身近なスーパーに南国が売っていた
ココナッツを仕入れたのは、とても身近な場所だった。
よく行くスーパーのうちのひとつ、ライフ。四つ葉のクローバーのマークを見るとホッとする。なかなか見つからない商品も、ライフなら置いてある気がしてしまう。ライフにいると、底知れぬ安心感に包まれるのはなぜだろう。そういう人、きっとわたし以外にもいるんじゃないかと思う。
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そんなライフでウロウロしていたある日のこと、果物コーナーの一角でヤングココナッツに出会った。
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えっ、こんなのも置いてあるんだ!!
高鳴った。もしかしたら、たまたま入荷していただけで、来週はないかもしれない。目にした瞬間が、手に取るタイミングだろう。
で、手に取ってみたわけなのだが……
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実は漠然としていた説明文。
はたして無事実の内側にたどり着けるのか。どきどきしてきた。
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ものすごーく分厚いコルクボードをほじくっているみたいだ。やはりアイスピック的な何かが必要そうである。
代わりになるものはないか。悩んでいたところ、我が家にはキリがあったのを思い出した。 おそらく記事で工作を作った時に購入したものだろう。こういうとき、「むかし記事で使ったっきり使ってない、でも捨てずにとっておいた何か」は、役に立ちがちだ。
で、いざ、工具の出番である。まな板の上で工具をいじるの、禁忌に触れているような気持ちでぞくぞくする。
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ここに到着するまでに約10分かかった。長いのか、短いのか。初めてのことなので、よくわからない。
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………と「むかし成城石井で買ったココナッツジュース」という、既製品と同じ味という感想を抱いてしまい、味気ない食レポで申し訳ない。
だが、当人は感動していたのだ。贅沢をしたい気分のときに行くスーパーで売っているものと、工具を持ち出してエイヤッと力技でこじあけたものとが、同じ味というのは、心に迫るものがある。
とはいえ、もっと具体的にも言っとこう。なんというか、うり系の野菜や葉っぱの汁をたくさん集めた味わいだ。植物の持つ「みずみずしい」をかき集めたような。そして自然な甘さが静かにある。もしかしたら、カブトムシが吸っている汁ってこんな感じなのだろうか。
破壊と創造
パッケージの説明によれば、ココナッツジュースを飲み干したら、ココナッツを割り、内側に付いている脂肪分をかき出して食べるとよいらしい。
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そこでひらめいた。再び工具である。割るといったら金槌だろう。
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内側の脂肪分をスプーンでかき出していく。食べられるというが……
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肝心の味なのだが、おいしいともおいしくないとも言えない、難しい立ち位置にいる味わいだった。
ただ、おそらく個体差がある。わたしが購入したヤングココナッツはたまたま、難しい味のものだったのだ。
行列に並んでごはんを食べると、心なしかごはんをおいしく感じる現象ってあるだろう。だが、このココナッツミルクに関しては、結構苦労して絞り出したにもかかわらず、うわのせの「おいしい」は特になかった。すごく平熱の味わい。でも、その平熱さも含めて、体験を食べているなーという感慨があった。
みなさまにおかれましても、急に南の島に行きたい衝動にかられたり、なんの気なしに金槌をぶんぶん振りたくなった時には、是非試してみてほしい。わたしも、今後そんな衝動にかられたときには、いそいそとライフに出かけたい。