特集 2021年11月7日

カイロを布団にしたい(デジタルリマスター)

肌寒い季節がやってきた。この季節になると頼もしいのがカイロ。鉄が酸化するときの熱を利用したお馴染みの商品である。ちなみにそのへんの鉄が錆びる時にも熱は出ているが、反応がとてもゆっくりだから分からないらしい。
話がそれたが、カイロは私が子供の頃からずーっと同じかたち。全然進化がない。もっといろんなカイロがあってもいいのではないだろうか。そんなわけで新しいカイロの形を探ります。

2012年3月に掲載された記事の写真画像を大きくして加筆修正のうえ再掲載しました。

父は数学教師。母は国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな環境で育つ。普段はTVCMを作ったり、金縛りにあったりしている。(動画インタビュー)

前の記事:テントを建てても打ち立てよう定礎ペグ


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まずはカイロを入手

120個買った。まず皆さんにお伝えしたいことは、カイロを120個買うとめちゃくちゃ「重い」です。

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全部で9kg

カイロの中に入っているのは鉄であるということを、実体験で知った(ドラッグストアから家まで運んだだけで筋肉痛になった)

開発開始

※記事の中盤までに作ったカイロは、全て使い終わった後の使用済みカイロを加工しています。使用前のカイロに穴をあけると製品規格を超えた温度になる可能性があります。また中に含まれる鉄粉などの素材は人体に害の少ない素材が使われているようですが、目に入ったりすると危険です。真似をする時はお気をつけください。

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まずは袋に穴をあけて、中の鉄粉を取り除く
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袋をいろんな形に切り抜き糸で縫い合わせる
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最後に鉄粉を入れ、厳重に縫い合わせれば完成

文章にするととても簡単だが、鉄粉が漏れないように慎重に縫い合わせると、ひとつ加工するのに1時間半ぐらいかかる。

今回開発したカイロがこちら

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北海道のお土産コーナーに売ってそう

 

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エジプトのお土産コーナーで売ってなさそう

下の方にある切れ込みはナセル湖、丸い穴はエジプトの首都カイロである。

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海モチーフを取り入れてみました

 

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独眼竜カイロです

 

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ご利益がありそうです

 

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おでこがホカホカになります

 

いったん広告です

ここまでいろんなカイロを紹介してきたが、使用済みのカイロを使っているため全く温かくない。ただの重めの砂袋である。やはりカイロは温かくないといけないのではないだろうか。温かくて、なおかつ今までにないカイロの開発がしたい。そんなわけで開発したカイロがこちらです。

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110個のカイロを投入

100個のカイロを縫い合わせて、ひとつのでかいカイロにする。しかし、大きな問題がある。

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作業が長引くと発熱が終わる問題

カイロは袋から取り出した瞬間から発熱がはじまる。24時間発熱するタイプのカイロを今回は使用するので、袋を開ければ、24時間以内に一気に作業を完了せねばならない。

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試しに縫ってみる

手始めに縫ってみると、一列縫うだけで90分ぐらいかかった。残り10列。15時間。睡眠時間を削れば一応作業は終わる。しかし、何が悲しくて休日にカイロを15時間も休みなく縫わなければいけないのだ。こんな理不尽なことがあるだろうか。

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やめようかな……

そんなことを考えていると、母が「ホッチキスでとめたらいいやん」とぽつりと言った。すごい!母による技術革新が起きた。

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黙々と作る

ホッチキス製法に変わってからは、作業は小川のせせらぎのように流れに流れ、なんと3時間で完成した。完成したデカイロがこちらである。

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そのまま布団として売り出せそうなかわいらしさ
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重量は約8kg
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テーブルクロスにもなります
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もちろんホカホカ

そんな巨大なカイロ熱そうだし重そうだし、使っても辛いだけだろうと思われる方がいるかもしれないが、意外や意外、快適なのです。

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意外と快適

砂浜で埋められて「やめろよー冗談じゃないよー」と言いながら心の中では「夏の日差しによって温められた砂とこの圧迫感、妙に心地いいな……」と思ったことはないだろうか。そんな感じである。私ひとりの感想では、信じてもらえないかもしれないので、父と母にも体験してもらった。

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笑顔の父

「冬にサッカーとか野外で観戦する時にいいかも」というコメントをもらった。そんな60歳がグラウンドに現れたら嫌だけど、喜んでくれたのはうれしい。

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顔は写さないでと母

小柄な母だと本当に布団のように使える(心地よさそうだった)


カイロのあたたかさを超えて

かくして新しいカイロ開発は、母の協力により無事に終えることができた。そして、100個のカイロよりも確かな熱源は、母の愛であることがわかった(綺麗に締めようとがんばりました)

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ボツになった「機カイロ」

 

 

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