丸ごと一匹の鮭に熨斗を巻いたやつ。ハムやジュースもいいけれど、でっかい魚、それも丸ごと一匹を贈り物にするっていうこの豪快さ。子ども心にはありがたみはちょっとわからなくて、でもなんだか格好良く思ったのだ。
2021年、今年もまだ筆者は新巻鮭をもらえない。もらえないけど、心の準備だけでもと思って想像を巡らせた。そしてぶち当たったのである。
いつか新巻鮭をもらうその日のために、予行練習が必要ではなかろうか。
新巻鮭を食べ尽くす会、開催
というわけで、筆者の考えたベスト・新巻鮭・シチュエーションを試しにやってみよう。
「オッ今年は鮭か!毎年ありがとうね!」
なんて言ってみたい、言ってみたいな〜! と思いながら、今回は予行練習なので自分で鮭を買って自分で熨斗を巻く。
もうね、最高of最高でしたわ。
予行練習の結果、「新巻鮭は思ったより簡単に手に入るし、捌けるし、おいしく食べきれる」ことがわかった。一緒にやってみようよ!
食べ尽くす会集合の6時間前、筆者はとあるスーパーを訪れた。
海の近くでない限り、お歳暮カタログやネットショップで注文して届けてもらうイメージの新巻鮭。しかし実は都内でも、実際に手にとって買うことができる。
新鮮なお魚が市場価格で揃うとファンも多い吉池、なんと新巻鮭の特設コーナーが常設されている。
事前に取り置きが必要か問い合わせときに、「この時期は絶対売り場を空にさせないから大丈夫!」と力強く言われたのだが、うん、たしかに嘘じゃなかった。
ここに並ぶのは「山漬け」と呼ばれ、塩をまぶした鮭を山積みにして重みで脱水、成熟させるという昔ながらの製法で作られた鮭たちだ。
ひとつひとつが2kg以上あるのだからすごい迫力!この山の中に、産地や鮭を獲った時期、様々な種類の鮭たちがある。
今回は一尾食べるというのもあって、甘口の時鮭を選ぶ。次は昔ながらのしょっぱいしょっぱい秋鮭も食べてみようと心に誓って吉池を後にした。
冷蔵庫に入らなかったらどうしようと不安だったが、今くらいの気温なら日陰においときゃ大丈夫との情報を入手。
鮭をぴっちり包む袋に切れ目を入れて空気を入れ、そのまま屋外の日陰で様子を見つつ5時間。コチコチの塊だった鮭の表面がむっちりしてきて、これはそろそろいい感じかも。
そう、今やYouTubeで鮭の捌き方が学べる時代。内臓が抜かれ、骨周りも美味しく調理できる新巻鮭を捌くのはさほど難しくないそうだ。頭からぜ〜んぶ輪切りにしちゃってもいいのよ!というひともいるほど。
一匹の鮭がみるみるうちに慣れ親しんだ切り身の形になり、食欲がMAXになった一同。
思いの外スイスイ切れることの気持ちよさもあるが、とにかく目の前の鮭がおいしそうなのだ。全部食べてやるからな!!と強い気持ちが沸き起こる。
北海道民にとっての新巻鮭は「贈り物」、自分たちが新巻鮭を食べることは珍しいというジーンさん。とはいえ鮭は頻繁に食べるそうで、ご実家の味を教えてもらった。
焼き、混ぜごはんと鮭そのものをガツンと味わうものが続いたが、一転煮物となると鮭の旨味が全体にじんわり染みて、元の味の力強さが活きる。これは料理のし甲斐があるなあ。
一口食べるとお酢の酸っぱみの向こうから魚の香りがやってきて、おお、これは大人の味だ。
鮭の塩辛さをまったりしたタルタルソースが包んで、噛みしめるごとにおいしさがじわじわ溢れてくる。
このあと、ふたりで一皿の予定だったムニエルをこっそりひとりで完食していたのでお口に合ったのだと思います。
しっかり浸かったいくらにまろやかな鮭、そしてごはん。おいしくないわけがないのだ。
食べる前から人を狂気に陥れる鮭いくら、おそるべし!
レモンの酸味と鮭のコントラストのおかげか、また新しい味わいを知った一同。いよいよ最後の一品である。
三平汁を飲み干す頃には、全員の目がトロンとしていて、まるで遊び疲れた子どもが親の背中でまどろむかのようだ 。静かに、新巻鮭を食べ尽くす会の夜は更けていった。
贈るだけ・贈られるだけじゃもったいない
かくして2kgの鮭は、一部おみやげにはなったものの、余すことなく食べつくされた。
こんなにおいしくて楽しいんだから、贈り贈られるだけじゃ勿体ない。一年を共にやってきた人たちでわいわい楽しむ、そんな新しいお歳暮のかたちが見えたぞこりゃ!
羅臼出身の友は鮭に湯をかけて食べる
今回食べたのは甘口の鮭だったが、昔ながらの辛口塩鮭のおいしい食べ方を、月餅さんが羅臼出身のご友人から聞いてきてくれた。
何でも、「切身を焼いてご飯にのっけてお湯をかけてかきこむ」だけで旨いらしい。出汁でも茶でもなく、お湯茶漬け。
彼の地の、魂の輝きそのものじゃないか。次は絶対やるぞ!
冬の食は最高! その思いを新たにしたみなさまへ……
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