読んだよ 2025年8月7日

大人が読んでこそ楽しい、国宝のことが「楽しみ方別」でわかる図鑑~『小学館の図鑑NEO はじめての国宝』

デイリーポータルZのライター、関係者が愛読している本を語ります。

今回はライターの西村さん。レコメンドは「小学館の図鑑NEOアート はじめての国宝(小学館)」

聞き手は古賀、與座、石川です。

では西村さん、お願いします。

インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

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「楽しみ方別」でわかる図鑑

古賀:
めっちゃいいな。めちゃめちゃいい。

石川:
褒めはじめが速いな(笑)

西村:
これね。国宝の図鑑なんですけど。
前にこんなのも出たんですよ。

DSC01571.JPG
左。「はじめての絵画」
小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画 (小学館の図鑑NEOアート)

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西村:
絵画。で、今回は国宝。

美術作品の図鑑って意外となかったんです。
画集はあるじゃないですか。でもあれってたいてい作家別なんですよ。
これは作家別じゃなくて、楽しみ方別。目次見てもらっていいですか。

西村:
「国宝のどこを見る?」「どうして顔やうでがたくさんあるの?」

古賀:
めちゃくちゃいいな。

西村:
見方とか特徴別になってるんです。これがめちゃくちゃ良くて。

たとえば、「茶碗の中をのぞいてみよう」っていうページ見てみますね。

DSC01598.JPG
P30~31より引用

西村:
これは曜変天目ってやつですね。
曜変天目っていう茶碗は世界に3個しかなくて(※)、すべて日本にあるんですが、そのすべてが国宝に指定されてるやべーやつです。

確か、今はもう作り方がわからなくて、昔の製法で再現するのが難しいらしいんです。

※真作とされるもの。4個説もある

與座:
謎なんだ。

西村:
そんなのがあったりとか……(パラパラめくる)

與座:
(横から見て)え、こんな座ってる埴輪あるんだ。

※編集部注:写真でお見せしたいところですが、全部を載せていくと引用だらけになってしまうので、写真のないものは購入してお確かめください

西村:
これは青森で出たやつかな。

古賀:
笑うね。でも、かっこいい。

西村:
こうやって、どんどん見ちゃうんです。

古賀:
見ちゃう見ちゃう。一生見ちゃう。

食い入る一同

西村:
実物大の写真があったりするんですよ。
それがいい。

この折込ページ。

一同
おお~(沸く)

西村:
左は達磨ですね。慧可断臂図(えかだんぴず)っていう。

古賀:
実際のサイズで載せるのって調整超めんどくさいだろうね。

西村:
でも、そのおかげで顔がわかるんですよ。風神雷神とか普段全体で見るからかっこいいと思うけど、このサイズで見ると実は変な顔してるな、とか。

古賀:
でもいいな。すごくいい本ですね。

西村:
3000円でこれ買えるのすごくないですか?

與座:
めっちゃいい。すごい。

西村:
こうやって紹介し始めると、全ページでみどころ出ちゃうから(笑)

 

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仏像の座り方をまねしよう、手の数をかぞえよう

西村:
「座り方をまねしてみよう!」も良くて、仏像の座り方って確かに注目してなかったなって思うんです。
でもこうやってみると、普通に椅子みたいに座ってるだけのやつもあるんだな、と思って。座禅っぽく座ってるイメージだったけど。

與座:
子供にわかりやすいようにいろいろ切り口探したのかな。

西村:
子供が見てもわかるだろうし、仏像見て「おっ!」て思えるようになった大人が読むともっと面白いんですよ。武器とか、鎧とかもあるし。

與座:
たしかに、大人の方が良さがわかるかも。

西村:
(めくりながら)「愛」っていう漢字の兜、直江兼続のやつとか、七支刀(※)なんかも出てますね。

※しちしとう・古代の祭祀に使われた枝分かれした刀

こっちは、寄せ書き。

古賀:
仲間との寄せ書き?

西村:
禅のお題があって、その回答をみんなで書いてるんですよ。

瓢鮎図(ひょうねんず)っていって、つるつるのひょうたんでぬるぬるのナマズを捕まえるにはどうしたらいいかって問いがあって、それへの「俺の考えた答え」がいっぱい書いてある。

古賀:
大喜利だ。

西村:
そう、大喜利なんすよ。ツイッターみたいな。

古賀:
みんなの面白い回答まとめ。

石川:
トゥギャッターだ。

88~89ページより引用

西村:
三十三間堂。たしか観光客は写真撮っちゃダメなエリア。

古賀:
「多いことは良いことだ」ってタイトル。

西村:
タイトルがね、どれもちょっと良くて。

千手観音でいくと、面白かったのが166ページ。「ほんとうに手が1000本あるの?」ってタイトル。

與座:
はあはあ。

西村:
実際に1000本作るのは大変だから、1本で25本って数えることにして大体40本が多いらしいんです。
ただ、マジで1000作ったやつもたまにあるらしくて。

166~167ページより引用

石川:
うわ、すっご。ばらしてあるんだ!

西村:
唐招提寺のやつです。ちょっと欠けちゃってるらしいんですね。
953本が残ってるって。

古賀:
これなら構造がわかる。こうなってるんだ!って。
よくやらせてくれたよね、こんなこと。

西村:
修理したタイミングで撮った写真みたいですね。このためっていうわけではなくて。

ほかにタイトルが面白いのが「地獄で生き生き」。

一同:
(笑)

古賀:
地獄の絵だね。「元気いっぱいにはつらつと働く姿が描かれています」だって。

西村:
確かに地獄の絵見ると意外に楽しそうなんですよ。
これとか、めちゃくちゃ笑ってるんですよね。

古賀:
「チームワークで責める」だって(笑)
こっちのニワトリが強そう。

西村:
動物いじめた奴はニワトリに懲らしめられるっていう地獄ですね。

古賀:
めっちゃいい。めっちゃいい。

 

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謝罪の手紙も国宝に

西村:
こっちはね、サルの絵がかわいい。

110~111ページより引用

與座:
かわいい~

西村:
テナガザルって日本にいないから、昔の人って中国かどこかで描かれたテナガザルの絵を見て描いてるんです。模写の模写の模写だったりして。
左にある中国のやつが大元で、国宝なんです。

與座:
キャラクターみたい。

西村:
これ(写真右下)は絵の書き方指南。昔の野ばら社ですね。

石川:
その隣もかわいい。パチもんのドラえもんみたいな。

西村:
可愛い。これ、伊藤若冲のやつですよ。
上のは長谷川等伯の。等伯は重要文化財で、若冲のはまだ何もなってないですね。

古賀:
これもいいですね。ほわほわで。

西村:
なんかね、真似して書きたくなる。

石川:
さっきの中国のテナガザルの絵が国宝でしたけど、国産じゃなくても国宝ってなれるんですね。

西村:
そうなんです。実はポルトガルから来た書状とかも国宝になってたりするんです。
本のいちばん最後に「国宝ってなんぞや」って説明もあります。

石川:
万全(笑)
あらゆる疑問に答えてくれる。

西村:
面白いのが、藤原佐理(ふじわらのすけまさ)は、謝罪の手紙が国宝になってるんです。

西村:
偉い人に挨拶をしなかったから、失礼でした、すいません、つって書いた手紙。

古賀:
なんで(笑)
なんかぶっ壊したとかじゃなく、そんなことで。

西村:
藤原佐理って書の達人なんですよ。そんなのもあったり。

国宝って、重要文化財の中から特に素晴らしいものを国宝にしましょうっていう話なので、国宝は基本、全部重要文化財なんですよ。

なんで、美術的に重要なものだけじゃなくて、文化的に重要っていう点もあるので、こういうものも国宝としてあるよっていう。

石川:
へー

西村:
「引越しをした国宝」っていうのもありますね。待庵(たいあん)っていう千利休の茶室はいろんなとこに移転して、今は大阪府と京都府の県境のとこにあるっていう。

古賀:
引っ越しで一回解体して同じように再現できるかって、めっちゃプレッシャーだね。

西村:
「国宝はこわれることもある」。
法隆寺金堂壁画ってのがあって、これ焼けちゃったんです。焼けたままの形で保存してある。非公開ですけど。

古賀:
それもエモいね。

西村:
確か修復工事してて、修復してる人が置いてた電気毛布から火が出ちゃって。

一同:
わー!

古賀:
その人も今でも毎朝思い出すでしょ。かわいそう!
優しくしてあげてほしい、みんな。

 

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わからなかった屏風の見方がわかる

西村:
見方もわかるんです。掛け軸とか、屏風とか。こんなありがたい本なかなかないですよ。

與座:
たしかに、知ってるでしょ前提になりがち。

西村:
そうなんですよ。屏風なら、折り曲げの数で種類があるとか、右と左の2枚がセットになってるとかの知識。

見方も、下からみたらこう、正面から見たらこう、って書いてある。
本当は屏風ってペタって寝かせた状態で見るより、折って立てた状態で見ることを考えて作られてるはずなんですよ。

與座:
なるほど、そっか。基礎がわかる!

石川:
すげえ面白い!

NEOってたしか、去年「音楽」も出たんすよね。あれもよさそうだなと思って。

音楽 DVDつき (小学館の図鑑NEO)
音楽 DVDつき (小学館の図鑑NEO)

池辺 晋一郎(監修), 海部 陽介(監修), 甲地 利恵(監修), サカキ マンゴー(監修), 直川 礼緒(監修), 常味 裕司(監修), ピーター・バラカン(監修), 藤村 シシン(監修), 吉澤 実(監修), 茂手木 潔子(著), 神森 徹也(著), 平田 貴章(写真)

西村:
音楽も買いました。DVDもついてて。まだあんまり読んでないけど。

與座:
こういうの、大人でも買っていいって考えたこともなかった。

古賀:
なかったね。確かに。

石川:
與座さん、子供いるからこれから図鑑買いまくりチャンスですよ。

古賀:
うちは「危険生物」くらいしか買わなかったな。流行ったんだよね、当時。

西村:
危険生物は学研も講談社も出てるから。各図鑑で揃えられる。

古賀:
いやしかし国宝もやばいです。いやー、おもしろ。

石川:
ほんと無限に読めてしまう。

小学館の図鑑NEOアート はじめての国宝

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