デジタルリマスター 2022年4月14日

真夏の!黒糖工場見学(デジタルリマスター)

夏バテした。

いきなりローテンションな出だしで申し訳ないが、完全にグロッキーなのだ。実は梅雨明けして3日目くらいで夏バテした。長い夏になりそうだ。

冷房の効いた部屋で朦朧とテレビを見ていると、某健康系番組が「沖縄の人は暑い夏を黒糖で乗り切っているんですね」なんて言っているではないか。そんな乗り切り方があったのか、教えてよ。あわてて黒糖工場へ行ってきました。

2005年8月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:うまい棒サラミ味にマスタードを塗ると、もっとうまい棒になる

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

黒糖はハムの中に

今回伺う黒糖工場はハム工場の敷地内にあるらしい。電話で予約したときに知った。

「場所がよくわからないのですが」
「国道沿いに牛がありますのでわかると思います」

まず黒糖工場はハム工場の中にあるというだけでわけがわからなかったし、牛と言われてさらにわからなくなった。僕の頭はもうだめなのか。

不安な思いで国道を走らせていると、確かにあったよ牛と豚。これだ。でかい張りぼてが迎えてくれた。

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どーんと国道から見える牛、そして豚。

敷地内に足を運ぶと「黒」と書かれたプランターが。

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黒。

黒。

黒毛和牛、と思って歩いていると少し離れて「糖」もあった。そうか黒糖だ、僕は黒糖工場に来たのだ、思い出してよかった。

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糖。そうか、黒糖か。

さらに奥へと進むとサトウキビも生えていて、ここが黒糖工場だということを再認識させてくれる。それにしても暑い。

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サトウキビ、沖縄方言:ウージ。

ありました、黒糖工場

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三角屋根がおしゃれな工場です。

歩みを進めるととんがり屋根の建物が。実はこここそが今回伺う黒糖工場なのだ。見かけは工場というよりもペンションといった感じだけど、なにしろ漂う匂いが違う。ほのかに青く、そして濃く甘い香りが漂っている。黒糖の匂いだ。僕の疲れた体は蜜を求める虫のように建物の中に吸い寄せられていった。

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早速見学させていただきます

工場の前には収穫されたサトウキビがうずたかく積まれていた。すでに葉っぱがむしってあるのではじめて見る人はこれが黒糖の原料になるとは思わないだろう。

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どう見ても甘そうには見えない。

本日工場見学のエスコートをしてくれる新城さんはアロハがよく似合うはつらつとした方だった。たぶん黒糖で夏を乗り切っているサイドの人だろう。あやかりたい。よろしくお願いします。

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新城さん。

内部は確かに工場でした

工場内部に入ると外でも匂っていた黒糖の甘い香りがさらに濃くなる。天井の高いとんがり屋根の建物は、この濃い匂いを含んだ蒸気が充満するのを防ぐためなのかもしれない。

サトウキビを搾る作業をちょっとだけやらせてもらった。回転するローラーの中にサトウキビを入れていくとバリバリバリッとすごい音を立てながらつぶれて吸い込まれていく。絞られた汁は下のタンクに溜まり、絞りかすは機械の後ろから出てくる仕組みだ。

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こうっすか、これでいいんすか。
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こちら本職。腰の入り方が違います。

絞る前のサトウキビをかじると、ほのかに青臭いえぐみの混じった甘さが鼻の奥につんと広がった。精製された白砂糖はこの中から甘みだけを分離したものなのだ。それに比べ絞り汁をそのまま煮詰めて作る黒糖には野生のミネラル分が多く含まれている。ワイルドを自負する男はコーヒーとかにも黒糖を入れよう。

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サトウキビの切り口はこんな感じ。かじってみると確かに甘いです。

黒糖フロム絞り汁

機械で甘いエキスを絞り取られたサトウキビはカスのようになって後ろから出てくる。このカスもけっして無駄にはしない。キビ汁を煮詰める時の燃料になるのだ。

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ずんがと詰まれた絞りかすもゴミではありません。

絞ったキビ汁は遠心分離機で不純物を取り除かれた後、2時間くらいこんこんと煮られる。煮詰めてアメ状になったキビ汁は室内に運ばれ、平らにのばされ自然乾燥されて黒糖となるのだ。この製法は直火製法といって360年前に中国から伝えられた製法らしい。

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暑い中、黙々とキビ汁を煮込む。

煮詰められながらキビ汁は奥の方の釜へと移動していく。煮込みが進むにつれ、キビ汁は蜜っぽい粘りを増す。

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この人たちも黒糖食べてがんばっているんだろうか。

この先の工程もあくまで手作業だ。冷えて固まった黒糖の板を手で砕いて袋詰めにしていく。最初ここは見学用に作られたいわば「見せ工場」なのかと思っていたのだけど、どっこいまじでここで生産、出荷しているのだ。

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最後まで手作業です。

こうして完成した黒糖は県内外に出荷される他、工場の脇でも売られている。売り場にはいたるところに某健康系番組で紹介されたことが書かれていた。

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月曜のスーパーみたい。

夏バテには黒糖なのだ

夏バテの予防には神経や筋肉の働きを支えているビタミンB1の摂取が効果的とのこと。そして汗と一緒に体から失われていくカルシウム、カリウム等のミネラル分も補わなくてはいけない。

そこで黒糖なのだ。

黒糖にはビタミンB1、B2の他に各種ミネラル分が豊富に含まれていて、しかも仕組みはよく知らないが血糖値のコントロールにも効果的らしい。要するに黒糖食べて夏バテ予防、ということなのだ。そういうことは夏になる前に教えてもらいたかった。今からでも遅くはないとは思うのでバテてる人は這ってでも黒糖を買いに行ってください。

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作ってみました

せっかくなので伝統の直火製法を体験させてもらうことにした。

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キビ汁を煮込む新城さん。

ぐつぐつと1時間半ほど煮詰めたキビ汁をアルミ皿に移す。時間が無いのでぐつぐつと1時間半煮込むところまで事前にやっておいてもらった。

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魔女の秘薬みたいです。

アルミ皿に移したキビ汁を割り箸で約10分間かき混ぜる。普段は機械で行う攪拌という作業を手でやるわけだ。

僕は言われたとおり10分間の攪拌作業に手一杯だったので、新城さんに撮影をお願いした。

「ここ、押してもらえますか」
「押す」
「そうです」

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押しました。

新城さんはシャッターボタンを豪快に押した。できた写真がこれ。いや、僕の説明が悪かったのです。三脚を組み立てました。

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かき混ぜます。
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徐々に粘度が増して力がかかってきます。
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早くも疲れてきました。

言われたとおりに出来るだけ素早くかき混ぜながらも、いろいろ話を聞こうと新城さんに質問してみる。

「どこの工場もこうやって手作りなんですか」
「いえ、他はだいたい機械です。かき混ぜてください、もっと速く。」
「たいへんですよね、手作り」
「ええ、夏とか汗だくです。もっと、さあ速く速く」

何を聞いても常に混ぜることを急かされる。攪拌作業は時間が進むにつれてキビ汁がアメ状になり、かき混ぜるのにも力が要るようになってくる。それでも質問する。

「サトウキビって植えて何年で収穫できるんですか」
「えっと約1年。ちょっと貸してください」

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ちょっと貸してください。

とうとう取り上げられてしまった。新城さんはさすがに手際よくかき混ぜてくれる。すきを見てさらに質問をする。

「これ、混ぜる速度とかで出来が変わるんですか」
「え、は」

新城さんは夢中で混ぜてくれていた。もう出来がどうこうなんてどうだっていい。

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手際よく作業をする新城さん、それを眺めるアホな子。

だいぶ粘りが強くなってきたところで、皿ごと台に叩きつけて空気を抜く。新城さんはひたすら手際がいい。僕はただ箸をなめて見ているだけだ。

そんなこんなで出来上がった手作り黒糖。保存料が一切入っていないので、早めに食べきってください、とのこと。自分で作ると感動もひとしおです。

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途中で取り上げられたけどな。

早速効果ありか

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直販所で出迎えてくれるおばちゃんの等身大。

家に帰って黒糖をかじりながらこの記事をまとめているわけですが、なんだかいつもよりも集中できている気もします。そういえば体が軽いような気も。今年の夏は黒糖で乗り切ろうと思っています。

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