特集 2021年10月12日

工具を駆使して味わうココナッツが楽しい

家で楽しめる娯楽がまだまだ必要な今、未体験の食べ物を見かけるや否や、おっしゃ!と手に取って、レジに向かいがちである。

そんな思いで手に取ったココナッツと格闘したところ、体験を食べた!という思いで胸がいっぱいになった。報告させてほしい。

1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

前の記事:ところてんに酢醤油と黒みつ、両方かけるとうまい

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身近なスーパーに南国が売っていた

ココナッツを仕入れたのは、とても身近な場所だった。

よく行くスーパーのうちのひとつ、ライフ。四つ葉のクローバーのマークを見るとホッとする。なかなか見つからない商品も、ライフなら置いてある気がしてしまう。ライフにいると、底知れぬ安心感に包まれるのはなぜだろう。そういう人、きっとわたし以外にもいるんじゃないかと思う。

“おいしい”“ワクワク”“ハッピー”をお届けしているそうだ

そんなライフでウロウロしていたある日のこと、果物コーナーの一角でヤングココナッツに出会った。

こんなにも飲み方と食べ方が示唆されてるパッケージ、果物コーナーではめずらしい。ちなみにココナッツには、ヤングとオールドがあるそうな。名前のとおりヤングの方が若く、見た目もみずみずしい

えっ、こんなのも置いてあるんだ!!

高鳴った。もしかしたら、たまたま入荷していただけで、来週はないかもしれない。目にした瞬間が、手に取るタイミングだろう。 

で、手に取ってみたわけなのだが……

おや
さらりと「アイスピックなど」と書いてあるが、アイスピック、これまでの人生で買おうと思ったことが一度もなかったぞ。もちろん家には置いていない。どうすれば。
こちらも……
さらりと「cut」とか「割る」とか書いてあるが、ココナッツの触り心地からして、簡単に割れる気はしない。何をどうやったら割れてくれるんだろう、これ。

実は漠然としていた説明文。

はたして無事実の内側にたどり着けるのか。どきどきしてきた。

とはいえ、なにもしないと飲めないので、アイスピックの代わりに包丁を差し込んでみる。心なしか、包丁が悲鳴をあげているようだ。ごめんね包丁
どうすればいいんだろう……。わけもわからぬまま、包丁で切れ目を入れたところを、スプーンの持ち手でえぐってみる。しかし核心には迫れない。

ものすごーく分厚いコルクボードをほじくっているみたいだ。やはりアイスピック的な何かが必要そうである。

代わりになるものはないか。悩んでいたところ、我が家にはキリがあったのを思い出した。 おそらく記事で工作を作った時に購入したものだろう。こういうとき、「むかし記事で使ったっきり使ってない、でも捨てずにとっておいた何か」は、役に立ちがちだ。

で、いざ、工具の出番である。まな板の上で工具をいじるの、禁忌に触れているような気持ちでぞくぞくする。

これがわたしのアイスピックだ!という強い気持ちで、ココナッツに何度も刺していく。すると……
お、穴がうまれた。無理やりほじくったというよりは、少し刺激を与えただけで、すうっと穴があいた感じ
まるでストローをさすために生まれてきたような穴。

ここに到着するまでに約10分かかった。長いのか、短いのか。初めてのことなので、よくわからない。 

とりあえず飲もう飲もう
あ!むかし成城石井で買ったココナッツジュースの味がする!

………と「むかし成城石井で買ったココナッツジュース」という、既製品と同じ味という感想を抱いてしまい、味気ない食レポで申し訳ない。

だが、当人は感動していたのだ。贅沢をしたい気分のときに行くスーパーで売っているものと、工具を持ち出してエイヤッと力技でこじあけたものとが、同じ味というのは、心に迫るものがある。

とはいえ、もっと具体的にも言っとこう。なんというか、うり系の野菜や葉っぱの汁をたくさん集めた味わいだ。植物の持つ「みずみずしい」をかき集めたような。そして自然な甘さが静かにある。もしかしたら、カブトムシが吸っている汁ってこんな感じなのだろうか。

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破壊と創造 

パッケージの説明によれば、ココナッツジュースを飲み干したら、ココナッツを割り、内側に付いている脂肪分をかき出して食べるとよいらしい。

再掲。……でもさ、あまりに自然に「割って」と書いてあるが、どうやって割ればいいの

そこでひらめいた。再び工具である。割るといったら金槌だろう。 

貯金箱を割るような気持ちで、思い切ってたたいています。がなかなか割れない
どんどん粉々になっていく哀れなココナッツ。叩き方を間違っている気もしなくもないが、割れればいいのだ。割れれば。
割れた!

内側の脂肪分をスプーンでかき出していく。食べられるというが……

あとで調べたら、おさしみにしても良いという説を見た。おさしみ!
今回は少し水を加えて、粉々にしてみます
俗にいうココナッツミルクが完成した

肝心の味なのだが、おいしいともおいしくないとも言えない、難しい立ち位置にいる味わいだった。

ただ、おそらく個体差がある。わたしが購入したヤングココナッツはたまたま、難しい味のものだったのだ。

行列に並んでごはんを食べると、心なしかごはんをおいしく感じる現象ってあるだろう。だが、このココナッツミルクに関しては、結構苦労して絞り出したにもかかわらず、うわのせの「おいしい」は特になかった。すごく平熱の味わい。でも、その平熱さも含めて、体験を食べているなーという感慨があった。

みなさまにおかれましても、急に南の島に行きたい衝動にかられたり、なんの気なしに金槌をぶんぶん振りたくなった時には、是非試してみてほしい。わたしも、今後そんな衝動にかられたときには、いそいそとライフに出かけたい。

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