西村:
「物語要素事典」です。でかい!
與座:
ほんとにでかい(笑)
古賀:
これずっと気になってたんですよ。
出るときにバズってたの。すごい本が出たって。
西村:
神山重彦さんっていう大学の教授をされていた方の本なんですけど、まず値段から言っていいですか。
古賀:
ははは。
西村:
2万6千円!
與座:
はーっ!(裏声)
西村:
税別だから、税込みで3万近い。
古賀:
なかなかですよ。
西村:
しかも、ほぼ同じ内容のものが、ネットでタダで読めるんですよ。
というのも、この本の内容はもともとこの神山さんが作ってたWebサイトなんです。1997年ぐらいからアップし始めて、そこから少しずつアップデートしてこの量になって。それを、国書刊行会の方が「本にしましょう」って言ったらしくて、去年やっと出た。
古賀:
国書刊行会って、こういう渋い本を作りがち。
與座:
国の機関じゃなくて?
西村:
国の機関ぽい名前ですけど、普通の出版社です。幻想文学とか、SFとか、仏教書とか、マニアが喜ぶような本が多い。
でね、ネットにあるものを、3万近く払って本で読む意味あるんかい!?って思いますよね。
與座:
思う。
西村:
でもね、やっぱり本になってる方が面白い。
古賀:
というのは?
西村:
ネットのやつって、読もうと思うと普通にブラウザで読むわけじゃないですか。でも、それって見ると「データ」って感じでちょっと読みづらいんですけど、それが本の形になると、表組みしてあって、ちゃんとレイアウトしてあって、めちゃくちゃ読みやすい。
古賀:
へえ~。
西村:
しばらく見たらその価値が絶対わかるんで、いったん内容の説明しますよ。
古今東西の「言い間違い」の物語がわかる
西村:
神山さんは子供の時から物語が好きで、大学を卒業したあとに大学の先生を始めたんだけども、そのときに「物語の要素を集めて、要素ごとに分類した事典があったらいいな」って考えて、自分で作り始めたんですよ。38年ぐらい前に。
古賀:
要素というのは、つまり、物語の約束事ってこと?
西村:
そうですね、目次を見てもらったらわかります。もう、目次だけで面白いんですよ。
與座:
ふふふ(説明している西村さんが嬉しそうすぎて笑ってしまう)
古賀:
物語の要素ってさ、「父殺し」とかでしょ?「父殺し」のイメージしかないよ。物語には(笑)
西村:
もちろん、そういうのもあります。でもそれだけじゃなくて、例えば「言い間違い」とかね。言い間違いが物語の要素になってる場合がある。
古賀:
あ~!落語とかでありそう!
西村:
見てみましょうか。(めくりながら)64ページ……。
古賀:
あ、いま「動かぬ死体」ってのがあったよ。
西村:
いま他のこと調べてる途中なのに、そっち見たくなるでしょ?
それなんですよ!本の良さ!
古賀:
ヒッチコックみたいなさ、ああいうやつでしょ?
西村:
気になるのはわかりますけど、一旦「言い間違い」見ますよ!
古賀:
はい(笑)
西村:
「言い間違い」っていう大項目があって、それがこんぐらいある。
與座:
すご~い!!!
西村:
その中に、「慌てたため」「馴染みのない言葉のため」とか、小項目の分類があるんです。
いろんな古今東西の物語から、言い間違いが物語の核になってるものをザザザーッと集めて、それぞれのあらすじが書いてあります。
與座:
『吾輩は猫である』だって。
西村:
見てみると、『吾輩は猫である』の言い間違いのエピソード(※)が書いてあるんです。
※哲学者、八木独仙のくだり
古賀:
へぇ~!
収録されてる物語は、年代的にはいつ頃のもの?
西村:
もう神話から、最近の漫画とかドラマまで入ってます。
石川:
じゃあ「デスゲーム」はあるんですか?
古賀:
ははは。「デスゲーム」欲しいね。いま物語のあるあるといえば、デスゲームだよ。
西村:
調べてみましょうか。
石川:
「デウス・エクス・マキナ」だ。
(目についた見出しが気になりすぎてつい口に出してしまう)
西村:
「デスゲーム」っていう大項目はなさそう。
古賀:
「殺し合い」とかかな。
西村:
はいはいはい。「殺し合い」ね。
與座:
もっと上位概念になる。
古賀:
大項目はけっこう概念でかいね。「塩」だって。
塩が出てくることによって物語が動き出すことあるかな?
西村:
イギリスの昔話で……
古賀:
(食い気味で)あー、あるあるあるあるある!「塩か私かどっちかを選べ」みたいなやつ、あるよな!?
西村:
塩を運ぶ話、塩で水を清める話とか、いろいろ載ってる。出典もこのページだと『日本書紀』があって、すぐそばに『鉄腕アトム』もあるんですよ。
塩をまいて怪物を退治する話が鉄腕アトムにあるのか~、ってわかるっていう。
與座:
まとめるくらいの数あるんだ。塩の話。
西村:
これを、38年かけてやったっていう。
與座:
いかれてるぜ~(小声でつぶやく)
![]()
「動かぬ死体」「動く死体」
古賀:
見てると、物語の象徴的なものがどういうものに宿ってるのかわかりますね。
「塩」とか、次の「鹿」とかも本当にそうだし。
西村:
パッと開いてこうやって普通に見てるだけで、ほんとに面白い本なんですよ。
神山先生って、星新一とミステリ小説がすごく好きで、もともとミステリのトリック集の本に着想を得てこういう事典を作り始めたらしいです。
古賀:
なるほど。ミステリー界隈とか、ラノベ界隈の人たちって物語を細分化させがちだよね。
與座:
「なんとか系」って。トリックの派閥みたいなのありますよね。
西村:
「動かぬ死体」見ますか。
神話が多いですね。『宇治拾遺物語』で、死体がずっとあるからそこに埋めました、みたいな話とか。親友が駆けつけるまで埋葬されることを拒否して動かない死体、とか。
與座:
へぇ~。
古賀:
「動く死体」もある。
西村:
そうなんです。こっちはミステリーっぽい話ですよね。
ただこれ、気を付けて読まないと、あらすじ書いてあるからネタバレになっちゃう(笑)
石川:
今後読もうと思ってる物語は見ないようにしたいといけない。
西村:
さっき何気なく「同性愛」の項目見てたんですけど、谷崎潤一郎の『卍』が出てきて。読もうと思って買ってあって、まだ読んでないのに、最後まで書いてある!!って。
古賀:
ははは。
西村:
「周回」もおもしろいですよ。ぐるぐる回るイメージなんですけど、ぐるぐる回るイメージの物語ってこんなにあるんだ、って。
古賀:
ある!?『ちびくろサンボ』しか思いつかない。
西村:
それも載ってます。それ以外にも色々あるんですよ。
與座:
(覗き込んで)塔のまわりを100周する話!
西村:
あるらしいです。あと面白かったのが、『平家物語』。
戦に慣れてない兵士が、鳥がバサバサバサって飛び上がったのを聞いて「敵が来た!」って思って慌てて逃げたっていう有名な話があるんです。そいつが逃げるために乗った馬がロープで杭につながれてて、ぐるぐるぐるぐる回ったっていう話。
古賀:
そんな話あったんだ。
西村:
「そんな話あったんだ」ってなるんですよ。
與座:
ちょっと面白エッセンスとして「周回」が入ってるんだ。
西村:
そうそう。
あと『古事記』では、イザナキ・イザナミがぐるぐる回って国を作る。
なんか、男の人と女の人が、なんだろう……ひとつになるみたいなイメージが周回にはあって、いろんな神話にでてくるらしい。とか、わかるんですよ。
與座:
どうやって集めたんだこれ。
目次だけでも見てほしい
西村:
とにかくこの目次だけでも見てほしい。これ「読みて~」ってなるんですよ。
與座:
「足が弱い」
石川:
「馬に化す」
與座:
「馬に化す」話、集めるほどあるんだ。
古賀:
「鬼に化す」もあるよ。
與座:
「禁忌」が3つありますよ。「禁忌(言うな)」「禁忌(聞くな)」「禁忌(見るな)」。
古賀:
「後ろを振り返るな」みたいな?
石川:
禁忌が多すぎてジャンル別れちゃってるんだ。
西村:
「妻を食べる」。
古賀:
『カチカチ山』!?
西村:
正解。一番最初に『カチカチ山』が載ってますね。
與座:
確かにそう。
西村:
で、やっぱり他にもいっぱいあるんですよ。妻を食べる話、こんなにあんのかよっていう。
『三国志』にもあって、劉備をもてなすために農家の人が妻を殺して料理して、劉備がそれに感激して……っていう。今と感覚が全く違うわ!って。
石川:
(笑)
西村:
で、吉川英治の三国志を読んでたら、そこの部分に「今の日本人の感覚と全く違うからこの部分書くかどうか迷ったけど、一応書いた」って言い訳みたいなのが書いてあって(笑)
それを思い出しました。
古賀:
ちょっと不安になったんだ(笑)
西村:
パラパラ見てたらそんなことを思い出しました。
こうやってパラパラ見るのに、本という形はすごい合ってるんですよ。で、気になった項目をパッ、パッって読むっていう。
やっぱり、本の形になってるっていうのがすごい良いんです。
與座:
ええー、これ欲しくなってきた。すごい……から……。
古賀:
古本にも出ないタイプの本だよ。
家に置いといて、ちょっとずつ読もうって思うから。
與座:
「欲しい」って思ったが最後だ。
古賀:
でかさと値段でちょっと二の足踏んでたけどね。
欲しくなった。
西村:
これ最高です。
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