ワラビサコさんによれば、このゲームを世界的に広めたいということで、ゆくゆくは「世界大会で各国の文房具を使ったバトルが展開される」のを見るのが夢だそうだ(そういう理由で、ルールは無償公開されている)。
なるほど、文房具は世界中誰でも説明無しで使えるわけだから、ルールさえ広まれば世界大会だって不可能じゃない気がする。
今からプレイして上達しておけばワールドカップ出場だってありえるので、みんなひとまず文房具を揃えて遊んでおくといいんじゃないか。
DPZライター陣にもファンの多いボードゲーム(元ライター小野法師丸さんはいまやボードゲームショップ店主)だが、今その界隈で“文房具を使ったちょっと変わったゲーム”が話題になっているらしい。
ベースは1対1で戦ういわゆる○×の五目並べなんだけど、それだけじゃなくて、様々な文房具を駆使して戦うというのだ。なにそれ気になる。
そこで開発者の方に連絡を取って、実際に遊ばせてもらうことにした。
ボードゲーム業界では、年に3回(都内で春と秋、関西で冬)、同人ゲーム作家が集まってオリジナルゲームを売る「ゲームマーケット」というイベントがある。いわゆるボードゲームのコミケみたいなやつ。
で、今年の春のゲームマーケットにその文房具を使った○×の五目並べ「ブングーファイブ」がブースを出していたのだ。
ゲームマーケットって本来なら自作ゲームを売るのが目的なイベントなんだけど、「ブングーファイブ」は文房具+トランプ+プリントアウトしたゲーム用紙があれば遊べてしまうので、売るモノがない。
なので、ブースは試遊台のみ(試遊台のメインは簡易ルールの「ブングースリー」)。このときは2日間で100人ほどがプレイし、大人から子どもまでが文房具を使いまくって遊び倒したとのこと。
売り物なしでゲーム販売イベントにブース出展したのもスゴいが、そこでルール説明込み1プレイ10〜30分かかるゲームを100人遊んだというのも結構スゴい話なのだ。
そういった話を聞くほどに「えー、気になるー!遊びたいー!」という気持ちが止められなくなったので、知人の文房具好き・文房具メーカー社員の方に文房具持参で集まってもらって、プレイの場を設けてみた。
ルールのインストをしてくださるのは、「ブングーファイブ」開発者のワラビサコさん(本業は作詞家)。
そもそもこのゲームを開発した理由が、
→文房具が好き
→だけど、生活の中であんまり文房具を使う機会がない
→じゃあ文房具をたっぷり使うゲームを作ればいいんだ!
という経緯だそうで、まぁ、言い方はアレだが“文房具好きがわりと度を超しちゃった”タイプの人である。
ワラビサコさんによると、最初は「使う文房具が少なくて分かりやすい簡易版の「ブングースリー」から入るとルール把握がスムーズ」とのこと。
そこでルール説明を聞きながら、ヤマト(のりメーカー)広報の宿谷さんと、僕も参加している文房具トークユニット「ブング・ジャム」メンバーの他故壁氏さんで試しに1プレイやってもらおう。
[用意するもの]
6×6マスが描かれた用紙
トランプ1組
鉛筆・消しゴム・ハサミ
「ブングースリー」は○×を交互に鉛筆で描いて遊ぶ3目並べ。ただしタテ・ヨコだけでナナメ3目は不可となっている。
まずは中央に積んだトランプの山から3枚ずつを取って手札にする。あとはじゃんけんででも先攻後攻を決めてゲームスタート。自分のターンではアクション1から3を行って、それが終わると手札を3枚まで補充してターン終了(先行の第1ターンのみ、アクション3から始める)。これを交互に繰り返して、どちらかが3目揃えた方が勝ちとなる。
アクション1. 手札の交換
・手札から最大2枚までを場に捨てて、山から交換する。
この手札を消費して武ん具(消しゴム/ハサミ)のスキルを使うので、使いたいスキルのためにカードを集めておくのだ。
アクション2. 武ん具スキル発動
・手札を消費して、武ん具(消しゴム/ハサミ)のスキルを発動させる。
スキルは以下の通り。
○黒カード(エース・クローバー)…消しゴム
・2枚消費 壁(後述)を1つ消す
・3枚消費 相手のマーク(○/×)を1つ消す
○赤カード(ハート・ダイヤ)…ハサミ
・2枚消費 マス目のラインを切ってつながりを断つ
アクション3. 鉛筆でマーク(○/×)か、壁を描く
・壁はマス目のライン上に描く。これで相手のマークのつながりを止めることができる。
…とまぁ、この時点でうすうす感じてもらえたかと思うが、普通の3目並べと違ってやたらとダイナミックなのだ。
なんせ、あと一手で負ける!という時でも、相手のつながりをハサミで物理的に断ち切って無効したり、そもそも消しゴムで相手のマークを消してしまうことだってできてしまう。実際にやってみた体感としては、○×を並べるよりも、むしろいかにスキルで相手を攻撃して手を遅らせるかがポイントっぽい。
鉛筆で壁を描いてもマークのつながりを止めることができるが、これは消しゴムスキルで消してキャンセル可能。ところがハサミでラインを切るともはや復旧不能なので、つながってるマスを求めてどんどんとマークが広がっていくことになる。
3目並べなんてシンプルなゲームだと思っていたが、こいつは派手だぞ。
ちなみにこのゲーム内では文房具を「武ん具」と呼称するが、なるほど、確かにこれは武具だし、使いこなせないと絶対に勝てない。あー、文房具好きなら燃えるわー!
さて、集まったメンツでひとわたり「ブングースリー」を遊んでルールの基本を身に付けたところで、いよいよ本番の「ブングーファイブ」をプレイしてみよう。
※詳細なルールは「ブングーファイブ」サイトを参照のこと。
スリーとファイブで何が違うかというと、まずフィールドが8×8マスに広がること、手札上限が5枚(交換はスリーと同じく2枚まで)になること。そしてなにより使える武ん具がドバッと増える。
使用できるのは、消しゴム、ハサミに加えてさらにセロハンテープ、のり、ホッチキス、ふせん、コンパス。この7つの武ん具から事前に4つを選んで、トランプのスート(エース・クローバー・ハート・ダイヤ)にそれぞれ割りあてておく。
もちろん各武ん具にはスキルがあって、例えばエースを3枚揃えて出せば、エースに割り当てた武ん具の3ポイントスキルがバキッと繰り出せる。
このスキル運用がスリーよりさらに豪快になっているので、要所で決まると本当に気持ちいいのだ。
例えばのり3スキルは用紙のカド1マス分をちぎりとって、相手マークの上に貼り付けてしまうというもの。ゲームボード自体を物理的に破って貼るの、アリなんだ…!
ただし、乾燥の待ち時間があるので次の相手ターン終了までは上書きするなど触ることができないという制限がある。面倒だが、そこが確かにのりっぽくてリアルだ。いや、リアルもなにも本当にのりを使ってるんだけど、それをルールとして明文化してあるのが面白い。
ちなみにセロハンテープにも同様のスキルがあるが、こちらは乾燥待ち無し!これもリアル!
他にも、半径1マスの円をコンパスで描いて、一定ターンの間は相手が円内に手出しできなくなる技や、ハサミで切られたラインをホッチキスでつないで修復する技など、まぁとにかく多彩。
実際、プレイが進んでいくと用紙は原形をとどめないほどに書き込まれ、消され、切られ、貼られていくのだけれど、そういうルールなんだから仕方ない。…という言い訳をしつつ文房具をバリバリ使うのが楽しくて仕方ない。
ゲームとしての勝敗はもちろんあるけど、どこにでもある普通の文房具が相手を倒す武器(武ん具)になる、というのがとにかく最高なのだ。
ところで、さっき「普通の文房具が武器に」と書いたけど、冷静に当日の写真を見返していると、言うほど普通じゃなかった。
いや、実はその辺もすこし期待してメンツを集めたんだけど。
例えば他故さんが持ち込んだのは、30年以上前に大ヒットした小型セット文房具「チームデミ」(プラス)。確かに「ブングーファイブ」に使える武ん具が詰まってるとはいえ、なかなかに予想外のチョイス。
さらに消しゴムが東海地方と九州の一部でのみメジャーな「Keep」ブランドというのもマニアックが過ぎる。
宿谷さん・石黒さんのヤマト勢は当然のように自社製品を投入してきた。のりは当然のようにアラビックヤマトだし、ふせんはかっこいいテープ型の「テープノフセン」である。
いっそこれ、各文房具メーカーの対抗戦にして自社製品の撃ち合いになっても面白いんじゃないか。コクヨとかプラスとかの総合文房具メーカーが強すぎるかもだけど。
こういうマニアのこだわりを見せつけ合う水面下の戦いもなかなかに興味深い。いや、もちろんこだわってないいつもの文房具を使っても戦力は変わらないんだけど。
とりあえず、こだわりがあっても無くても、文房具とトランプさえ手元にあれば遊べるのが「ブングーファイブ」だ。ルールも把握してしまえばシンプルなので、大人から子どもまで全然イケるだろう。
個人的にも非常に楽しかったし、今度はもっと大規模に文房具好きを募ってトーナメント戦とかやってみたいので、プレイしてみたい人いたら言ってよ。場所設定するから。
ワラビサコさんによれば、このゲームを世界的に広めたいということで、ゆくゆくは「世界大会で各国の文房具を使ったバトルが展開される」のを見るのが夢だそうだ(そういう理由で、ルールは無償公開されている)。
なるほど、文房具は世界中誰でも説明無しで使えるわけだから、ルールさえ広まれば世界大会だって不可能じゃない気がする。
今からプレイして上達しておけばワールドカップ出場だってありえるので、みんなひとまず文房具を揃えて遊んでおくといいんじゃないか。
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