特集 2019年9月12日

「東京めだか流通センター」で奥深い改良メダカの世界に触れた

約40種類のメダカを完璧なケアの元で飼育

最近、疲れている。生き物と触れ合う暮らしがしたい。子供の頃、実家で飼っていた犬や猫にはずいぶん癒された。しかし、現在住んでいるマンションはペット禁止。そんな折、「大井町にメダカ専門店がオープン」というニュースを知る。

メダカ。飼いやすそうだし、癒し効果もありそうだ。いいではないか。ちょっと店の様子を見てきます。

ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!(動画インタビュー)

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店内の水槽には約40種のメダカが泳いでいる

大井町は新宿から20分弱。毎年8月下旬には「大井どんたく夏まつり」が開催され、数万人の来場者で賑わう。

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京浜東北線、東急大井町線、りんかい線が乗り入れ

さらに、駅の西側には酒飲みにとってはたまらない横丁がある。

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しかし、今回はスルー

大通り沿いに数分歩くと、目指す「東京めだか流通センター」に着いた。今回はオーナーの野中さんと店長の池田さんが対応してくれた。

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メダカ愛に満ち満ちた池田さん

なお、野中さんは恥ずかしがり屋なので写真NGとのこと。

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店内の水槽には約40種のメダカが泳いでいる

40というのは品種の数なので、個体数となると約1000匹となる。

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池田さんは内装業の会社を畳んで店長に就任

この店は今年の8月にオープンしたばかり。以前からメダカイベントなどに出店はしていたが、「メダカの飼育文化の認知を拡大するために実店舗を出したい」という野中さんの思いに池田さんが賛同。経営していた内装業の会社を畳んで店長に就任した。

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ほら、メダカかわいいでしょ

お二人から聞いた改良メダカの世界、じつに奥が深い。

「メダカ自体は古くから観賞魚として親しまれてきましたが、現在のような“改良種”ブームに火を付けたのは2002年に登場した『楊貴妃』というメダカです」

さらに、メディアでも紹介されて話題になったのが「オロチ」と「星河」の交配で誕生した「ブラックダイヤ」。これは神奈川県の中里さんという人が完成させた改良種だ。

「メダカは錦鯉と同じように上から見るのが基本ですが、『オロチ』や『ブラックダイヤ』は横から見るために改良されています」

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「ブラックダイヤ」はラメのように光るうろこを鑑賞する

「ブラックダイヤ」人気は凄まじく、盗難に遭って72万円で売られたこともあるという。上の個体は生産者から引き取った現物だ。

なお、池田さんは錦鯉の品評会で農林水産大臣賞を受賞したことがある。そのため、改良メダカの世界でも錦鯉のような3色系の開発に力を入れたいそうだ。

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錦鯉をミニチュアにしたような「丹頂」
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改良メダカは今や500種類を超えている

さらに、いろんな品種を見せてくれた。

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島根県の野尻さん作、「雲州三色 現物」

「現物」とはその品種を作った人が産ませた個体という意味で、 希少価値がより高くなる。

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レインボーカラーのラメを背中に乗せた「琥珀ラメ」
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発光する体内光が青い「マリンブルー」
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他のメダカよりひときわ大きい「ジャンボヒメダカ」

メダカ愛好家は想像以上に多いようで、専門書も出版されている。改良メダカは今や500種類を超えているという。

「余談ですけど、安倍総理もメダカを飼っているそうです。一大産地の山口県出身だからでしょうか。あと、国税庁の職員の間でもメダカを飼うのが流行っているみたいです(笑)」

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「メダカ飼いたい新書」というキャッチが素晴らしい
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100万円の値段が付いた改良メダカも

「うちで販売しているのは100円から2万円ぐらいですが、最近は超高級種も続々と出てきていて、2010年に開発された『琥珀透明鱗スモールアイサムライメダカ』には100万円の値段が付きました」

「スモールアイ」は点目で視力がないため、自力で餌を食べることができない。そのため、飼育が非常に難しい品種とのこと。

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高級種の代表格、「スモールアイ」

店内では紫外線とLEDのダブルライトで飼育している。紫外線は体内でビタミンDを形成するために必要な光なんだそうだ。さらに、水は神奈川県内の湧き水を使用。場所は「トップシークレット」。

また、25度以上ないと産卵をしないので真夏でもエアコンは付けない。

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完璧な飼育環境

池田さんはビルの屋上、野中さんはマンションのベランダで個人的に飼育もしている。「名前は付けないんですか?」と聞くと、二人とも笑いながら「付けません」。

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栃木県の「なかがわ水遊園」で開催されたメダカの企画展
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野中さんが愛する多肉植物も販売中
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口先まで光が入っている「鉄仮面」を2匹購入

さて、今日は購入する気満々で来ている。色々と見せてもらったが一番かっこよかったのは「鉄仮面」という品種。1匹1000円だ。

「あ、それ飼いやすいですよ」とのことで購入決定。1匹では寂しいだろうから2匹でお願いします。

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口先まで光が入っている「鉄仮面」


 

元気に泳ぎ回る動画もご覧ください

 

そうだ、餌も買わないと。

「これは僕らがオリジナルで開発した最高の餌です」

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市販のものより絶対に美味しいそうだ

メダカを買ったはいいが、あれ、どうやって持って帰るんだっけ。

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水槽も売っているが…

「圧縮酸素を入れた水にメダカを入れますから。水槽は後で買えばいいでしょう」

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水道水のカルキ抜き剤も買って万全の態勢

お二人は海外進出も狙っている。

「香港は農水省の健康証明書を取らなくても輸出できるんです。現地の知人がメダカを欲しがっているので、これを足がかりに進出したいなと」

大正時代から連綿と続く錦鯉と比べると改良メダカの歴史は始まったばかり。これから、どんな品種が生まれるのか楽しみだ。


2匹のメダカと暮らす日々が始まった

帰宅途中、家の近所の100均でプラスチックの水槽を購入。とりあえず簡易版として使用して、ちゃんとした水槽はじっくりと吟味して選ぼう。

2匹のメダカと暮らす日々が始まった。これが、じつに素晴らしい。居酒屋で飲んでいても、お代わりを控えて帰ろうかなという気分にさせる。

名前は確かにいらないかな。そもそも見分けが付かないし。

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常に寄り添って泳ぐ2匹

 

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