美深へ再訪
初めて美深にチョウザメを食べに訪れた時は、先に書いたように「びふか温泉」のレストランは休業中だった。調べずに行ったので、現地に行ってマジか! と驚いた。それからしばらくして、また私は美深を訪れた。今度は「びふか温泉」の宿泊客となって、チョウザメを食べるためだ。
美深に用事があったわけではない。チョウザメを食べたくて、そのためだけに美深に来たのだ。調べれば美深以外でもチョウザメを食べることはできると思うけれど、美深で食べたいと思っていた。
美深には天塩川が流れている。北海道では2番目に長い川だ。この川を1857年に訪れたのが、蝦夷地を北海道と命名した「松浦武四郎」だ。その時のことを1863年に「天塩日誌」として出版している。私はこれを読んで、ぜひ美深で食べたいと思ったのだ。
松浦武四郎は天塩川の美深付近で、チョウザメをたくさん見た、と書いている。ちなみにさらに下ったところでもチョウザメを見ていて、気持ち悪いと書いている。松浦武四郎が食べたという記述はないけれど、美深町史などには、この地域では魚肉や魚卵(キャビア)が貴重な食料となったと記録があるそうだ。
私はチョウザメをただ食べるのではなく、歴史という調味料が欲しかったのだ。つまり美深は最適と言える。ただ松浦武四郎が見た天塩川のチョウザメはもういない。昭和初期頃までは生息していたことが確認されているけれど、現在は美深に限らず国内では絶滅している。
現在、美深ではチョウザメを養殖している。1983年にチョウザメを300匹、三日月湖に放流したのが始まりだ。三日月湖での養殖は水質等の問題で上手くいかなかったようだけれど、1992年からはビニールハウスを建て、1993年には初めてキャビアの搾取に成功している。
導入から実に10年という月日が経ってからの成功。今では町内にいくつかのチョウザメ養殖施設があり、カントリーサインにもなっている。美深と言えばチョウザメなのだ。チョウザメを食べるには美深なのだ。
美深チョウザメ館は、無料でチョウザメを見ることができる。チョウザメの餌も売っていて、餌をあげることもできる。ここに来たのは2度目だ。前回も来た。そして食べたいと思っていた。今回は「びふか温泉」に泊まることにしたので、ついに食べることができるわけだ。
少しその前に!
美深と言えばチョウザメと散々書いたのだけれど、実はもうひとつある。村上春樹の「羊をめぐる冒険」に出てくる十二滝町のモデルとなった場所とも言われている。そうなると羊も見ておきたいと思うわけだ。
厳密に言うと、「世界のめん羊館」は「士別市」にあります。美深ではありません。美深で羊を探したのだけれど、見つけられなくて、確実に羊を見ることのできる場所を探した結果、士別の「世界のめん羊館」ということになった。美幌でも探せばいると思うのだけれど、チョウザメのことばかり調べていて。だから全然関係ない街に羊を見に行っただけです。
いろいろな種類の羊がいた。羊の知識があまりないのだけれど、羊と言ってもいろいろな品種がいることがわかる。餌も売っていたので買った。噛むようなことはなく、上手に餌を食べた。ちなみに羊には歯があります。チョウザメにはないけれど。
グランドチャンピオンの羊もいた。2025年に行われた北海道サフォーク種羊共進会で見事にグランドチャンピオンになった羊だ。「羊をめぐる冒険」では星形の斑紋のある羊を探していたけれど、僕が探していた羊はグランドチャンピオンだったのかもしれない。ただのチャンピオンではないのだ、グランドチャンピオンなのだ。
もちろんグランドチャンピオンにも餌をあげて、士別を後にして、美深に戻った。美深の道の駅に行くと、「メリーさんのひつじミルクソフト」が販売されていた。毎年4月下旬から10月末までの期間限定で販売されている、羊のミルクを使ったソフトクリームだ。
生まれて初めて羊のミルクを使ったソフトクリームを食べた。確かにいつもの牛のミルクのソフトクリームとは違う。羊を感じるのだ。そこは好み。先の「世界のめん羊館」で羊と触れ合った時のような感じが、味として口の中に広がる。とても濃厚だった。


