散歩は平和と安全の享受
普段着でつっかけ履いて出かけるような気の抜けた散歩は、「平和と安全の享受」なのだと実感しました。
重苦しい防刃チョッキが散歩に必須なディストピアが来ないようにしたいです。
防刃チョッキを着ると、まず驚くのが自分の視野の急激な広がりです。
いつもの散歩だと
主に上方向の視野が格段に広くなりました。スナイパーが、アパートの一室を借りて張り込んでターゲットを待っているのを(映画で)よく目にするので・・・
唐沢「ほりさん、ちょっと待ってください」
と、通常の散歩ではあり得ない突然の足止めをし、
安全を確認しました。
唐沢「こういうゴミ置き場から突然敵が現れるかもしれないので」
ほりさん「なるほど・・・」
勢いよく飛び出してきた刺客に、わき腹をグサッといかれてはたまりません。防刃素材で守られているとは言え、打撃はなるべく避けたいものです。
車の窓から手裏剣とかをシュンシュン投げてこられる可能性も、もちろんゼロではありませんよね。
元々防弾チョッキを買うつもりが、防刃チョッキしか買えなかったので、常に「撃たれたらひとたまりもない」という危機感があります。
そういった自分の身の安全も気になりますが、なにより胴体を全然守っていないほりさんが心配になってきます。私はチョッキがあるから何とかなるけど、ほりさんはそうじゃない・・・。
ほりさんが「散歩仲間」ではなく「要人」へと変わっていき、過剰な護衛へとつながっていきました。
ほりさん「子どもに対するそれですね」
確かに過保護かもしれない。でも、何かあってからでは遅いから・・・防刃チョッキが私をそうさせます。
防刃チョッキ散歩、続いてはほりさんに防刃チョッキをバトンタッチです。
私は先ほどと打って変わって白Tシャツで身軽になり「自由に散歩するぞ〜!」と開放的になりました。しかし、防刃チョッキを着た人が隣にいるので何とも言えない圧迫が。
「わざわざ休日に来ていただき、めちゃくちゃ暑いし重いチョッキを着てもらってる」と感謝していても、このぬぐえない窮屈さ。
気分は、「何にも気にせず外にブラブラしに行きたいのに、護衛がついてくる中国の大富豪のおっさん」です。
ほりさん「前方のキャップ、気をつけてください」
唐沢「あ、あの帽子かぶった人ですか」
ほりさん「あんな中途半端なところで立ってスマホいじってるのは怪しいです。待ち伏せかもしれません」
気がゆるみきった大富豪の私には、ただの暇そうな一般人にしか見えませんでした。
場所は目白駅周辺、とてもきれいで平和に見えます。
ほりさん「橋、危ないです」
唐沢「えっ」
ほりさん「下から狙われるかもしれません。線路もあるし、電車からの攻撃もあり得ます」
唐沢「橋のそんな危険性、はじめて聞きました・・・」
ほりさん「多分、あそこに迷彩服のスナイパーがいます」
唐沢「そうなんですか・・・」
ほりさん「見えないですけど、危ないので気をつけてください。」
防刃チョッキの効果は絶大です。この後ふたりで目白駅の山手線ホームで電車を待っている時、
ほりさん「ちゃんとゴミ箱ないですね。テロ対策できています」
駅にゴミ箱がないことを高く評価している一般人を初めて見ました。
防刃チョッキのあるなしで散歩ががらりと変容してしまいました。
着ている方は街のあまりの危険さに気が気でないし、一方で、一緒にいる散歩友達が着ていると「自由にさせてほしい」と思います。
ほりさんに防刃チョッキを着て散歩した感想を聞いてみると、
ほりさん「見える世界が変わりました。こんなにも街が危険ポテンシャルであふれていたとは…。『要人よ、どうか勝手な行動をしないでくれ』と心から思いました。」
自然とSPの心持ちが備わるようです。SPって、要人が無防備で気ままに動くことに気持ちがささくれ立ってるイメージありますよね。
ほりさん「防刃チョッキはデカくて重くて暑く、夏には最悪の衣類なのだと知りました。全然スマートに着られないし、動きも鈍くなるし、防御力全振りって感じです。」
そんな服を炎天下で急に着させて、挙句心の中で「自由に散歩したい」と思ってすみません。
普段着でつっかけ履いて出かけるような気の抜けた散歩は、「平和と安全の享受」なのだと実感しました。
重苦しい防刃チョッキが散歩に必須なディストピアが来ないようにしたいです。
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