チャンバラガイを食べてみる
こんな変わった貝だが、関東よりも南の地域では昔から結構食べられているようだ(だからこそ漁業権の設定がある)。特に高知では定番のつまみなのだとか。
塩茹でにして味を確かめてみようと、苔だらけの貝をそのまま海水に入れて、火にかけて沸騰してから3分ほど茹でたところ、茹で汁がまあまあ苔臭くなった。大丈夫かこれ。
粗熱がとれてから足先の硬い部分をつまみ、殻を回しながらゆっくりと引っ張って身を取り出す。本来は身を守るはずの部分が取っ手のようで持ちやすい。うっかり人間にとって食べやすく進化してしまったようだ。
渦巻状の殻の奥に入っているであろう内臓は切れてしまっただが、そこそこ大きな身が取り出せた。
どんなもんかと食べてみると、甘味が強いサザエみたいでとてもうまい貝だった。あんなに激しく動くだけあって、見事な筋肉質で弾力がある。煮汁はともかく身を食べるだけなら苔臭さは気にならない。つまみに最高だろう。
なんとなくカニっぽい風味も感じるが、これは見た目から来る気のせいだろうか。チャンバラガイ、おもしろいなあ。
謎の粘液も出した
チャンバラガイを生きたまま少し持ち帰り、改めて自宅で観察してみたところ、貝同士が刀を振り回してチャンバラをする様子を見ることができた。
確かにこれはチャンバラガイと呼びたくなる。
そして驚いたのが、チャンバラを続けているうちに貝から強力なローション状の粘液が出てきたこと。まるでヌタウナギ(というヌメヌメする魚)のようである。
これもまた身を守るためなの機能なのだろうか。相手の刀を滑らせる効果があるのかもしれないが、これは人間によって狭い場所に入れられた結果のチャンバラであり、自然界ではわざわざ切り合わないような気がする。
本当に謎の多い貝である。
たっぷりと観察させていただいた後は、おいしくいただきました。
チャンバラガイことマガキガイ、とても好みの貝だった。いつか高知で食べてみたい。
このように捕まえて食べられる食材の知識と経験がまた一つ増えて嬉しいのだが、これが関東の海で簡単に獲れるのはおそらく温暖化の影響なので、ちょっと微妙なところでもあったりする。ここでも磯の海藻はだいぶ枯れてしまい(磯焼けという現象)、これまで普通に見られた生き物が減っているそうだ。

