特集 2025年12月9日

アーティチョークを育てたら大好物になった

5月中旬~6月中旬 アーティチョークが次々に実りだした

最初に確認した3つのアーティチョークで終了だと勝手に思っていたのだが、あれは単なる序章でしかなかった。

一つの株にに一つのつぼみがついて終了ではなく、つぼみができはじめるとようやく縦に伸びだして脇芽が増えていき、そのすべてにどんどこつぼみができたのだ。よく見たら種の袋にもちゃんとそう書いてあった。イタリアで安かった理由はこの生産性あってこそか。

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5月中旬。まさかこんなにつぼみができると。

サイズはバラバラながら、一カ月程度の間に全部で100個くらいはできただろうか。まさかのアーティチョーク食べ放題状態。さすがに食べきれないので人にあげたいのだが、食べ方がわからないからともらってもらえない。

また隣近所の区画で畑をやっている人から「それはなんですか?」と当然の質問を何度かされて、まごまごすることも多かった。いろいろと初見殺しの野菜である。

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そして6月上旬。さすがにもう食べられないよ。

ただおかげさまで、収穫すべきタイミングだったり、食べられる箇所だったり、サイズごとの適切な調理法だったり、実践を通じてだいぶ学ぶことができた。

今の私なら種の袋に書いていった「花托(花床)と総苞片の下部の肉」がどこなのかもよくわかる。これが人間の成長だ。

調理の楽しさも含めて、もはや大好物と言えるだろう。あとアーティチョークを食べる行為は、カニを食べるのに似ているなとちょっと思った。

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害虫もあまりつかない、育てやすい野菜だった。
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アーティチョークとアーマガエール。

 

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まだ開いていないつぼみは、先端を思い切って切り落とし、硬い外側の総苞片も剥がし(どこまで剥くかが難しい)、茎の外側も削ってから茹でると調理がしやすかった。
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釣ったタコ、レモン、オリーブオイル、イタリアンパセリ、塩、胡椒で和えて、ナポリ辺りの食堂で出てきそうな一皿に仕上げる。クニュクニュのタコとザクザクのアーティチョークがよく合う。
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少し開いたつぼみを30分しっかりと塩茹でする。
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総苞片を外側から剥がしながら、下部の内側を前歯でしごいて食べるのが楽しい。
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左が食べる前、右が食べた後。カップアイスのフタを舐めている気分になる。
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中心まで剥いたら、中央にあるフワフワのワタはおいしくないので外し(カニでいえばエラ)、その下の花托(花床)をいただく。
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ここが一番のボリュームゾーンである花托。カニでいえばミソ、ここがとろりとしてうまいのだ。
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ふぐ刺し風に盛り付けるとかっこいい。

ユダヤ風アーティチョークはゴボウチップスと仔牛の脳みその味がした

そういえばイタリアに留学していた友人ならアーティチョークをもらってくれるかなと連絡をしたついでに、本場流のおすすめの食べ方を聞いてみたところ、「Carciofi alla giudia(ユダヤ風アーティチョーク)」を勧められた。なんと丸揚げである。

こいつを揚げるという発想はなかったが、とりあえずやってみよう。

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外側の総苞片を剥がし、先っぽを切り取り、花托と茎の硬い部分もカットして、レモン水につける。
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水分を拭きとって150度の油で5分ほど揚げる。
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バラのように開いてきた。
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一端取り出して、5分ほど余熱で火を通す。
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170度で3分ほど二度揚げ。
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できあがり。塩と胡椒、あるいはそのままで食べる。アウトバックステーキハウスのオニオンフライみたいだなと思ったけど確認したらだいぶ違った。

これがとてもおもしろい味の料理だった。こんがりと茶色くなった総苞片はパリパリでゴボウチップみたいで、フカフカしたワタを外した花托から茎にかけてはこっくりした旨みの塊。仔牛の脳みそを思わせる味わいで、こんなにコクの強い野菜料理が存在するのかと驚く。

さすがイタリアの伝統料理、これは私には絶対思いつかないアーティチョークの生かし方だ。

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中央のワタはおいしくないよ。
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野菜なのに赤ワインが欲しくなった。

6月中旬~7月上旬 もはや花を愛でる

6月も中旬を過ぎて暑くなると、アーティチョークのつぼみは徐々に色づきだしてきた。こうなると食用としては硬すぎるので、あとは花を楽しむのみである。

こうなる前に収穫するのが正解なんだろうけれど、さすがに食べ飽きてしまっている。なんとも贅沢な話である。

これだけ大きなつぼみが、どのような花を咲かせるのだろうか。

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6月18日の様子。もう収穫は諦めた。
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そして7月上旬には見頃を迎えた。
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少し赤くなり始めたつぼみ。
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赤くなりつつ、総苞片が徐々に開いていく
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そして中央からたくさんの花が出てきてゾワゾワする。
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花粉を求めてハチなどの虫がよくきていた。
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そして満開になった。これは確かにアザミの仲間だ。
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せっかくなのでアップでどうぞ。
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断面の様子。食べておいしくないワタ部分が伸びて花となり、タンポポの綿毛のようになるがわかる。
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アーティチョークの花は小さな花の集合体であり、一番下に種ができるようだ。

7月中旬~8月中旬 枯れる花をめでる

夏野菜が最盛期を迎える頃、アーティチョークの花は枯れ始めた。植物は秋になると枯れるイメージだが、夏を前に枯れ落ちるものも結構多い。

立ったまま少しずつ土に戻っていくアーティチョークの姿も、儚げで美しかった。でかいけど。

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花火のように枯れていく。
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枯れたらユダヤ風アーティチョークみたいになった。
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隣にある青々した夏野菜(トマト)とのコントラストに栄枯盛衰を思う。

8月中旬、種を回収する

お盆が過ぎた頃にはすっかり枯れたので、飛び散らないようにビニール袋の中で花を割いてみたところ、1年と4カ月前に蒔いたものよりも一回り小さい種ができていた。

これが発芽するのかはまだわからないが、もし発芽したら一帯がアーティチョークだらけになってしまう恐れがあるので、種が落ちる前に全部回収した。

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お疲れさまでした。
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種を確認。自家採種した種でも芽が出るか、そしてちゃんと育つかは不明。
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勝手に繁殖しないよう枯れた花を回収する。

これで今年のアーティチョーク栽培は終了だが、うれしいことにこの植物は多年草なので、物語は続いていく。

枯れた幹をどけたところ、その根元からかわいい新芽が出ていたので、どうやら来年もまたあの味が楽しめそうだ。2年連続の豊作に備えて、もらってくれそうな人を探さなくては。

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また来年もよろしく!

この記事を書くにあたって自分が作ったアーティチョーク料理を振り返ったのだが、食べきれない程あるのだから、もっとたっぷり贅沢に使って、普通は作れないようなメニューにもチャレンジすればよかったとちょっと後悔している。

ポタージュとかピクルスとか餃子とか、あとはなんだろう。やっぱり難しいな。とにかく来年の春までにゆっくりと考えておこう。とても楽しみだ。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
実は7月にヨシダプロといっしょに玉置さんの畑に行ったときに見せてもらってました。これがアーティチョークと言われても全然ピンときてなかったのですが、今回の記事ではっきり分かりました。成ってるところから枯れてるところまで分かった。もう「イタリア料理でよく聞くやつ」というぼんやりした認識ではありません。(林)

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