特集 2023年3月23日

剥製の中身って何?オーストリアの剥製コンテストでベテラン職人の技術に感服する

恐竜模型はこう作る!

セミナーのテーマは剥製にとどまらない。

博物館などにある恐竜の復元模型の作り方の講義はとくにおもしろかった。

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この講義ではディメトロドンという恐竜の復元模型を作ったときの手順を紹介。講師いわく、造形技術以上に大切なのが資料集めと下調べだ。最新の発見や研究を取り入れて知識をアップデートすることで、見栄えをよくしつつ科学的に嘘のない模型を作る必要があるのだ。
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完成したディメトロドンはETCで出展されていた。かっこいい!

後日、ミュンヘンの自然史博物館に立ち寄ったところ、偶然そこにもディメトロドンの模型が展示されていた。

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ミュンヘンの博物館で見つけた古いディメトロドンの模型。形も色も全然違う。

こちらのディメトロドンはいかにも昭和の恐竜図鑑から抜け出してきたような見た目をしていて、恐竜というよりも怪獣のようだ。申し訳ないけれど、なんとなく野暮ったく古臭い印象を受けることは否定できない。

二つのディメトロドンによって、はからずも古生物学と造形技術の進歩を実感させられたのだった。

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一方、これは剥製展示用のジオラマを作っているところ。
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「この道具を使えばいとも簡単に苔の生えた岩ができるぜ!」という感じで、カタログが配られたので笑った。講義を兼ねた宣伝だったのだ。

こういう実演者を取り囲んで見学する形式のセミナーでは参加者同士の距離も自然に縮まるというものだ。中でも韓国から来た二人組とはよく話した。

「個人での参加ですか?」と聞くと「いや、ソウルの動物園に勤務していて、仕事できています」という答えが返ってきた。

なんでも韓国には剥製師の国家資格があり、認定されると公的機関で働くチャンスがもらえるらしい。そうした公認の剥製師が国内に15人だか50人だか(最初聞いたときはフィフティーと聞こえたのだが、後から考えるとフィフティーンが正しい気がする)いるという。働いてる動物園にも是非来てよと言われたので、いつか行ってみたいものだ。

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これぞヨーロッパ!な狩猟フェア

ETCの隣では狩猟者や釣り人向けの見本市が開催されていて、セミナーがはやく終わって手持無沙汰な我々を大いに慰めてくれたのだった。

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狩猟や釣りのためのありとあらゆる商品が集まっていた。

会場はとてつもなく広く、にもかかわらず朝から晩まで常に満員御礼でごった返していた。日本の狩猟産業のしょっぱさを知っている身としては、これだけ人や物が集まる活況はうらやましくもあり、また恐ろしくもあった。狩る側がそんなにたくさんいて大丈夫なのかしらという意味で。

動物愛護の本場が欧米なら、現代の狩猟の本場もまた欧米なのだ。

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猟犬のデモンストレーション。鳥の形のおもちゃを拾って飼い主のところに持ってくるのを何度も繰り返していた。
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山の中で目立つように蛍光色の生地で作られた猟犬用の服。
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銃。銃口の先についている黒くて太い筒は消音器だ。日本では持っているだけで逮捕されるけれど、こっちでは問題なく使えるようだ。
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獲物を待ち伏せするための簡易小屋。遠くまで見渡せるように高くなっているのだが、車輪がついて移動できるようになっているせいで城攻め用のやぐらみたいだと思った。
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肉を調理するための機械も大がかり。
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丸焼き製造マシーン。家にあったら楽しいだろうな!
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近くでは肉のきれいな処理の仕方を実演していた。
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最近流行っているVR技術だって狩猟に取り入れられている。

狩猟文化はアルプス山脈に近いこの地方の保守層のアイデンティティと結びついているらしく、会場には民族衣装を着ている人たちがたくさんいた。日本人はかなりアウェイである。

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民族衣装もたくさん売られていた。うっかり買うと日本人にはぜんぜん似合わなくてもてあますやつだ!
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伝統衣装を着て楽器を鳴らす人たち。
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毛皮だってたくさん売られてる。

今回のETCには自分以外にも日本からの参加者が一人いたのだが、その人が会場を歩いていると見知らぬ毛皮業者に「お前、日本人だろう。日本からツキノワグマの毛皮を輸入したいんだけど、売ってる店があったら教えてくれないか?」と言われたらしい。

その人はあいにく日本の毛皮を売っている店を知らなかったので断ったらしいが、よく見てるもんだと感心していた。

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会場の一角では毛皮ファッションショーが。

ミュンヘンの友人たちから「最近のヨーロッパは毛皮反対の運動が激しくて、毛皮屋のショーウィンドウに卵がぶつけられたりしている」という話を聞いていただけに、この毛皮推しな会場の空気はまるで別の国に来たようだった。

毛皮反対派が過激化するのも、もともとヨーロッパ人が毛皮大好きな人たちであることの裏返しなのだろう。

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そして唐突に現れるマッサージチェア。催し物にあわせて健康器具を売るのは万国共通なんだろうか。

⏩ いよいよ授賞式

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