特集 2025年7月12日

鉄塔に布がかかっていたので見に行く

結局何なんだ

歩いて距離感を知り、詳細に見て、音を聞いて匂いもきっと嗅いだだろう。体は大変満足したが、あれが何かがまだ分からない。

ようやくしっかり気になってきたので、次は図書館に行って本を借りた。

あるもんですね

しかし鉄塔に布をかけるという記述がなかなか見つからない。目に入ってくる布じゃない話がおもしろい。例えば鳥獣対策として、生き物を寄せ付けない工夫はもちろんのこと、敢えて事故のおそれの少ない場所に巣作りを誘導する巣籠という仕掛けもあるのだそうだ。へえ。いや違う、布だ。布を探さないと。

こんな感じで何往復も流し読みし、やっと「設備診断」のページで布を見つけた。 

あった!(送電鉄塔研究会『送電鉄塔ガイドブック』オーム社、2021、p159)

錆による劣化を防止するために、錆取りと再塗装を行う様子。塗装は錆を防ぐ目的の他に、航空標識としても大事なのだそう(紅白鉄塔の場合)。

なるほど、塗装だ。ここまで読んでくれた皆さんは何となく予想していたと思うが、あれは塗装のための布だったのだ。僕が見に行ったまさにその時も、あの布の中に作業員の方がいて錆取りと塗装をしていたのだと思う。そういえば錆取りっぽい「ギュイイイイン!」という音がしていた。

あと、本に載っているのは送電鉄塔の塗装だが、僕が見に行ったのは電波塔だ。見た感じ同じ方法で塗装をしているが、細かい違いがあるのかもしれない。

しかしこれだけだとちょっと物足りないので、インターネットでも調べてみた。こちらも全て送電鉄塔についての情報。 

分かったこと

  • あの布は、塗料の飛散を防ぐためのもの
  • 作業の方法は「無飛散ネット工法」、布は「こぼさネット」と呼ぶらしい(会社によって違うかも)
  • 錆止めに使うのは亜鉛メッキ
  • 塗装のために足場を組むと時間とコストがかかるので、塗装工事用ブランコで作業している
  • 送電鉄塔の場合、塗装中も電気が通っている
写真を見返すと、中で塗料が散って布が受け止めている様子が分かる

上から命綱でぶら下がって、塗装をしている作業員の方を想像できるところまできた。アンテナを避けて布を張るの、大変なんだろうな。頭も体も納得した手応えがある。

検索ですぐに分かってしまうのは野暮で情緒がない印象を持っていたが、今回に限っては想像を補完してくれる情報をたくさんくれてとても助かった。 

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家族みんなで納得した

翌日、妻に鉄塔の布のことを話した。歩いて30分ぐらい、地図でいうとこの場所にあって、布の目的は塗装で…、と一通り伝えると

「へーーーー!」

と、スーパーロングビッグへーをいただいた。気持ちがいい。

色々しゃべったあと「みんな勉強熱心だねえ…」と呟いた。後ろで子どもが日本の郷土料理を調べていた。

翌日、布が取れていた

この話を担当編集の橋田さんにしたところ、昔鉄塔の近くに住んでいた時のことを思い出してくれた。

ある日郵便受けにお知らせの紙が入っていて、工事をするのだけどカバーをするので安全です、という感じの内容だったらしい。きっと塗装だ。こぼさネットを使う無飛散ネット工法だよ(各社、きっと呼び方は違う)。

橋田さんに送っていただいた写真。本当に近い
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編集部からのみどころ
鉄塔に布がかかっているのが気になったトルーさん一家。
検索したい気持ちをグッとこらえて、地図で場所の確認もせず、トルーさんが家族代表で(?)ふもとまで見に行きました。
結局は本とインターネットの情報で知るんですが、とりあえず行ってみると興奮度合いが違いますよね。
ラストは編集担当の橋田が実はなんとなく答えがわかっていたという事実が書かれています。最初に言わなくてごめんなさい。(橋田)

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