という事で、富士山に登りました
だから、その疑問を解決するために富士山に登ってきました。去年初めて登ったので、今回で二度目の富士山登山となります。
雹(ひょう)が積もった登山道を淡々と、空気が薄い中ゼイゼイ言いながら登りました。そして、10時間ほど掛けて山頂に到着。山頂は、真夏だというのに極寒の世界です。草も生えてません。
思わず深夜1時半に登頂してしまったので、夜が明ける午前5時まで極寒の世界で耐えなければならなくなりました。だって、暗いと撮影出来ないから。
マズイ、これは寝たら死ぬぞ
寝たら死ぬぞ!というお約束なセリフがありますが、実際に仲間が寝始めた時は冗談じゃなくて死ぬと思って起こしました。
笑い事じゃなくなってます。
あまりに寒いので男3人で寄り添ったり、カップ麺をすすったりしながらひたすら夜が明けるのを待ちました。
明けない夜は無いと言うけど、明ける前に凍死って事だってあると思いました。
3時間半がこれほど長いとは
ひたすら夜明けの5時まで待ちました。永遠とも思える闇の中、僕らはガタガタと震え、歯をカチカチと鳴らし続けていました。
そして、少しずつ明るくなってきました。夜が、明けます。
松本、炊きます!!
それでは寒いし、早速ご飯を炊いてしまいましょう。下界から持ってきた米と水を火にかけて加熱します。あとは待つだけ。さぁて、米が炊けないというのは本当か。それともただの伝説なのか。
火にかけてから5分。早くも沸騰している様で、ぐつぐつと音がしています。温度は恐らく88度程度。
なんだか凄く早く炊けてしまいました
10分もしないうちに、湯気が煙に変わって焦げ臭い匂いがしてきました。なんだこれは。もう焦げてるのか?まだ流石に炊けてないだろうと思って、火を極限まで弱めて炊き続けます。しかし、それも5分ほどで断念。火を止め、蒸らしに入りました。
待っている間に太陽が昇り、ご来光が富士山全体を照らし出しました。さっきまでの寒さが嘘のように、暖かい光が僕らを包み込んでくれます。ああ、生きててよかった。そんな事を実感している間にどうやら時間が経ちました。
それでは、いただきます。
で、注目の結果はいかに?
なにも書かずとも伝わるだろうと思いますが、これが非常に不味かった。未だかつてこんなにマズイご飯を食べた事はありません。
芯がそのまま残っていて、噛むと生米の食感がします。なんとも気持ち悪い。表面は柔らかいけどボソボソで、とても食べられた物じゃありません。
こいつはマズイ味じゃぜ
同行のYさんとIさんにも食べていただいたのですが、同様に顔をゆがめ、「マズッ!!」とか「焦げ臭い!!」とか言っていました。だよねぇ、マズイよねぇ。
山岡さんだったら「ぺっ!ぺっ!!これはとても食えたもんじゃないな!!」って吐き出してると思います。でも、山にゴミは捨てられないので吐き出さずに飲み込みました。
神の座、富士山
マズイマズイと思いながらも、出来るだけ食べてしまおうと思って頑張って半生ご飯を食べ続けました。うう、まずいよぅ、もう食えないよぅ。
と、ご飯から顔を上げてみると、雲間から光が漏れて、なんとも素晴らしい景色が広がっていました。
ああ、なんて美しいんだ、なんて大きいんだ、悠久であり雄大なんだ。僕の意識は不味いご飯から一気に解き放たれ、大地の大いなる意識に触れました。
その刹那、わかりました。
「ああ、僕はなんて小さな下らない事を気にして生きてきたんだろう。もう、こうなったら富士山山頂でご飯が炊けるか炊けないかなんて、まして、そのご飯が美味しいかマズイかなんてどうでもいいじゃないか。さぁ、残りは持って帰って食べよう、帰ろう。」
と。
さようなら、富士山。大事な何かをありがとう。
富士山山頂ではご飯を美味く炊けない
小学生の頃教えられた事は本当でした。本当に不味かった。近藤先生、疑ってごめんなさい。
沸点が低いというのも上手く炊けない要因のひとつだと思うけど、沸点が低いがゆえに水がどんどん蒸発してしまうというのも大きな要因だと思いました。炊ける前に水が全て無くなってしまうわけです。
だから簡単に焦げ付いてしまいました。とするともしかすると、おかゆの様に水を多めに入れて炊いてみたらあるいは・・・・。
いや、もうやめておこう。いいじゃないか。「富士山山頂ではご飯を美味く炊けない」のだ。それで、いいじゃないか。圧力鍋とかそういう小細工もどうでもいいじゃないか。
人間は傲慢にして、自然をコントロール出来ると思いこんでしまう。しかし、堤防は簡単に決壊し、竜巻や地震、津波で多くの人が命を落とすのだ。自然は大きく、そして強力だ。
21世紀の現代においても人間は自然の力には勝てず、自然のきまぐれで人類なんて簡単に絶滅してしまうかもしれないのだ。僕らは自然を敬い、生かしてもらっている事を忘れずに生きなければならない。
こんな事を書くつもりじゃなかったのに、どうしたんだ僕は。心配だ。自分が。