果物は食後がいい
果物はおかずになりにくい。これまでの企画の中で最も予想と結果とが一致した記事だったと思う。すべてにしょうゆをかけたらなんとかなるのでは、と思ったが、ぐちゃぐちゃになる気がしたのでやめた。しかしもしやと思い余ったみかんにしょうゆをかけてご飯と食べたがおいしくなかった。ご飯を食べ終えた後、まだ余っていたみかんを食べたらおいしかった。つまりはそういうことなのだと思う。
今回ご飯のお供に、と用意した果物は上の通り。スーパーに並んでいた旬の果物をほぼ網羅している。この中のたとえば2、3種類がご飯に合えば、僕はそれで満足だ。
それでは早速順番に試していこう。まずはスイカから。夏の果物の王様であるスイカはご飯まで従えられるのだろうか。
答えはノオだ。スイカをご飯と一緒に口に入れると、不思議なくらいご飯を感じなかった。一瞬やわらかいスイカの食感に口の中が支配されるのだ。あ、これはうまいスイカだぞ、と思って噛むと、スイカ汁の中に米が泳ぐ。そして両者はそのまま飲み下すまで一歩も譲らずにふらふらと口内をさまよう。だめだこれは。
だけどまだ一つ目だ。今後に期待、ということで忘れたい。
この先はおかずとしてテストに臨んだ果物たちと、それをご飯と一緒に食べている僕の表情をざっと紹介したい。味を表現するのは言葉ではなく表情が一番正直だと思うのだ。それではまずみかんから。
じゅわっと口の中に果汁が広がると同時か、一瞬遅れて食感として米を感じたときに後悔する。うまいたとえがみつからないが、みかんとご飯を一緒に食べたような感じ、といえばそのままだから想像に難くないと思う。とにかく果汁が多い果物はだめだ。ならば次は歯ごたえのよい柿だ。たのむぞ、柿。
柿は甘すぎず、果汁も少なくおかず的要素を十分に兼ね備えていた。だけどご飯と歯ごたえが違いすぎて互いに相容れないのだ。ごりごりした後べたべたする。しかも種まで出てきた。種が出てくるおかずってあまりないだろう。だめだ。
めげずに行く。次、バナナ。
これはひょっとすると、と初めて感じさせた組み合わせだった。バナナの食感が口の中でご飯とからみあい、絶妙にマッチする。お世辞を言えばトロみたいだ。甘くさえなければ十分におかずになると思った。しょうゆとかかけたいところだ。
次、りんご。
これもありだ。りんごは酸味の強い種類を選んだのが正解だった。甘みと水分が少ない分、ご飯とけんかしない。恋人未満友達未満、といった感じだ。別に嫌ではないけどあえて一緒にいたくない。
しかしバナナからりんごへの流れがとてもよかった。この調子でもっとおかずに適した果物が見つかるのではないか。出口が見えた気がしていた。
ぶどうはどうだ。
これは黒い日の丸弁当だ。見た目は完璧にご飯とセットになっている。梅干みたいにちびちびいかずに一気にご飯と一緒に食べてみた。
しかし違う、明らかに違う。果汁が多く甘いぶどうはご飯を激しく拒んだ。できればほかでやってほしかったが僕の口の中で彼らは主張し続けた。やはり見た目ではないのだなと思った。
気を取り直して次、キウイ。見た目が漬物にも見えるが、経験上甘くて水っぽいものはだめだとわかっていた。結果が見えているような気がするのでグレープフルーツ、パイン、メロン、と一気に見ていこう。
食感的には柿とパインが頭一つおかずに近かったといえる。りんごとバナナもやればできるかも、という可能性を秘めていた。しかしやはりというか甘い果物はご飯には合わない。かといってすっぱいパインや苦いグレープフルーツも合わなかった。果汁が少なくて甘くも苦くもすっぱくもない果物ってなんだ。考えたがそれって野菜だ。そうか、先人たちがおかずとして積極的に野菜を採用してきた理由がよくわかった。
果物はおかずになりにくい。これまでの企画の中で最も予想と結果とが一致した記事だったと思う。すべてにしょうゆをかけたらなんとかなるのでは、と思ったが、ぐちゃぐちゃになる気がしたのでやめた。しかしもしやと思い余ったみかんにしょうゆをかけてご飯と食べたがおいしくなかった。ご飯を食べ終えた後、まだ余っていたみかんを食べたらおいしかった。つまりはそういうことなのだと思う。
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