
キャビアをお茶碗いっぱい食べてみたい!

フォアグラやトリュフと共に世界三大珍味のひとつに数えられる高級品キャビア。
そんなキャビアをお茶碗いっぱい食べる。お金持ちになったら叶えたい夢のひとつだ。
それには一体いくらかかるのか。そもそもそんな事が可能なのか。国内最大級のキャビア養殖場で聞いてきた。
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そもそもキャビアとは?
キャビアをお茶碗いっぱい食べてみたいと思ったものの、そもそも僕はキャビアが何なのかさえよく分かっていない。
お茶碗いっぱいどころかほとんど食べたことがないからだ。
調べてみるとキャビアとはチョウザメ(蝶鮫)という魚の卵らしい。
キャビアは外国産の印象が強いが日本国内でも作られている。国内最大級の養殖場が僕が住んでいる岡山県内にあるということで、キャビアについてお話を聞きに行くことにした。

養殖場といえば海の近くにありそうだが、その予想とは裏腹に海からはるか遠く離れた中国山地の山あいにその養殖場はある。

小雨がぱらつく中、岡山市内から車でおよそ2時間かけ一路、養殖場がある新見市へと向かう。
国内最大級のチョウザメ養殖場

新見市に到着すると雨も止み、空気がパッキリと澄んでいて驚くほどに空気がおいしい。
そしてこちらの蝶鮫屋(MSファーム)さんは国内でも最大級のチョウザメ養殖匹数をほこる養殖場だ。
実はこちらの養殖場は僕が勤めている会社の関連会社でもあるので、今回はコネで「お茶碗いっぱいのキャビア」などという無茶な相談に乗って頂くことができた(ただし会社が違うのでこれまでほとんど接点はなかったのだが…)。
なおコネが無くても普通に見学も受け付けている。

広報担当の長尾さんと、蝶鮫屋(MSファーム)さんの中でも屈指の知識をもつ養殖担当の義國さんにチョウザメについてお教えいただいた。

そもそもチョウザメはサメじゃない
まずはキャビアが採れる魚チョウザメについて教えていただくことにした。








チョウザメには歯もない






こちらの養殖場ではチョウザメのエサはマダイ用のエサが使われるらしい。
チョウザメは基本的には淡水魚








キャビアはチョウザメの卵なので当然メスから取れるが、3歳まではキャビアが採れないオスも育てなければならないそうだ。その分コストがかさむ。
取材NGの雌雄判別とは
3歳になったチョウザメをオスとメスに判別するのが「雌雄(しゆう)判別」という作業だ。








雌雄判別が済んだオスは魚肉として出荷され、4歳以降は養殖場にはメスだけが残るそうだ。
チョウザメの肉とは





想像以上に迫力があるキャビアの採卵
雌雄判別によって残されたメスのチョウザメは毎日体調管理しながら大切に育てられ、6歳~10歳になるとキャビアを採卵できるサイズに成長する。
ここから通常の見学では公開されていないチョウザメの採卵工程を見せてもらう。

養殖場から少し離れた別の施設に採卵用の部屋があり、その中でキャビアが採り出される。
皆さんがしきりに「グロいですよ」と言って気を遣ってくださるが、僕は魚屋さんやお寿司屋さんで魚をさばく場面は見たことがあったし、それを見ても一度もグロいと感じたことはない。大した事ないだろうと高を括っていた。

台の上には血抜きされたチョウザメがセットされている。
キャビアが採れるまでに成長したチョウザメは目の前にするとすごく大きく、1メートル近くありそう。存在感も凄い。

いざお腹を開く場面になるとグロいとまでは感じないものの、魚屋さんやお寿司やさんで魚をさばく場面より迫力が凄い。
サイズが大きいからか、餌をあげて育てている所を見たせいかもしれない。ちょっと可哀そうでもある。

慣れた手つきでチョウザメのお腹を開くと、中からキャビアが現れる。結構びっしり。

息の合ったコンビネーションでキャビアが取りだされる。一匹のチョウザメからわずかに700グラムほどしか取れないのだ。

ここで手袋を交換し、キャビアをほぐす工程に移る。
網の上でくるくると円を描くようにキャビアを動かすとほぐれて下の容器に落ちる仕組みだ。

ほぐれたキャビアは洗浄しながら、ピンセットで不純物を取り除いていく。この作業がもう本当に3人がかりで延々と続くのだ。かなり根気の必要な作業だ。

そうして不純物を取り除いたキャビアに岩塩を混ぜて味を調えていく。
海水から作った塩だとミネラルの作用でキャビアにえぐみが出てしまうらしく、岩塩が最も相性が良いとのこと。

味を調えたら、キャビアをひとつづつ専用のビンに入れていく。この後は急速冷凍して完成だ。

海外産のキャビアは保存のために10パーセント前後の塩分を加えたり加熱殺菌することが多いが、こちらの養殖場では衛生管理を徹底して塩分は3.5パーセントから5パーセントに抑え、加熱をしていない生のキャビアを提供している。
お茶碗いっぱいのキャビアは22万円
さて、こうして作られた貴重なキャビアをお茶碗によそってもらった。

お茶碗には白いごはんという印象が強いのでとにかく黒い。

こんなに大量にあるにもかかわらず、ひとつぶひとつぶがはっきりと際立って見える。すごく綺麗だ。なんだか神々しい感じさえする。
なお、お茶碗いっぱいのキャビアは重さにして約260グラムだった。普通のお茶碗のごはんは150グラムくらいなので、キャビアはごはんよりずいぶん重い。





700円分の試食をさせていただく
お茶碗いっぱいのキャビアは断念し、700円分の試食をさせていただく事にした。

なお飯田さんはさきほどのキャビアの採卵の時にもいらっしゃった。

お茶碗いっぱいのキャビアを見た後だと随分少なく感じるが、むしろこれくらいのほうが安心する。少量でもやっぱりひとつぶひとつぶがキラキラしている。
金属製スプーンだとキャビアの味を邪魔してしまうということで、白蝶貝(真珠が取れる貝)のスプーンを使わせてもらう。







チョウザメの供養もしている



いろいろと見学して、生き物をいただくことについて真面目な気持ちになる部分もあった。
チョウザメへの感謝の気持ちが湧く。最後に供養塔を見て救われたのは勝手だろうか。
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