おばあちゃんから山菜の食べ方を教わる
どっさり採ってきた山菜を仕分けしながら、ワラビのあく抜きやゼンマイの保存方法などを、曾孫さんと一緒に教えてもらう。
ネットで調べればすぐに出てくる情報だったり、知識としてはすでに持っているものかもしれないが、こうして直接尋ねることで、おばあちゃんの経験からにじみ出てくるニュアンスや体験談が、忘れることのない思い出と共に刻まれていく。





翌々日に海を渡って家に帰り、一緒に採らせてもらった山菜をおいしくいただいた。



ゼンマイを茹でて干す
さて本題のゼンマイである。
おばあちゃんに教わったことを思い出しながら、保存食として加工してみよう。





こうして茹でたゼンマイを干して揉んでいくのだが、ここで私は大きな勘違いをしていた。
これまでメンマ用タケノコなどを干してきた経験から、数日経ってほどほどに乾いた状態で揉むのだろうと思っていたが、どうやら干した日から数時間ごとに揉むのが正解だったようだ。

うっかり3日ほど干してしまったところ、ゼンマイはマッチ棒の燃えカスのような細さになっていた。
触ってみるとカッチカチ。揉んだ瞬間パキパキに割れそうである。ゼンマイってこんなに乾きやすい植物だったのか。
まったく保存に向かない形状になってしまった。揉むという行為は繊維をほぐして柔らかくするということ以上に、保存食として収納しやすくするという意味があるのかもしれない。


忘れていたゼンマイを食べてみよう
カッピカピになったゼンマイをとりあえずビニール袋に入れて、冷蔵庫の奥ににしまっておいたのだが、干すのに失敗をしたという事実が切なくて、ずっと放置してしまった。
そして一年半後の今、冷蔵庫の整理をしていてその存在を思い出し、ようやく重い腰を上げた次第である。
さすがは伝統の保存食、かなり作り方を間違えたけれど、傷んではいなそうだ。たぶん。


かなり記憶がおぼろげになってしまったが、確かおばあちゃんの話では、水から茹でて、沸いたら火を止めて冷ますというのを2~3回繰り返すと言っていたような気がする。
こういう調査は聞き取りだけじゃなく、できれば一緒に作業をしないと本当のところはわからないなと思いつつ、ピョーンと伸びた状態で乾いたゼンマイを茹でていく。

お湯が温まるにつれて、真っ黒でカピカピだったゼンマイは色と太さを取り戻し、沸いたお湯が冷める頃には見覚えのある姿に戻っていた。
そして不思議なのが、茹で汁の匂いが茎ワカメと似ていることだ。そういえば見た目も茎ワカメっぽいかも。ゼンマイ料理、おもしろいな。


通常の山菜ならこれで十分アクが抜けるのだが、ゼンマイの場合は茹でて冷ますという工程を繰り返さなければ食べられない。試しに少し食べてみたら、確かに少しえぐみがあった。
「干しながら揉む」という大切な工程を飛ばしたため、繊維が固いのではという心配があったため、二度目の茹では沸騰してから弱火で15分ほど煮てみた。


こうしてようやく下処理が終わったゼンマイを適当に刻み、胡麻油、ニンニク、ショウガ、めんつゆで炒めて食べてみた。おばあちゃんから食べ方までは聞かなかったので、この辺りは適当だ。
結果として炒め物なのかナムルなのかよくわからないものができたが、里山がもたらすゼンマイ独特の風味が素晴らしく、言語化しづらい味の奥行きがすごい。

戻すときに長めに茹でたことで繊維っぽさはあまり感じなかったが、逆に表面が溶け気味でシャキシャキ感が弱くなってしまったのが悔やまれる。肝心の歯ごたえが台無しだ。
今回のゼンマイには反省点が多々あるので、また来年の春になったら、一緒にあの里山へ行けるといいなと思った。
いろいろ教えてくれたおばあちゃん、山菜狩りに誘ってくれたお孫さん、一緒に遊んでくれた曾孫さん、ありがとうございました。