雨降って地固まるを信じて生きていこうと思った
確かに雨が降ってぬかるんでいた地面は2か月で固まっていた。前より固いかと言えば、元に戻った程度の話だし、まだ足跡が残る程度に柔らかい部分もあった。流れた土もすぐには戻らない。
雨降って地固まるには時間が掛かるし、完全に元には戻らず傷跡は残るかもしれない。それでも、悪いことが起きても希望を失わず前向きに生きていくには必要な言葉なのだろう。
僕は「雨降って地固まる」を信じることにした。
なにこの、ちょっと嘘くさい締め。
「雨降って地固まる」ってことわざがあるだろう。雨が降って地面がぬかるんでも、それが乾いたらむしろぬかるむ前よりも固い地面になる。転じて、なにか悪いことが起きても解決されれば前よりも良い状態になるという意味だ。
ふむ。
では、言葉通りの「雨降って地固まる」は本当なのか?ちょうどよさそうな状況を見つけたので、ちょっと山に登ってきました。
今年10月中旬の平日。登山に出かけたら雨が降ってました。もちろん天気予報は見てるので、雨が降るのは知ってたんですが。
雨が降っている山は、晴れてる山よりむしろキレイ。植物の色が濃く見えます。
この日に登ったのは奥多摩の御前山で標高が1405m。4月ころカタクリの花がたくさん咲くことで有名な山です。歩いたのは下の地図の赤い線。だいたい17kmでした。
スタートは上の方の緑のピンで、境橋というバス停があります。境橋へは、青梅線の奥多摩駅からバスで10分弱。
境橋から南(地図の下)へ向かって登り、御前山、南西の小河内峠を経て三頭山へ登り、檜原都民の森へ下山する予定でした。都民の森は11月いっぱいまで路線バスが走っているので帰りは楽チン、乗ってれば武蔵五日市駅まで帰れます。
雨は降っていたけど順調に高度を稼ぎ、御前山のメインルートに乗った途端、登山道が田んぼになっていました。
雨のせいか道が大変にぬかるんでおり、多数の足跡に水が溜まっていました。秋の山ではなかなか無い田んぼぶり(春の山は雪解け水でぬかるむことが多いけど)。
足跡の水たまりや、真ん中だけ盛り上がった轍(わだち)などが出来ていました。
雨の平日の御前山の山頂には誰もおらず、スルーして先に進むと、さらなる泥濘地獄が待っていました。
履いている登山靴は防水透湿(水は通さず水蒸気は逃がす)なので水たまりに入っても浸水はしません。それでも泥の感触が伝わってきて「うひー」と声が漏れてしまいます。
場所によっては避けようもなく、仕方ないので泥の中を歩いていきました。
その結果…。
ぬかるみ方もいろいろあって、大きな水たまりがあったり、斜面の谷側に土の盛り上がりが出来たりしていました。
ぬかるみは御前山の周辺から、南西へ向かう尾根上に点在していました。↓ここなんか、なかなかすごい。
広い斜面全体がツルツルの赤土で覆われ、巨大滑り台になっている個所もありました。真ん中を登るのが無理過ぎたので端っこの木に掴まりながら登りました。
予定してたコースを最後まで歩くのは時間的に厳しく、最後はショートカットして3kmほど短くなりました。半日ドロドロの登山道を歩いたせいで、靴はごらんの有様。ズボンも少し汚れてしまいました。
そんな登山から2か月後、12月に入ってすぐの金曜日に同じコースへ出かけました。天気は晴れ。
初冬の関東は雨の日が減り、ここ数日は降っていません。もし「雨降って地固まる」が本当ならしっかり固まってるはず。
山はすっかり冬で、登山道には霜柱。
木道は溶けた雪が再凍結したっぽく凍っていました。滑る。
氷や霜柱をバリバリ踏む締めながら登っていくと、問題のぬかるみエリアに着きました。
ぬかるんでいた道は!固まったのか!まだグチャグチャなのか!
あれから2か月!果たしてどうなったのか!
いったんCMです。
雨降った地は、2か月で、固まってました。
完全に田んぼと化していた部分も、平らで固く締まっていました。聞くところによると、人の手で整地もしたのだそうです。
落ち葉が積もったせいもあるかもしれませんが、ぬかるみはすっかり姿を消し、元の歩きやすい登山道に戻っていました(ここは過去に5,6回歩いたことがあります)。
同じ場所で比べると一目瞭然。
少し柔らかい部分もあったけど、10月に来たときとは比べ物にならない歩きやすさでした。
滑り台になっていた坂も普通に歩けます。
終始快適な山歩きが出来ました。「雨降って地固まる」は、山では本当でした。確かに固まってました。
ここからは余談です。
前回の雨登山では予定コースの最後を端折ったんですが、今回は天気がよく道も締まっていて歩きやすかったため、だいたい予定通りに歩けました。予定のコース20㎞を歩けそうな気がします。
まずは腹ごしらえ。
歩いていくと、葉が落ちた木の間から湖が見えました。東京都の水瓶、奥多摩湖です。
いくつかの山頂といくつかの峠(大抵、山頂と山頂の間にある)を越えて三頭山に登っていくと展望台があります。森林限界を越えない樹林の山では貴重な眺望。
縦走(山頂を次々に踏破していくスタイル)では、これまでに歩いたコースを見られると嬉しくなるものです。ここからは御前山が見えるんですよ。
そうか、あの山の向こうから来たのか…と感慨深くなります。
三頭山の南側は都民の森という名前で整備されていて、半分公園みたいな雰囲気がありますが、実はしっかりと山です。一部はかなり傾斜もあり、登りごたえがあるので来年の4月以降に行ってみてください。名前の通り山頂が3つあります。
なぜ来年の4月なのか?まだ寒いけど、雪もそんなに積もってないし、歩こうと思えば歩けるはず?そうなんだけど、冒頭にも書いた通り、登山口までバスが来るのが11月いっぱいなのです。あれ?今日って12月じゃない?
って事に気づきましてね。登山中に。バス、来ないじゃん、って。
本来なら山頂から1時間ちょっとで登山口のバス停に着くんですが、更に50分車道脇を歩いて下の集落のバス停に行かなくてはいけません。しかもバスの発車時刻は17時15分。
今の時間15:40+1時間ちょっと+50分=17:50くらい。あれ?
一般的に、登山は15時に下山するか宿泊地に着くように計画を立てますが、今回は(今回も?)一般的的な登山から外れた感じになってきました。良き登山者の皆さんは決して真似をせず、余裕がある登山計画を作りましょう。
(※筆者は特別な訓練を受けて必要な装備を持っているので多少条件が悪くても行動可能です)
車道に出たら、あとはひたすら頑張る。
この道路は奥多摩周遊道路で、山を越えて奥多摩湖(奥多摩町)と檜原村をつないでいます。周遊道路が出来る前の三頭山は山奥に閉ざされ、とても日帰りできる山ではなかったのですが、今では手軽に登れる山として都民に愛されています。
そういう道路なので、なんかもう、下界が海原はるかかなた。
頑張りました。結果、17:15のバスが行ってしまった10分後にバス停に着きました(前回の記事もこんな話だったので、まるで成長していない)。
次のバスは18:46。1時間半後。
更に歩きました。寒いバス停でただ座って待ってるのは寒いので、1時間半歩くことにしました。
途中で温泉(数馬の湯)に入ってもよかったんですが、歩きたかったので歩きました。巨大なコケシの横も歩きました。
ガードレールのすぐ横に黒くて大きな生き物がいて「ギャ!」と叫んだら、正体はカモシカでした。向こうもビックリしてました。
歩いて歩いて、18:44。バス停の時刻表を見ると18:55に来ると書いてあるので、ここまでにして、行動終了。
歩行距離は26.7km。日帰り登山としては、まぁまぁな距離でした。
バスがやってきたので乗車。ホッと一息、速攻で寝て起きたら武蔵五日市駅でした。バスって超良いですね!
以上、余談でした。
余談の前に『「雨降って地固まる」は、"山では"本当でした』と書いたけど、街では雨降っても地面がコンクリートやアスファルトなので、ぬかるみ自体がありません。ぬかるみが出来ること自体が、自然がある証拠なのかも。
そう考えると、たまにはぬかるんだ地面を歩くのも悪くないですね。(自然保護的には微妙かも知れないけど)
確かに雨が降ってぬかるんでいた地面は2か月で固まっていた。前より固いかと言えば、元に戻った程度の話だし、まだ足跡が残る程度に柔らかい部分もあった。流れた土もすぐには戻らない。
雨降って地固まるには時間が掛かるし、完全に元には戻らず傷跡は残るかもしれない。それでも、悪いことが起きても希望を失わず前向きに生きていくには必要な言葉なのだろう。
僕は「雨降って地固まる」を信じることにした。
なにこの、ちょっと嘘くさい締め。
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |