夢をコントロールするのはなかなか難しいことがわかった。
私の場合、その前にいろいろ治すことがあるんじゃないか。歯の噛み合わせとか、ベッドのスプリングとか。この疲労のたまりやすい体とか。
他にわかったことがある。夢のメモをとっているほうが、続きをどんどん見たくなり、引きずられる可能性が高いということだ。
でもこれは面白い。目が覚めたら枕もとに見知らぬ文章がおいてあるなんて、クリスマスをひとりでむかえる人には自分へのプレゼント代わりにいいかもしれない。
夢見の悪い私。
歯ぎしりのすごい私。
起きても疲れのとれない私。
睡眠がめっぽう不得意な私だ。眠るの大好きなのに。想う人には想われず。
せめていい夢見てすっきり起きよう。
受身ではなく、こちらから夢を攻めてみました。
※2003年12月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
いままでいったいいくつもの悪夢を見てきたことだろう。
高校の部活の合宿で、胸の上で手を組んで寝たら、血みどろな風景を見て跳ね起きてしまった。同じ部屋で遅くまでトランプしていた友人らがいっせいにこっちを見たほどの「がばっ!」ぶり。
夢が終わらず、寝坊しそうになることもたびたびだ。続きを見たくてなかなか起きられないのだ。
もう夢に振り回されるのはいやだ。スカッと寝起きもさわやかな夢を見たい。
まずは、最近どんな夢を見ているか、調査することにした。
見た夢を朝起きてすぐに書き留める、というオーソドックスな方法を試す。これ、やってみたいとつねづね思っていたがなかなかきっかけがなかった。
必ず書き留めることを誓って布団に入る。
私は朝方6時ごろに1度目が覚めることが多い。そのとき半ば眠りながら書いた気がする。
「叫ぶソフ」
一言だけ書かれている。
祖父はカタカナで書いてある。それとも「ソフトクリーム」とか、英単語を書こうとして息絶えたのか。全然内容を覚えていない。おおかた、おじいさんが叫んでいたのだろう。いずれにしてもいい夢じゃなさそうだ。
書いたあと、いったん寝て、また起きた。その時は直前に見た夢を覚えていたので、わりと正確に書き留めることができた。
「男子校で文化祭があり、(Webマスター)林さんが帽子をかぶり、(うちの)弟を見に。」
「教室にミシン(足踏み)懐かしい」
「昔の友人がネプチューンの誰かの背中に飛びつく」
ゆうべこんな夢を見た、と人に言えるような夢はたいがい明け方に見るのだそうだ。このときのがそうだ。
しかしもう8時15分。会社に行くぎりぎりの時間!
なんだか毎日夢の記録をつけるのが楽しくなってきた。見知らぬ文を生成する自分。朝もこもこ起きて枕もとでメモするところをビデオにとって見てみたい。
面白がってばかりもいられません。今度は積極的に夢に影響を与え、スカッと起きられるようにしたい。
「夢に見たいきれいな写真や映像を、寝る前に一定の時間じっと見ると、夢に出てきます。」ということなので、試してみる。
いい夢を見たのはいいが、目が覚めて現実に戻ってがっかり、そんな目にはあいたくないので、ほどほどにいい夢見られたらいい。「眠る5分前に見る本」がうちにあったので、海や海辺の町の美しい風景を頭に叩きこむ。せめて夢で旅行気分を味わえたら。
そして就寝。翌朝、夢メモを見てみる。
「食事に並ぶ トリ エビ、トリ」
いい景色がどうこうより、腹減っていたらしい。
食事のメニューにトリとエビが出たのか。それだったら豪華な食卓だ、納得できる(全然覚えてないけど)。でもトリとエビといっしょに食卓についていたのかもしれない。それだと怖い。
あの本から海辺の鳥と、海産物を想起してしまったのだろうか。深層心理はなかなか手ごわい。
「オレンジの香りをかぎながら眠るといい睡眠が得られます。」ということなので、アロマポットにくべて寝てみる。いい香りだ。なんだか久しぶりに贅沢な気分。
翌朝のメモ。
「会社へ。グループにわかれて研究 エビアン出し入れ うち うちがゆうしょう カップヌードル」
まったくわからない。
でも少なくとも悪い夢ではなさそうだ!「うちがゆうしょう」しているんだから。
しかしこの日、メモをうつらうつら書いているとき、1本の電話が入った。
「オツハタさん、今日はお休みでしょうか?サイボウズの予定表に書いておいてくださ……」
「え!今何時ですか!?」
「今、12時ですよ」
会社からだった。はっきり目が覚めた。このほうが夢であって欲しいよ。
最後の手段はまことにオーソドックスに、「七福神の絵を枕の下に入れる」。
ところが、正月前だからか、そのおあつらえ向きの絵がなかなか売っていない。仲見世や東急ハンズにもないなんて、意外なことだ。
と、そこで私の郷土の名物「幸煎餅 七福神あられ」を思い出した。
中身をありがたくいただき、絵を枕の下にはさんで寝る。一足早い初夢だ!
そしてメモはこのようになった。
「退社を考える(巨泉)」
これ、全然いい夢じゃない。
中身はなんとなく覚えているのだ。前の日に大遅刻したので、その後ろめたさが残っていたに違いなく、舞台は会社の会議室。上司の巨泉氏にさんざん絞られて、退社を考えたのだった。
夢をコントロールするのはなかなか難しいことがわかった。
私の場合、その前にいろいろ治すことがあるんじゃないか。歯の噛み合わせとか、ベッドのスプリングとか。この疲労のたまりやすい体とか。
他にわかったことがある。夢のメモをとっているほうが、続きをどんどん見たくなり、引きずられる可能性が高いということだ。
でもこれは面白い。目が覚めたら枕もとに見知らぬ文章がおいてあるなんて、クリスマスをひとりでむかえる人には自分へのプレゼント代わりにいいかもしれない。
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |