デジタルリマスター 2022年2月24日

ペットボトルで魚とり(デジタルリマスター)

生活の中でたまっていくペットボトル。リサイクルも広まってはいるが、有効活用はできないだろうか。

調べてみると、ペットボトルを利用して魚とりのワナが作れることを発見。アウトドアには基本的に背を向けるスタンスを貫いてきた私だが、簡単に魚が捕れるならそれはウェルカムだ。

ペットボトルを通してアウトドア派の自分へメタモルフォーゼ。果たして魚は捕れるのだろうか。

2003年11月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

前の記事:がんばれ!白目ができない人(デジタルリマスター)

> 個人サイト テーマパーク4096 小さく息切れ

自分の殻を突き破れ

山や川、そして海にも囲まれた、自然豊かな千葉の奥に住むようになって一年半。仕事の都合でここに住むようになり、自分も変わるかなと思っていたが、特に趣味が増えたりはしていない現状。東京の知人に「自然の中でいっぱい遊べるね!」などと言われても、曖昧な相槌でごまかす自分。

それでいいのだろうか。緑萌える山、深い青の海、そして休日には昼過ぎまで寝てる自分。

そんなときに知ったのが、身近なペットボトルで魚を捕まえるワナが作れるという情報。幸い自宅のすぐ裏は魚の姿もちらほら見える川ではないか。これはやってみるしかない。

今回の特集は、一人の男が自分の殻を破ってアウトドアに挑戦する成長物語でもある。

逃げ道を確保した上でのアウトドア

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今回は3つ作製

ワナ作りに必要な材料はまさにペットボトルだけ(写真1)。今回は橋から吊り下げるので、そのためのヒモもいるが、かなり簡単にできる。なにかアウトドアっぽいことをしようとしても、道具を揃えることを考えると「たぶん続かないだろう」という思いから一歩目を踏み出せずにいた今までの自分。これならそんな私にも敷居が低い。

投資がない分、すぐに投げ出しても金銭的なダメージはない。「こうなると思ってたよ」と、自分に言い訳ができる。

早くも発想はネガティブ。がんばれ自分。

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おりゃ、おりゃ、と穴を開ける
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なぜかせつなげなペットボトル

ワナ作製の手順も難しくはない。まずはボトルが水中にスムーズに入っていくための穴を開けて(写真2)、斜めに細くなっている部分から切断(写真3)。

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自信のない人は下書きをして

次に魚が入ってくる穴を開けるのだが、ここがポイント。捕るべき魚の大きさを想定し、大物狙いなのか小魚をシュアに捕っていくのかを考慮しながら入り口を作る(写真4)。今回は初心者らしく小さめの穴にしておいた。

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必要に以上に力を込めて結ぶ
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もうすっかり捕れた気分

あとは仕掛けるときに長く結びつけるための仮ヒモをつけ(写真5)、重りの石を入れて逆向きにフタをつければ完成だ(写真6)。魚が入りやすく出にくいという、昔ながらのトラップである。

でき上がったらなんだかテンションが上がってきた。ピチピチの魚たちがびっしり詰まったイメージ。

さあ、次はいよいよ仕掛け。自宅から歩いて1分のところに橋があるのも、テンションがさめないまま移動できることに貢献してくれている。

立ちはだかる壁

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待ってろよ魚

ペットボトルを抱えて、ほどなく川に架かった橋に到着。ちょっとよどんだ雰囲気ではあるが、ここが私のアウトドアデビューの舞台である。

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頼むぜペットボトルたち

今回、ワナに入れるエサは、うどん・うまい棒・虫の3種類を用意。

ベーシックな炭水化物のうどん、おなじみのコーンスナックであるうまい棒。気がついたらすぐそこに、おいしそうなうどんやうまい棒の入ったペットボトルがある。自分が魚だったらあっさり入りそうなくらい魅力的なワナだと思う。

そしてもう1つはフレッシュな生餌の虫だ。これは今回の試みをするに当たって、釣り好きの知人に相談したところイチオシだったアイテム。

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そんなに動き回らなくても

近所の釣り道具屋で買ってきたのが左の写真。

アウトドアの厳しさをお伝えするためにも、ここはあえてモザイクなしで掲載してみよう。この虫がこれから何か別の形態に成長するのか、もうこれで終わりの虫なのかは私にはわからない。

私が魚だったら一番避けそうなペットボトルだが、これが釣り好きのイチオシだと言うからアウトドアはわからない。

こんなところにもあったアウトドアへの重い扉。ビジュアル的にメンタルな部分に効いてきた。

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やましい気分でアウトドア

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準備だけは万端

さて、なんとかエサをそれぞれのペットボトルに仕込み、いよいよ川に投入。あらかじめボトルにつけてあったヒモと、ヒモ玉の先とを結いつけ、橋の欄干から下にするすると下ろしていく。

やってみると結構楽しい。だんだんワクワクしてきた。いいじゃないか!アウトドア!

そういう私の気持ちをさめさせるのは、通り過ぎていく歩行者たちの目。一体何をやってるんだというそのまなざしには、明らかに奇異の陰が差している。

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アウトドア派というより不審者

向こうの方から大声で雑談しながらやってきた中学生の集団が、私に気がついて橋を通り過ぎるときだけ静かになったりするのも私をへこませる。

後から写真を見ても、自分がやばそうな人に見える。

これもアウトドア派になるための試練か。素直にビーパルとか読んでいればこんなことにはならなかった気がする。

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今回はテリヤキバーガー味をエントリー

見えてきた希望

翌日は普段より早く起きてみた。こんな早起きは久しぶりだ。

アウトドアというと早朝から活発に活動というイメージがあるが、私の場合は単に人目を避けるために朝早いだけ。もう中学生たちの沈黙には遭いたくない。今回はたまたま早起きという結果が一般的なイメージと一致しているに過ぎない。

早起きと言えども、そこにさわやかさはない。これがアウトドア自分流。

しかし、魚が入っているかもと考えると気分も楽しくなってくる。橋に向かう足取りも自然と早くなる。まずはうどんのペットボトルから引き上げてみよう。

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ぶらーん
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アウトドア派への転身を賭けて

するすると上がってくるペットボトル。近づいてきても魚の姿は見えない様子。あー…と、がっかりしつつもよく見てみると、あれ?なんかピチピチいってるぞ?

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うどん好きのエビ

エビだ!エビゲット!

魚こそ入らなかったものの、川エビが1匹だけ入っていた。正直言って小物だが、予想外にうれしい気持ち。うどんにつられて入ってきた川エビ。そう考えるとエビもいとおしくなってくる。お前もうどん食べたかったんだな。

高ぶってくるテンション。アウトドア派初級編はもう合格だと勝手に決定。

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甘くないアウトドアの現実

とりあえずの収穫に気をよくして他のペットボトルを引き上げてみる。うどんは一番期待できないんじゃないかと思っていたが、予想に反して入っていた分、期待は高まる。

まずはうまい棒……だが、なにも入っていない。

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もはや棒ではない

本当なら自分が食べたいという気持ちをおさえて投入したうまい棒も、すでにペースト状。魚にコーンスナックは受け入れられなかったのか、、あるいはテリヤキバーガー味というチョイスがまずかったのか。

続いて虫のペットボトル。釣り好きの知人イチオシだったこともあって期待が高まるが……やはりこちらも何も入っていない。

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虫たち自体はまだまだ元気

エサとしてしかけた虫は、今回ターゲットとする小魚が食べるにはニョロニョロと長すぎるんじゃないかな、と、うすうす気づいてはいた。でも処理するのがいやで、長いままにしたのが敗因だったか。

思えばそういった部分でも及び腰だった試み。

しかしまだ一晩しか経っていないというのも現実。もしかしたらこれからかかるかもしれないと思い、再び川に放り込んで数日間待ってみた。

……が、結果は同じ。何も入っていない。特にうまい棒のペットボトルは、長い間水に入れておいたためか、すっかりエサが流れ出してしまっていた。

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すでに何もなくなっていたうまい棒ペットボトル

美しい川の水と時の流れは、全てを洗い流していく。喜びも、かなしみも、そしてうまい棒も…。

急にリリカルになっている自分。しかし私が住んでいるのは千葉の奥、別に川や橋があるのはここだけではない。別の場所でもリベンジだ。

第2ラウンドのゴング

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やったるで

魚とりのセカンドステージに選んだのは、先ほどとはまた別の川。聞くところによると、この魚ではウナギも釣れるらしい。

そう聞いただけで捕れた気分になる、気持ち先行型アウトドア派の自分。

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量が多ければいいという単純な発想

まずはトラップ作り、今回もエサのラインナップは前回と同じ3種類。エビを捕った実績のあるうどんトラップは、前回よりも多めに麺を投入してみた。

エース扱いのうどん。お前に賭けてるんだ。

魚と私の知恵比べ。とは言っても、やってることはエサを入れたペットボトルを投げ入れてるだけ。そこに駆け引きはなく、ターゲットは始めからどちらかというと間の抜けた魚たちだ。クレバーな魚たちは眼中にない。

頼む、入ってくれ!うっかり組の魚たち!

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遥かなるアウトドアへの道

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中央部に見えるのは小魚の群れ

翌朝、また早起きして橋に向かう。欄干から顔を出して水面を見てみると、あからさまに魚の群れが泳いでいるではないか。今回はいけそうだという期待が高まる。

というか、岸に降りていって網ですくいたい。

ワナを仕掛けるとか、ちまちましたことはもういい。あっさりと魚を捕りたい。知恵比べなんて遠まわしなことはほんとはしたくない。

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自分を賭けて引き上げるペットボトル

自分のしていることを否定したところで、網はもってないのでワナを引き上げるしかない。さあどうだ!

……エースのうどんから引き上げてみるが、そこに魚の姿はない。エビすらも入っていない。うまい棒・虫のペットボトルに最後の望みをかけてみるが、やはり何も入っていない。

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くねくねとしたうどんも今はむなしい

完敗だ。うどんたちにつられる魚はいなかった。

すぐそこに魚たちが見えているのにこの結果はどういうことか。釣り好きの知人に聞けば、この川は雑魚なら楽勝でどんどん釣れる川だそうだ。

ウナギを夢見た自分が愚かだった。意外と高かったアウトドアの壁。

このまま引き下がってよいものだろうか。でも、もう朝早く起きたり、釣り道具を揃えたりするのはいやだなんだ。うん、やはりそうだ。あきらめよう。

一瞬迷いを見せつつも、割と早く出た結論。

アウトドアは結果よりも参加することに意義がある。そう自分に言い聞かせて、家に帰ってもう一度寝ようと思う。


既成事実としてのアウトドア

成果としては残念なものに終わったにせよ、とにかくアウトドアへの第一歩を踏み出した自分。二歩目はいつになるのか、見通しはかなり不透明だが、とりあえずできることをしたという充実感はある。

いや、充実感というか、無理やり言い聞かせているのに近いだろうか。

しかし、これで東京の知人たちにも「いやー、休みの日は魚を捕ったりしてるよ」とアウトドアっぽいことを言うことができる。

正確には捕れていないので、「魚を捕ろうとしてるよ」だが、その辺の事実は曖昧に隠蔽。もし次回があったら、どんな卑怯な手を使ってでも魚を捕まえて、先についた嘘に自分が追いつけるようにしたい。

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川面の下で魚たちが私を笑ってる
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