一見キワモノと思われたものも、ここまでこだわって作り込まれると高級感さえ漂う一品となっていた。それはコーヒーへのこだわりから生まれたものだった。
他にもお土産用の「コーヒーストラップ」とか、コーヒー屋が作った「珈琲キャンディー」(ほろ苦い)など、さまざまなコーヒーアイテムがあった。
帰り際、お店の裏を覗くと、先ほど芝居をされていた社長さんが着替えてコーヒーを炒っていらした。こういう地味な作業風景にも、なんだか心動かされた。ありがとうございました。
コーヒーのおむすび。
バナナの味噌汁。
こんなメニューを出す店が、長崎は大村市にある。
まったく冗談としか思えないようなシロモノだが、たしかにそれは存在し、現実に私の前にその姿を現したのであった…!
※2006年7月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
訪れたのは、長崎は大村市寿古町にあるカフェレストラン・スコーズ。そこに「コーヒーおむすび」はあった。コーヒーおむすびとは、コーヒーで炊いたごはん(!)でにぎったおむすび。一方、バナナの味噌汁は、バナナが具に入った味噌汁。こ、こんなものがあろうとは…。
ではさっそく、バナナの味噌汁から頂くとしよう。味噌汁に入ったバナナを見て、しばし物思いに耽る。
「バナナはおやつに入りますか?それとも味噌汁に入りますか?」
遠足の思い出と目の前の光景とが混じり合ったような複雑な思いを抱きつつ、バナナを口に含む。
「あ……! イモみたい。」
意外なことに、バナナは味噌汁の中で芋になっていた。食感・味、共にかなりリアルに芋に近い。そして意外にもすごくうまい。煮干ダシと思われるダシがしっかり効いており、味噌汁としての基本性能が高い。
話によるとバナナは黄色くなる前の青いバナナを使っているという。なるほど、どおりでグチャッとしてないし甘くもないわけだ。
ゲテモノ料理かと思った私の想像は見事に打ち砕かれた。
コーヒーおむすびは、コーヒーの葉(本物)に包まれてやってきた。色が茶色いのは醤油だと思いたいところだが、コーヒーの色。ありえない。
コーヒーおにぎりは大変複雑な味がした。
まず、おいしい。
おいしいのだが、表現がすごく難しい。
コーヒーの味はさほど強くないが、それがコーヒーだとわかる程度の濃さはある。具には、昆布やパパイヤ(!)が入っており、味に広がりを与えている。
このパパイヤが入っているという時点で、もう私の頭はかなり混乱気味だ。だってコーヒーにパパイヤ、それでおにぎりなのだ。もはや正確に味を表現できる自信などまったくなく、
「コーヒーおむすびはうまかった」
こんな言葉くらいしか出てこない。
人類初の宇宙飛行士・ガガーリンの有名な言葉「地球は青かった」も、その裏ではさんざん、なんて言おうか迷っていたのかもしれない。
さて、こんなキワモノ・メニュー、一体どんな人が作ったのであろうか?
次ページの最初の写真がその開発者である、この店の社長さんである。
こちらの、なんともインパクトのあるルックスのかたが、社長の中島洋彦さん。登場するやいなや、挨拶代わりに謎の言葉(ブラジル語っぽい)を連発し、客席に爆笑の渦が巻き起こった。
いや、その前に、ここはどこだ?
展開が唐突で申し訳ない。
順を追って説明すると、先ほどのコーヒーおにぎりを出すお店には、コーヒー園が隣接されており、ここでコーヒーの自家栽培を行っている。なんでも日本で最初にコーヒーの栽培に成功したのだそうで、昭和49年から続けられている。
つまり、コーヒーおにぎりは、単に変わったおにぎりを作ろうとしてそうなったのではなく、コーヒーに対するこだわり・熱意が頂点に達した結果、その思い入れが向けられた先がおにぎりだったというわけだ。
先ほどおむすびがコーヒーの葉に巻かれて出てきたのも、自家栽培してるからこそできる芸当なのだ。
そして、なぜかコーヒー園の中に芝居小屋がある。15名以上の団体客が訪れると、ここで社長さん自らが演ずるお笑い劇が披露される。このページの冒頭の写真は、その時の1枚だ。
「ただ普通に『あちらがコーヒーの木です』という説明をしてもお客さんはつまらんでしょう。それでは来てもらえませんから。」 というのが、芝居をする理由なんだとか。実際、観光バスに乗った団体客がしばしば訪れ、この日も午前中2回と午後1回、芝居が行われた。芝居で客を引き寄せるコーヒー園。
ちなみに、今回案内をしてくださったのは、社長の息子さんである中島徳彦さん(写真上)。写真でもわかるように、かなりのイケメンである。この方がとても丁寧に案内してくださった。個人的には、このおやじさんとのギャップがとても面白かった。
さて、並々ならぬコーヒーへの思い入れは、コーヒーおむすびだけにはとどまっていなかった。次のページにて、数々のコーヒーメニューをご覧頂きたい。
再び場所をレストランに戻し、数々のコーヒーメニューを見て行きたいと思う。
まずは、コーヒー寿司。
もう、ネーミングだけでかなりキテる。
ここ長崎県大村市では、「大村寿司」という錦糸玉子を乗せた独特の押し寿司があるのだが、これはそれのコーヒーバージョン。コーヒーの葉っぱに包まれての登場である。
コーヒーおむすびを食べた後だったからか、もはや何の違和感も感じなかった。控えめの味付けで、普通にうまい。
中には幾つかの具材が入ってるのだが、そのうちのひとつがパパイヤ。パパイヤと言っても、我々が想像する甘いアレではなく、熟す前のまだ青いパパイヤを漬物にしたものだそうだ。言われないとこれがパパイヤだとは普通の人は気が付かない。
バナナ、パパイヤなど、“南国風”というのもこのお店のテーマだ。
お次はコーヒーピラフ。上に乗ってるのはコーヒーで煮込んだとろとろの鶏肉だ。
洋食だとコーヒーの溶け込みっぷりもまた一段とナチュラルに。ここまで来るともう、コーヒーが調味料のように思えてくる。すごいうまい!
その後は、これまたコーヒーを使ったデザートが2品。コーヒーパフェに、コーヒー水まんじゅう。
もう、なんでも来い!!
最後はやっぱり王道の「飲むコーヒー」を。
こちらは一杯1000円の、100%自家栽培豆を使ったコーヒー。(自家栽培でとれる量にはやっぱり限りがあるので、100%のものは貴重な一杯。)
さて、そのお味は…
うむ。
さすがに美味しい。
余計な細かいことなど一切考えずとも、飲めば
「あ、これはうまい」
とすぐにわかる違いがある。
もっとも焙煎したて・挽きたて・煎れたてなのだから、うまくて当然なのかもしれないが…。
「む~ん。やっぱりうまいな、飲むコーヒー。」
今回さまざまなコーヒー入りメニューを食べてみたが、やっぱり飲むコーヒーが一番おいしい、ということもなんとなくわかった。
一見キワモノと思われたものも、ここまでこだわって作り込まれると高級感さえ漂う一品となっていた。それはコーヒーへのこだわりから生まれたものだった。
他にもお土産用の「コーヒーストラップ」とか、コーヒー屋が作った「珈琲キャンディー」(ほろ苦い)など、さまざまなコーヒーアイテムがあった。
帰り際、お店の裏を覗くと、先ほど芝居をされていた社長さんが着替えてコーヒーを炒っていらした。こういう地味な作業風景にも、なんだか心動かされた。ありがとうございました。
●お店データ 長崎スコーコーヒーパーク |
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