特集 2023年3月17日

オーストリアで開催された剥製のコンテストに出展してきた

そしてETC開幕

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高台から市街地の方を眺める。右手に見える山の上にあるのが、有名なホーエンザルツブルク城。

翌朝は、朝一で開催される予定だったセミナーが講師の病欠により中止されたので、2時間ほどかけて市内を散歩してから会場に向かった。

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右も左も
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剥製だらけ!

会場は、珍奇な動物たちで溢れかえった動物園のようになっていた。生き物好きにはたまらない環境だ。もっとも、生き物は好きだけれど剥製はなんだか怖いから苦手だという人は意外と多いみたいだから、これを見て大喜びできるのは死に物好きといった方がいいかもしれない。

もちろん、死に物好きの私は「すごいすごい」と大はしゃぎしながら見て回った。

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猛獣を間近で観察できるのは剥製ならではだ。

剥製自体もさることながら、多くの作品はハビタット(生息地)と呼ばれるジオラマにも趣向をこらしていた。

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博物館で展示されている剥製は木などでできた粗末な台の上に直立不動で立っていることが多いが、
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ここの剥製はとにかく生き生きしている。死んでるのに!

その生き物が輝いて見える瞬間をいかに切り取るか。魅力的な作品を作るためには、そんな、生き物に対する愛や観察力のようなものが必要だ。やっていることはカメラマンなどに近いのかもしれない。

ジャッジによる審査は剥製そのものとハビタットで別々に行われる(ハビタットを審査してもらうには追加の審査料が必要)ため、剥製単体で持ち込んでもとくに不利になることはない。でも、やっぱりというか、審査とは別に行われる人気投票で上位に入るのはハビタットまで作り込まれた作品だ。

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冒頭にも載せたこの猫は、あまりにもよくできていてほれぼれとしてしまった。一瞬で過ぎ去ってしまう最高の瞬間をつなぎ留めておく、こんなことができる剥製師はまるで魔法使いのようだ。哺乳類部門のBest of Europe 賞受賞作品。
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ワイン箱の上に仁王立ちする犬。日本酒と秋田犬の組み合わせでオマージュしてみたら面白そうだ。
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凛々しい顔!
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複雑なポーズのレッサーパンダ。
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そしてもっと複雑な構図の作品も。宙に浮いているように見えるが、一見するとどうやって接続しているのかわからない。
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表情の作り方が完璧で、シカの「食われる―!」という声が聞こえてきそうだ。
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こっちも食われる寸前の様子。捕食シーンは躍動感が出るので人気の構図だ。
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一方、こういう渋い作品も。
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牧羊犬と羊はペアで仲良く参加。
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大きなバッファローもいれば
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ちいさなハムスターもいる。
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哺乳類部門で一番小さな生き物はトガリネズミだったが、剥製本体以上に手の方が話題になっていた。「まさか、あの手は剥製じゃないよね?」という感じで。
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生々しい......。しかし剥製の型にとらわれない自由な発想がおもしろい。

もちろん、出品されているのは哺乳類だけではない。鳥や爬虫類、マイナーなところだと魚や骨格標本も展示されていた。

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ピンク色がきれいなオウム。
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翼を広げたポージングが見事なカワウに、
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桜の花との組み合わせが風流なメジロ。
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オオバンの骨格標本。繊細で壊れやすい作品を持ち込めるのは陸続きの特権というもので、この作品はハンガリーから車で運ばれてきたものだ。
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骨つながりで、これはとても珍しいアルマジロの骨格標本。殻の中ってこうなってたのか。

こんな感じで、全てを紹介しきれないのがもどかしい。

会場は比較的人が少なく、じっくりと見て回ることができた。

一方同じころ、敷地内の通路をはさんだ隣のホールで同時開催されている狩猟者や釣り人向け見本市は愛好家が詰めかけての超満員であり、外は外で駐車場に入ろうとする車の渋滞や動物を殺すなと騒ぐ抗議団体でカオスな状態だった。

剥製後進国からやってきた田舎者よろしく、本場の威容をこれでもかと見せつけられてすでに見学疲れし始めている私をよそに、ETCも狩猟フェスもまだ開幕したばかりなのだった。

 

周りを見ると、参加者たちは一様に熱心に剥製を観察していた。

「きれいだけど、死体じゃん」

などと『タッチ』のぐうたら兄貴のような野暮な感想を漏らす者はここにはいない。

会期が1週間ともなると、いかに英語がへたな私とはいえ多少なりとも周囲の参加者とも親しくなるものである。

実はこの記事はこれで終わりではない。続編ではそういった周囲の人たちとのやり取りから、はては恐竜まで登場する予定なのでお楽しみに。来週3/23(木)公開予定。

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会場の周りには生きてる鳥もいた。写真は夫婦で休憩中のマガモで、日本でも普通に見ることができる鳥だ。知っている生き物を見かけるとホッとする。

 

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