恐竜模型はこう作る!
セミナーのテーマは剥製にとどまらない。
博物館などにある恐竜の復元模型の作り方の講義はとくにおもしろかった。
後日、ミュンヘンの自然史博物館に立ち寄ったところ、偶然そこにもディメトロドンの模型が展示されていた。
こちらのディメトロドンはいかにも昭和の恐竜図鑑から抜け出してきたような見た目をしていて、恐竜というよりも怪獣のようだ。申し訳ないけれど、なんとなく野暮ったく古臭い印象を受けることは否定できない。
二つのディメトロドンによって、はからずも古生物学と造形技術の進歩を実感させられたのだった。
こういう実演者を取り囲んで見学する形式のセミナーでは参加者同士の距離も自然に縮まるというものだ。中でも韓国から来た二人組とはよく話した。
「個人での参加ですか?」と聞くと「いや、ソウルの動物園に勤務していて、仕事できています」という答えが返ってきた。
なんでも韓国には剥製師の国家資格があり、認定されると公的機関で働くチャンスがもらえるらしい。そうした公認の剥製師が国内に15人だか50人だか(最初聞いたときはフィフティーと聞こえたのだが、後から考えるとフィフティーンが正しい気がする)いるという。働いてる動物園にも是非来てよと言われたので、いつか行ってみたいものだ。
これぞヨーロッパ!な狩猟フェア
ETCの隣では狩猟者や釣り人向けの見本市が開催されていて、セミナーがはやく終わって手持無沙汰な我々を大いに慰めてくれたのだった。
会場はとてつもなく広く、にもかかわらず朝から晩まで常に満員御礼でごった返していた。日本の狩猟産業のしょっぱさを知っている身としては、これだけ人や物が集まる活況はうらやましくもあり、また恐ろしくもあった。狩る側がそんなにたくさんいて大丈夫なのかしらという意味で。
動物愛護の本場が欧米なら、現代の狩猟の本場もまた欧米なのだ。
狩猟文化はアルプス山脈に近いこの地方の保守層のアイデンティティと結びついているらしく、会場には民族衣装を着ている人たちがたくさんいた。日本人はかなりアウェイである。
今回のETCには自分以外にも日本からの参加者が一人いたのだが、その人が会場を歩いていると見知らぬ毛皮業者に「お前、日本人だろう。日本からツキノワグマの毛皮を輸入したいんだけど、売ってる店があったら教えてくれないか?」と言われたらしい。
その人はあいにく日本の毛皮を売っている店を知らなかったので断ったらしいが、よく見てるもんだと感心していた。
ミュンヘンの友人たちから「最近のヨーロッパは毛皮反対の運動が激しくて、毛皮屋のショーウィンドウに卵がぶつけられたりしている」という話を聞いていただけに、この毛皮推しな会場の空気はまるで別の国に来たようだった。
毛皮反対派が過激化するのも、もともとヨーロッパ人が毛皮大好きな人たちであることの裏返しなのだろう。