だけれど激ウマだった。
色々と今回の旅行について考えたのだけれど、自分の地元に友達が遊びに来て「雨の日になにかすることある?」と聞かれたら、「何もなくて絶望するよ」と送ってしまうものなのかもしれない。地元ってそんなものである。とりあえずイオンに行け。
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