特集 2022年7月15日

昭和文具とかキャラ匂わせ鉛筆とか!夏の文房具フェス2022

今年もすごい文房具見放題の夏が来たよ!

お待たせ!文房具の!夏フェスが!やってきたぞー!(強めのエコー)

というわけで今年もISOT(国際文具・紙製品展)2022が開催されました。7月6~8日の3Days、in 東京ビッグサイト東ホール。

正直なところ、以前と比べるともうかなり規模が縮小しちゃってるんですが…それでも注目の最新文房具を探すなら、足を運ばないわけにはいくまいって感じ。

そういうことで、今年もなんかいろいろ紹介していくぜオー!

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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ISOTとはなにか? という年に一度の説明です

改めて説明しておくと、毎年7月に開催される文房具と紙製品の展示会が、ISOTこと“国際文具・紙製品展”である。ちなみに今年で33回目の開催。

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今年も最新の文房具いっぱい見に来たよ、ISOT!

基本的には、その年の秋冬以降に発売される文房具の新製品を並べて「こんなの出ますけど、どうすか?」と文房具の卸や小売業者にアピールするイベントなので、一般人は基本的に立ち入り禁止!

…と言いつつ、サイトから事前登録しておけば何の問題もなく入れちゃうんだけど。(なので、興味のある人は来年ぜひどうぞ)

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やっぱりISOTには海外ブースが無いと、盛り上がりに欠けるよねー。今年は韓国勢が多めだった。

ちなみに昨年はコロナ禍やら東京オリンピックやらがあったため、海外ブースがゼロという寂しい状況だった。

今年は中国・韓国・ベトナムといった海外勢も復帰したため、昨年よりはやや賑わってたかなー、という印象である。

ISOT最カワ大賞は昭和レトロ文具シリーズ

文房具は「機能性!便利!効率化!」という辺りが大事なんだけど、とはいえどっこい、かわいさだって重要だ。

ということでまず紹介したいのが、ISOT2022における最カワ大賞間違いなしのファンシー文具「タイムスリッぷ」シリーズ(エポックケミカル)である。

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個人的に最カワ大賞をあげたい、エポックケミカルの昭和レトロ文房具「タイプスリッぷ」。
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ハートの中に写真を切り抜いて貼っておけるという、昭和臭さ満点のロケットチャームつきシャープ。

テーマは「昭和レトロ」ということで、とくにアラフォー以降の世代には刺さりまくるビジュアル揃い。

ペン後端にハート型のロケットチャームがついてるシャーペンは「こういうやつ、自宅のペン立てにささってたわ!」と声に出して突っ込むレベルの懐かしさである。

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水性マーカーも確かに懐かしさ満点のビジュアルだけど、ネタもとのラッションペン(寺西化学)はまだ現行商品だぞ。昭和のパチもん感がすごい。

中でも特筆すべきは、このプラケースに入ったカードメモ…というかカセットテープケースだろう。

これ、数十年前に実際にカセットテープケースを生産していた本物の金型を転用して作られたものなのだ。

なんせエポックケミカルというメーカー、実はプラスチックの射出成形が本業の会社である。昭和時代はカセットテープのケースを作りまくっていたとのこと。

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本物(という表現でいいのか)のカセットケース金型を転用したカードメモケース。この水色が絶妙にAXIAっぽい…。
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ケースを開けると、この通りファンシーなカードメモが。

なので、ケース金型のデッドストックが社内に転がっており、それをまんま転用したという次第(リールのゆるみ止めなどのパーツは省いてある)。

ちなみに金型は見つけた時点で錆びまくってボロボロだったため、もう増産は難しいという話も。

カセットテープメモが気になる人は、見つけたら即ゲットしておこう。

塗り終わるまで数ヶ月!? 7mの超ロング塗り絵

広島県の印刷会社 新生が出展していたのが、世界最大級という全長7mのロング塗り絵「ぬっテコ!」だ。

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細かい作業好きなので、7mの世界最大級塗り絵って聞いただけでワクワクする。黙々と塗りたい。

そもそも「7mの塗り絵」ってどういう意味だ?と思ったけど、実物を見たら疑問を差し挟むスキもなく、ただ単に横幅が7mある塗り絵だった。

ちなみに上写真のは「不思議の国のアリス」のお話を塗り絵にしたもので、ウサギを追いかけて穴に落ちるところから女王の裁判でなんやかんやあって目を覚ますまでが絵巻物のように続いている。

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両手で広げても、まだこの3倍ぐらいある。「このブースのサイズだと展示するのも難しくて…」とのこと。そりゃそうだ。

そんな無茶なボリュームに加えて、絵柄も大人が繊細に塗る用に細かくなっているため、これを塗りきろうとしたらかなりの労力が必要になりそうだ。

新生ブースの方いわく「仕事の合間にちょいちょい塗ってたんですが、けっきょく7ヶ月かかりました」とのことで、単品のホビーとしてはかなり遊び応えがあるんじゃないか。

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広島の会社だから、広島の市内観光ガイド的な塗り絵も。
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最終的には、シャワーカーテンみたいに塗り絵を吊してた。

他にも7mで都市の観光スポットを巡れるシリーズや、鉄道の沿線風景を描くシリーズなどがあるんだけど、とにかく元絵作りが大変で、新たに描いてくれる人を探すのも一苦労とのこと。

うーん、そりゃそうだろうな。7mだし。

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九谷焼はマステやカードになっても美しい

印刷会社の文房具でもうひとつ興味深かったのが、金沢市の印刷会社nakabiが展開する文房具ブランド「KASHIKO」だ。

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九谷焼を文房具にした「KASHIKO」シリーズ。

こちらは金沢の名産品である磁器の九谷焼をモチーフにした絵柄入りのメッセージカードやマスキングテープ、ペーパークリップである。

そしてこのデザイン、実際に九谷焼の絵付けをしている作家さんの手によるものなのだ。

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こういうお皿、きれいだけど買うと高そうだしなー。なかなか手を出しづらい。
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それなら手始めに同じ柄のメッセージカードとかクリップ、どうすか?という提案。なるほど、これはありかも。
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マステもなかなかイイ感じ。象や縞馬は動きがあってかわいいな。

九谷焼の作家モノなんて、「へー、きれいだなー」とは思っても、お値段的になかなか気軽には買いづらい。飾るにしても場所を取るし。

だったらそれをカードぐらいの気軽に使えるものに印刷しちゃえばいいじゃん?というのは、なるほど盲点だった。「え、それで良かったの?」みたいな気もするけど。

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若手の九谷焼作家さんを広く紹介する、という意味でも面白い取り組みだなー。

なにより、こういった紙製品きっかけで、絵付けした作家さんに興味をもつ人もいるんじゃないだろうか。

「文房具と伝統工芸のコラボ」ってここ10年ぐらいでわりと増えてきたムーブメントなんだけど、特にこれはかなり良いアイデアだと思う。

なによりすごいきれいだし。

今年のISOTはホワイトボードの展示会だったかも①

……と言い切っちゃうのもアレだけど、いやでも会場あちこち、妙にホワイトボードが多かったような気がするのである。なんかブーム来てるのか、ホワイトボード。

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こちらは、スペイン製のおしゃれホワイトボードを展示したブース。

実際、ISOT初日に発表される業界最大のアワード「日本文具大賞」でデザイン部門グランプリに輝いたwemo「paper flip board」も、ホワイトボードだし。

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日本文具大賞デザイン部門グランプリのホワイトボード、「paper flip board」

ホワイトボードにしてはちょっと珍しい正方形フォルムは、web会議で自分の顔とボードが一緒に写り込んだときに、バランスが取れるように作られているそうだ。

あと、ダンボールにフィルムコートして作られているので、サイズ感と比べてめちゃくちゃ軽い! 96gしかないので、web会議でずっと手に持ってても疲れにくいのである。

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手に持つと、想定外の軽さに「おおっ?」て思う。

もうひとつのポイントが「とにかくめちゃ消える」ということ。

ホワイトボード用マーカーのインクは、筆跡が塗膜となってボード表面に残るので、こすって塗膜を取れば消せる。これがホワイトボードの仕組みだ。

しかしこの塗膜、時間が経つとボードに定着してしまい、取れにくくなってしまうことも多い。だいたい48時間も経つと、消すのに一苦労するほど。

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メーカー曰く「消し心地にはこだわりました!」とのことで、なるほど納得の感触。

ところが「paper flip board」は、表面の特殊コーティングによってインク塗膜の定着を防ぎ、96時間経った筆跡もスルーッと消せるようになっている。

体感的には、ホーロータイプのボード(業務用に多い高級なホワイトボード)に近い消し性能で、これはかなり優秀だと思う。

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今年のISOTはホワイトボードの展示会だったかも②

もうひとつ注目のホワイトボードが、機能性ホワイトボード「WIPE」(第一合成)だ。

もともとは昨年にクラウドファンディングで展開した製品(達成率1000%超)なんだけど、いよいよもうすぐ一般発売も開始予定だそう。

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クラファンで人気を博した携帯ホワイトボード「WIPE」。
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カバーをめくるとボード面が現れて、こんな感じで書けます。

こちらもポイントは「消える」という部分。

といっても重要なのはボードそのものではなく、表面にかかっているカバーの部分である。

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で、書いた内容を消すときは、カバーでボード面をまるごと拭ってやります。

例えばボードに書いた内容を全消ししたい場合、いちいちボードイレイザーで全域をゴシゴシこするのは面倒くさい。

なので、ボードにカバーをかぶせて、上から軽く抑えてザザーッと拭うと……この通り。あっという間にボード面がリセットされるのである。

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ハイこの通り。イレイザーでチマチマ消すの、もう面倒くさいっすよ。これ超ラクだわ。

カバーの裏面がフェルトになっているので、つまりこれが巨大なイレイザーとして機能するという仕組み。

なるほど、カバー全体で一気に拭き取れば、そりゃあっという間に消えるのは当たり前だ。これはなかなか面白い。

ちなみにカバー裏がインクのカスで汚れてきたときは、掃除機で軽く吸うか、パンパンと手で払ってやればキレイになるそうだ。

学校に持って行ける“匂わせ”系キャラクター鉛筆

お子さんのいる方ならご存知かもしれないが、実は昨今、小学校に持って行ける鉛筆に関して、制限がかなり厳しくなっている。

例えば軸にアニメなどのキャラクター絵が入ってるなどは言語道断。ワンポイントで動物の絵が入ってる程度でも規制される場合があるとかで、うーん、今の子どもは大変だなー、と思ってしまう。

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アイボール鉛筆は荒川区にあるザ・下町の鉛筆メーカー。荒川・葛飾辺りは鉛筆メーカー密集地帯なのだ。
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学校で怒られないよう、新製品の鉛筆も木軸そのままか無柄塗装がほとんど。

もちろん、学校側からしても「鉛筆の柄に気を取られて勉強に集中できないから」とか「友達同士でやり取りしてトラブルになる可能性がある」など禁止する理由はあるので、それはそれでごもっともな感じなんだけど。

とは言え、子どもが欲しがるのはやはり人気のキャラもの。文房具メーカーとしても、売れ筋を逃したくないという気持ちはあるだろう。

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有名アニメとの関連性をなんとなく匂わせることができる鉛筆。なるほど、そうきたか。

そこでアイボール鉛筆が提案するのが、“匂わせ”系キャラクター鉛筆である。

直接的にキャラクターは入ってないけど「まぁホラ分かんだろ?アレだよアレ」と言わんばかりの柄展開。完全に匂わせである。

これはさすがに、なるほど、そういうグレーゾーンで来たか!とヒザを打ってしまった。校則の抜け道を突く裏ワザだな。あとまぁライセンス的な部分でもグレーゾーンかも。

書き味が危険なほどクセになるボールペン

冒頭でも述べたとおり、一昨年・昨年とコロナ禍で参加できなかった海外ブースが復活!というのが、今ISOTでのおめでたいトピックだ。

日本とは発想の方向性が違ったり、問題の解決法にお国柄のようなものが垣間見えたりするので、海外の最新文房具も見逃せないのである。

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こちらは、ハサミとカッターナイフの悪魔合体をメイン商材とする韓国メーカーのブース。
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中国・韓国製のおもちゃ筆箱ばかりを取りそろえたブース。

そんな海外勢の中でひときわ賑わっていたのが、韓国ゼロジーテク社のブース。

展示製品は、ペン先が鳥のクチバシかコンコルドのようにグニッと曲がっている特殊ボールペン「ZERO G ball」である。

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常に誰かしらが試筆してて、客途切れの無かったゼロジーテクのブース。
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こちらが話題の「ZERO G ball」。パッと見ただけでもそこそこ違和感があるフォルム。

油性ボールペンは、ペン先の小さなボールを転がすことでインクが紙に付着して書ける構造だ。しかし、ペン自体が紙に対して寝る…というか角度が浅くなると、ボールが引っかかって筆記不良が起きやすくなる。

ところが「ZERO G ball」であれば、かなり寝かせてペン軸を握っても、曲がったペン先がしっかり角度をつけて接地してくれる。つまり、どう握ってもスルスルサラサラと書けてしまうというわけだ。

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この先端の曲がりによって、寝かせ気味に握ってもスルスル書けるという仕組み。

……というようなアピールを片言の日本語で話しているのが、俺が勝手に「ゼロジーおじさん」と名付けた男性である。

ゼロジーおじさん、たぶん同社の代表だと思うんだけど、このアピールがちょっと不穏。

 

「このペンね、一度書くと手放せなくなります。なのでこれ、麻薬ペンと言われてますね」

「この書きやすさはクセになるでしょ。ヒロポンペンと呼ぶ人もいますよ」

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自慢のボールペンを指して「ヒロポン」「麻薬」と連呼するゼロジーおじさん。聞いてるこちらはやや苦笑い気味。

うーん、誰かゼロジーおじさんに「それはダメなネーミングじゃないかな」って言ってあげるべきかも。

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アートペンはゴッホのタッチもペン軸で再現

ラストはISOTじゃなくて、ビックサイト内で同時開催だった「サステナブルグッズEXPO」で見つけたかっこいいペンを紹介したい。

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サステナブルなボールペンで昨年業界的にわりと話題になったPENONブース。
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木軸にメガネやネクタイモチーフをあしらった、かわいいPENONボールペン。実は書き味も優秀。

森林認証木材の木軸+プラ製リフィルのリサイクル、というサステナブルなボールペンで話題のPENONの新製品「ART PEN」は、六角軸にUVプリントで名画を再現する、というコンセプト。

フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」やら、ロートレックの「ディヴァン・ジャポネ」、国芳の「猫飼好五十三疋」など、お馴染み過ぎるぐらいの絵が、かなりの再現度でプリントされている。

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PENONが秋以降に発売する新作「ART PEN」。単なる絵柄軸のペンだと思って油断してたが、細部まで見るとクオティがエグい。
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軸に油彩で厚塗りした凹凸が再現されてるので、握ると「うわーゴッホの絵を触ってる!」みたいな気になる。

なによりすごいのが、油彩のシリーズ。例えばゴッホの「星月夜」がコレなんだけど…。ゴッホのあのグリグリという強烈なタッチが、ペン軸に立体的に再現されているではないか。おそらく、絵を3Dスキャンしたデータを元に再現してるんだと思う。

もちろん今までにも「名画を印刷したボールペン」って普通にあったけど、それにしたってこのクオリティはちょっとありえないぞ。

ちなみにPENONの人に、「ART PEN」を作る際の苦労話をいろいろ聞かせてもらったんだけど、ちょっと生々しすぎて書けないレベルだった。

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クレーの「パルナッソス山へ」のツブツブも完全再現!

おそらくミュージアムショップなんかに並ぶと、爆売れ間違いなしだと思う。

今年の秋には発売予定とのことで、見つけたらまずは手にとって見てほしい。マジで感心するから。

 

うーん、一昔前と比べるとさすがに寂しくなった感は否めないが、それでも、ちょっと見て回るだけで気になる文房具が山ほど見つかるわけで。やはりISOT、見逃せない。

来年ももちろん行きますよ。


毎年ISOTで密かに楽しみにしているのが、大阪シーリング印刷のサンプル出展。

ここは印刷会社なので、直接的な商品ではなくて「ウチならOEMでこういうのが作れますんで、ご相談ください」というサンプルを展示しているのである。

で、それがなんか常に「どういう発想?」と疑問に感じるものばかり。

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マッスルレスラーをあちこちからニョキニョキ生やせる「ひとことレスラー」ふせん。

今年のOEMサンプルは、レスラー型のふせんが注目である。これ、どこの企業がOEMで作るだろうと想定して作ったの?

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