特集 2023年2月14日

霧多布の海に遊ぶ野生のラッコを見た

ラッコにはいろいろあった

ラッコという名はアイヌ語で本種を意味する「rakko」が語源と言われている。分類的にはイタチ科・カワウソ亜科に属し、英名ではシー・オッター(sea otter:海のカワウソ)と呼ばれている。つまり、霧多布にシーオッターがおったのである。

それを、あなたに伝えたかったのです。
スムーズに体の向きをくるくる変える。

寝返りを打つように体を回転させながら海面を滑るように進んでいく。なにげに推進力はすさまじくて、少し岩陰や波間に隠れて見失ったかと思うとすっとこちらに近づいていた(といっても遠いけど)

海面でこの自在さ。

動画でどうぞ。

「あそこにもラッコが!」と思ったらアザラシだった。(ゼニガタアザラシ?)

ラッコと見せかけてぼこんとアザラシが顔を出すとは、来るたびに北海道の資源に圧倒される。鳥もでかいしシカもこっち見てくるし。

アザラシのような丸っとした脂肪タンクという感じではなく、ラッコのスタイルはシュッとしている。皮下脂肪はそんなになくて、身体中を覆う剛毛によって体温をキープしているのだ。

海のアルパカみたいになってるのだろうか。

剛毛具合は半端ではない。体全体で約8億本の毛が生えており、1平方cmあたり約155,000本の密度をほこる。毛皮の外側の長くて撥水性の高い毛の下には細かい毛がふっさふさに生えていて、この毛の間に空気をためて保温する。この超高密度毛皮スーツのおかげで北半球の冷たい海でもラッコが体温を保ち活動できるのだ。

毛の撥水・断熱機能は生命線であり、毛づくろいは入念に行われる。活動時間の20%ほどをグルーミングに費やすという。

それはつまり人間にとっても良質の毛皮が取れるという事で、18世紀から20世紀にかけて乱獲され生息数は激減。世界的な絶滅の危機に瀕し、北海道近海に分布していたラッコは姿を消した。

由々しき事態とばかりに保護政策が取られ、乱獲に歯止めをかけるべく1911年に日本・ロシア・アメリカ・カナダの4カ国間で「膃肭獣保護条約(おっとせいほごじょうやく)」が締結された。

日本国内では1912年に墾田永年私財法なみに読感が気持ちいい「臘虎膃肭獣猟獲取締法(らっこおっとせいりょうかくとりしまりほう)」が制定され、ラッコ(臘虎)・オットセイ(膃肭獣)の猟や毛皮の販売を農林水産大臣が制限できるようになった。なにげにこの法令は今でも有効である。

でかいカワウソだというのに漢字では虎。

近年ではなんとか回復の兆しを見せ、10年ほど前から霧多布岬や根室の東端、納沙布岬など道東の海で見られるようになってきた。2009年には釧路市の釧路川に現れたラッコのクーちゃんが特別住民票を贈られるなど、タマちゃんさながらのフィーバーを巻き起こしている。

あ、ヒメウいるじゃん、とかやってたらラッコを見失った。
いったん広告です

ふたたび遭遇

ラッコはぬったりと岸の影に消えた。見られてうれしかったしめっさ寒いし戻ろうと駐車場に引き返す道すがら、崖下にプカプカ浮かんでリゾート気分に見えるけど実はいろいろ考えてますみたいな顔をしたラッコがいた。

近い!といってもなんせ崖なのでこんな感じなのだが。

この距離ならニコンの2000mmがより克明にラッコちゃんの姿をとらえる事ができるではないか。

碇ゲンドウのように手を組む。か、かわいい!

先程見失ったラッコが再び現れたのだろうか、毛並みを見ると違う個体にも見えるがよくわからない。

それにしても腹の上に西川の掛けぶとんのように水が乗っかって見えるのがすごい。撥水性が高いのはわかるが一体どんなサイエンスでこんな事になっているのか。

ピザでも頼むかなー。
波に揺られるがまま。

両手を上げて口を開くファニーでキュートな動画をどうぞ。激しい風切り音そのままにお届けします。

だだっぴろい海原で左右を見回しながらまたラッコはどこかに行ってしまった。本当だったらこのあたりでもっとたくさん浮かんでいたはずの仲間を探しているかのようだった。
ラッコを見送った後は街に出て体を温めるべく食堂に入ったが、あったかい汁物とかではなく寿司にいってしまった。

上寿司いってしまった。

記事中にあるとおり、運良くラッコがいてもだいぶ遠いのできちんと観察するなら双眼鏡は必須である。また、現地でもかなり警告されているが柵を越えずに遊歩道から観察しよう。貴重な植物を踏み荒らすし、何よりすぐそこは40メートルの断崖絶壁なので危険極まりなし&滑落待ったなしである。

少しばかり海に近づいたところでどうせラッコはかなり遠いし、遠くていいのだ。

かっこいいパチンコ屋を見つけた(たぶんもう廃業)
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