特集 2019年10月10日

140点のジャンクカメラを押収品のように並べたい

全部並べ終わってご満悦の落札主

知人の女性が「ついカッとなって」ネットオークションで140点のジャンクカメラを落札したという。なんだ、それは…。

自宅に届いた大量のカメラと部品を見て彼女は思った。「下着泥棒から押収した下着みたいに全部並べたい」と。それはイベントとして実現した。どんな光景なのか。見学に行かざるを得ない。 

ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!(動画インタビュー)

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ゲストとして2人のカメラ店店員を招いていた

首謀者は今井田彩那さん(36歳)。フリーランスでPRやマーケティングの仕事をしている。

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きっかけはこのツイート

出品していたのは専門業者で、「140点まとめて」というのが販売条件。写真に写っているのは一部だという。コトの経緯を取材したい旨を伝えると「イベントを開催することになったので、ぜひ取材に来てください」という返信。

10月4日(金)。取材班は高円寺のトークライブハウス「パンディット」にいた。

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イベント名は「ジャンクカメラ大集合」

会場に入るとカメラ好きたちが熱く語り合っている。酒を飲みながら掘り出し物がないかを探すイベントだという。

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専門用語が飛び交う現場

さて、今井田さんはゲストとして2人のカメラ店店員を招いていた。

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馬込さん(中)とKさん(右)

いずれも23歳。現役の店員なので、本名や店舗名は明かしたくないそうだ。

今井田さんが着ているTシャツには2011年に発売されて話題を呼んだ富士フィルムの「FinePix X100」。

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イベントにかける気合いが見て取れる

気になる落札金額は送料込みで4万円ほど。「140で割ったら1点300円も行かへんやん」というのが思い切って落札した理由だ。こうして、ジャンクカメラたちは9月初旬に今井田さんの自宅に届いた。

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このような状態で段ボールに入っていた

「でっかい段ボール3箱に入っていて、とても持ち上げられないサイズと重さ。しょうがないから7箱に小分けしました」

「このポラロイド、状態がいいから撮影できるんじゃない?」

開封および陳列の儀式が始まった。来場者も手伝っている。

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本体、レンズ、三脚など、パーツごとにまとめたい

なお、来場者はドリンクやフードを注文した数だけ、好きなジャンクカメラを持ち帰ることができる。

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さっそく600円の緑茶ハイを注文

注文のたびに「ちゃんと140枚用意しました」という引換券が渡されるのだ。

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芸が細かい

並べている最中もカメラ好きたちの手は止まりがち。発見や感動が多すぎるのだ。

「おいおい、フィルムが入ってるカメラがあったよ!」

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現像したらどんな写真が出てくるのだろう

「このポラロイド、状態がいいから撮影できるんじゃない?」

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作動はしたが感光せず

中には「2015 10/5」と書かれた付箋付きのものも。

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元所有者のドラマを感じさせる

「カメラ女子」が流行った頃に一度熱は冷めました

カメラの知識はまったくないが、ジャンクカメラたちはフォルムがかっこいい。そこへ、馬込さんが声をかけてきた。

「二眼レフカメラは、ちょっと独特な匂いがするんですよね」

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左端がプリモフレックスの二眼レフ

真のカメラ好きは、やはり一般人とは違う視点を持っている。

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デミグラス&オニオンのカレーライスは800円

今井田さんは高校時代に写真部に所属していた。その頃使っていたカメラは写真だけ残っている。

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こちらが思い出のカメラ

「型番とかは忘れちゃいましたが、ダメ元でこの写真をTwitterに載せたらフォロワーさんが特定してくれたんです」

正解は「マミヤ ZE-2 クオーツ」。1980年に発売された35mm判一眼レフカメラだ。

同じく、高校時代から使っていたロモグラフィーの「フィッシュアイ No. 2」はまだ手元に残っている。170°の視界で魚眼写真が撮れるモデルだ。

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写真左が「フィッシュアイ No.2」

右は『大人の科学マガジン』の工作キットで組み立てた二眼レフ。カメラの分解・清掃を始めるきっかけになったカメラだという。

「『カメラ女子』が流行った頃に一度熱は冷めましたが、仕事で撮影するようになってやっぱり面白いなと」

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現在使用しているカメラとレンズ

さらに、マウントアダプターを使えば昔のフィルムカメラのレンズをデジカメに装着できることを知って、ジャンクカメラの世界にも興味を向けるようになった。

中1の時に初めてジャンクカメラを買って「いじってたら直った」

1時間ほど経っただろうか。ついに、全アイテムの陳列が終了。

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壮観である

今井田さんも興奮気味。

「最初は1人で並べて記念写真を撮ろうと思っていたんですが、パンディットの店長さんに相談したら『なんでそんな面白いことを1人でやるの?』と言われて。皆さんのおかげで夢が叶いました」

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ドヤ顔で“押収品”に囲まれる

満を持して今井田さんとゲスト2人によるトークショーが始まった。まず、「ジャンクの定義とは?」という深遠なテーマが飛び出す。

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司会者が質問を投げかける

中1の時に初めてジャンクカメラを買って「いじってたら直った」という馬込さんが即答した。

「直るものと思って買うのがジャンクでしょう」

Kさんは「小学校の卒業旅行にカシオのEX-10を持っていって金閣寺とかを撮った。きれいな写真を家族に見せたかったんです」と思い出トーク。

上からも横からも覗けるファインダーが標準装備

ここで、今井田さんから「引換券の数だけお持ち帰りくださいね」とアナウンス。

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真剣に吟味する来場者たち
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隙あらばカメラの匂いを嗅ごうとする馬込さん
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アルミホイルを使って通電させるという技も

せっかくなので、3人のオススメを聞きたい。まずは、馬込さんから。

「たくさんあるから迷いますが、強いて挙げればこの『フジカ GE』でしょうか。このサイズなのに写りが非常にいいんですよ」

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「ピント以外はカメラにお任せで使いやすい」とも

続いて、Kさん。

「『リコーフレックスTLS』に付いていた、このレンズが好きなんです。昔のレンズは滲んで写りますが、これは描写性能が高い」

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「モノによっては今のレンズよりいいんじゃないかな」

「あと、上からも横からも覗けるんです。こんな機能が標準装備されているカメラは他に見たことない」

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謎のダブルファインダー
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サイドのつまみで切り替えるシステム

CDSの露出計を初めて搭載したモデルの廉価版

ラストは今井田さん。

「私はこの引き伸ばしレンズかな。昔のフィルムカメラで撮った写真を大判で引き伸ばしたい時に使われてたレンズです。今のデジカメに着けるのはちょっと面倒だし、扱いも難しいけど、個性的な写真が撮れます」

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超接写も可能だという

さて、色々とオススメされたが話が高度すぎるので僕はフォルムで決めてしまおう。選んだのは「キヤノン FX」。

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手書き風のロゴもかわいい

馬込さんに見せると「CdSの露出計を初めて搭載したモデルの廉価版です。今ちょっと話題になっている『ぐるぐるボケ』も出しやすいですよ」。


ジャンクカメラには時代ごとのドラマがあった

というわけで、1台のジャンクカメラが我が家にやってきた。残念ながら動きはしないが、インテリアとしても十分かっこいいのだ。

スマホで高解像度の写真が簡単に撮れる昨今だが、ジャンクカメラには時代ごとのドラマがあった。しかし、今井田さんは残りのカメラをどうするのだろうか。それについては聞き忘れた。

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首から下げてみると、ずっしり重い

 

【取材協力】

高円寺パンディット

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