特集 2025年7月15日

街好きライター山田窓さんと行く調布

鬼太郎がいる

てつみちに戻り、地下化した線路のうえを歩いていく。

誰かいる

水木しげるの銅像だ。

彼は自伝漫画『総員玉砕せよ!』の舞台ラバウルから戻った跡、1959年からずっと調布に住んでいた。(どうでもいいが調布駅が東に200メートルずれた6年後だ)そして2008年には調布の名誉市民になっている。そんな関係で調布には彼に関係する彫刻なりがそこそこあるようだ。

線路跡の行き止まりにある公園には、当然鬼太郎がいる。

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トイレのピクトグラムも彼らだ。目玉の親父が車椅子に乗ってるのはうまい。

当然、ぬりかべもいる。 

「鬼太郎関係は街なかでもよく見かけますね」と山田さん。

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ビルの窓にいる
変圧器の上にいる

たしかに鬼太郎だらけである。

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暑さで弱るねずみ男

ねずみ男もいた

写真を見返していたらびっくりしたのだが、なにかの拍子に間違って撮ったと思われる自分の顔が、どうにもねずみ男だった。

とにかく調布には彼らがいるということだ。

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展望室から調布を見る

つぎに連れて行ってもらったのは調布の文化会館だ。ここの展望室から調布の街を見るのがおもしろいという。

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調布市文化会館たづくり。側面に「由」って書いてある?「田」?

文化会館の名前は「たづくり」というそうだ。側面に「田」と書いてあるような気もするが、由にも見える。

「万葉集に手作りと書いて『たづくり』と読む、多摩川にちなんだ歌があって、そこから名前を取っています」

※多摩川にさらす手作り(たづくり)さらさらに 何そこの児のここだ悲しき

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「そもそも調布の由来は、租庸調の調、つまり税金として布を納めていたからで、調布と書いてたづくりと読むこともあります」

たしかにその調布の由来は聞いたことがある。そしてまったく関係ないが、いまの学生は租庸調ではなく租調庸と習うらしい。

「ただし調布は明治時代になってつけられた町名で、万葉集の和歌も調布に限ったわけではなく、多摩川流域に伝わる歌です。だから田園調布や青梅の調布も同じ由来なんです」

なるほど、田園調布もたしかに調布だ。ただ青梅にも調布があるのは知らなかった。

南側をみると、遠くに観覧車が見える。よみうりランドだろう。多摩川を挟んで南側の高台を見ていることになる。 

地理院地図に加筆

地形図だとこう。調布は多摩川が削った段丘の2段目にあって、川べりの京王閣の競輪場よりは一段高いが、北の深大寺よりは低い。そういうようすがよくわかる。

整備中の駅前広場の奥には、線路跡に建てられた商業施設トリエ(さっきのはC館で、これはA館)が見える。線路跡なので建物がすごく長細い形をしているのが面白い。

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鬼太郎が住んでいるという神社

水木しげるが調布に住んでいた関係で、『ゲゲゲの鬼太郎』のモデルとなった場所も調布にあるという。

それは布多天神という神社なのだが、まずはその隣の大正寺というお寺から案内してくれた。調布駅から北へ歩いて5分。電気通信大学のすぐそばだ。

これが大正寺だ。調布駅のすぐそばがこの景色なのは素敵すぎる。

「漫画(ゲゲゲの鬼太郎)の中だと、池があってその奥に家があるようなので、分かりませんがこういう感じのイメージがあったのかもしれません」

鬼太郎の家、もっと暗くて鬱蒼としてジメジメした感じを勝手に持っていた。もしこの辺りがモデルだとしたら、駅近で日当たり良好すぎるだろう。

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布多天神にやってきた。

「いまは菅原道真を祀ってるんで天神さんなんですけど、もともとは少彦名(スクナビコナ)っていう出雲系の神様を祀っていました」

もともと調布のあたりには上布田、下布田など五つの小さな宿場があって、布田五宿と呼ばれていたらしい。そして布田天神はその五宿の守り神だった。いまは調布の守り神になっているとのこと。

ちょっと面白いものがあると見せてくれた。

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「これ、前はつながってたのを切ってるんですよね、たぶん・・」と山田さん。右側の敷地は大正寺で、左側は布多天神だ。矢印の部分が、突然切れているように見える。

「(布多天神の)裏が大正寺の墓地になってるので、繋がってたのかもしれないですね」

たしかにそんな気がする。じゃなかったらあの櫓みたいなのの役割がよく分からない。ただ、夜中に妖怪に切られた可能性はある。

そして連れてきてもらったのが、布多天神の裏手の林だ。『墓場鬼太郎』という作品にこういう一節が書かれたページがあるという。

「あの布多天神の裏手の所有者不明の土地に みすぼらしい小屋がある」

そのページを載せることはできないが、その絵の雰囲気にこの風景がよく似ているのだ。布多天神と名指ししているから、この周辺であることは間違いない。たしかにこのあたりがモデルになっているのだろう。

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そういう目でみると、この万年塀もなんだかぬりかべに見えてくる。目がダイヤみたいで不気味だ。

インカメラで偶然写った自分はねずみ男みたいだし。きっと何かあるのだろう。


山田さんと歩いてみて

やはり見ている場所が違うなというのは思った。とっ散らかるのでぼくがどこを見ていたかはいちいち書かなかったが、たとえば駅前広場の工事ではここを見ていた。

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工事現場は、ふだん見えない地面の下のようすや断面が見えて嬉しい機会なのだ。歩道に敷き詰めるコンクリートブロックはふだんは上から見るだけだけど、こういう場所なら厚みが実感できる。

あとは当然だけど知識も違う。山田さんは少彦名(スクナビクナ)みたいなのがすっと出てくる。ぼくは興味はあるんだけど覚えられない。そういうのをつど教えてもらうのも楽しい。

今回、山田さんは調布を案内するにあたって間違いを言わないようにと、事前に要点をまとめてくれていた。そして街歩きの後に資料や録音を送ってくれた。お互いライターだから分かるというのもあると思うが、むちゃくちゃ助かる。

「記事で見たあの人」だったが、実際会って「どんな人」なのか少し分かった。でも実際にはまだ聞けていないこともあるのだ。そのうちに、また。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
好評のペア記事シリーズ、今回は街歩きの趣味の二人の組み合わせで一日過ごしてもらいました。三土さんがねずみ男になるくだりなんかは、一人の記事では出てこない隙の部分が二人であることによって出てて楽しいですよね。編集視点ですが、鬼太郎の話が一カ所にまとまってなくて何回か出てくるところなんかも、いいライブ感があるんですよね。一緒に歩きつつ頻繁に足を止める二人の様子を想像しながらぜひお読みください。(石川)

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