特集 2022年12月14日

雨降って地固まるのか、山に登って確かめてきた

「雨降って地固まる」ってことわざがあるだろう。雨が降って地面がぬかるんでも、それが乾いたらむしろぬかるむ前よりも固い地面になる。転じて、なにか悪いことが起きても解決されれば前よりも良い状態になるという意味だ。

ふむ。

では、言葉通りの「雨降って地固まる」は本当なのか?ちょうどよさそうな状況を見つけたので、ちょっと山に登ってきました。

 

あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:アマゾンで野鳥観察(デジタルリマスター)

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ある雨の日、登山をした

今年10月中旬の平日。登山に出かけたら雨が降ってました。もちろん天気予報は見てるので、雨が降るのは知ってたんですが。

雨に濡れたダイモンジソウ。ユキノシタの仲間で、ユキノシタの花は春に咲くけどダイモンジソウは秋に咲く。
IMG_4617.jpg
本当は下の花びらが左右に開いて「大」の形になるのだけど、水滴でくっついて一文字になってしまっている。

雨が降っている山は、晴れてる山よりむしろキレイ。植物の色が濃く見えます。 

ヤマホトトギスの色も濃い。

コース説明

この日に登ったのは奥多摩の御前山で標高が1405m。4月ころカタクリの花がたくさん咲くことで有名な山です。歩いたのは下の地図の赤い線。だいたい17kmでした。

スタートは上の方の緑のピンで、境橋というバス停があります。境橋へは、青梅線の奥多摩駅からバスで10分弱。

境橋から南(地図の下)へ向かって登り、御前山、南西の小河内峠を経て三頭山へ登り、檜原都民の森へ下山する予定でした。都民の森は11月いっぱいまで路線バスが走っているので帰りは楽チン、乗ってれば武蔵五日市駅まで帰れます。

途中から田んぼになった

雨は降っていたけど順調に高度を稼ぎ、御前山のメインルートに乗った途端、登山道が田んぼになっていました。

ここまでは平和な道だったんですが、この分岐から先がけっこうなぬかるみ。

雨のせいか道が大変にぬかるんでおり、多数の足跡に水が溜まっていました。秋の山ではなかなか無い田んぼぶり(春の山は雪解け水でぬかるむことが多いけど)。

真ん中を歩くのは嫌だったので、脇を歩いた。

足跡の水たまりや、真ん中だけ盛り上がった轍(わだち)などが出来ていました。 

人の足によって出来た轍。

雨の平日の御前山の山頂には誰もおらず、スルーして先に進むと、さらなる泥濘地獄が待っていました。 

東京都が整備した山頂の碑。こういうのが超山奥にも立っている。
山頂脇のベンチ横も足跡が続く。

履いている登山靴は防水透湿(水は通さず水蒸気は逃がす)なので水たまりに入っても浸水はしません。それでも泥の感触が伝わってきて「うひー」と声が漏れてしまいます。 

うひー。

場所によっては避けようもなく、仕方ないので泥の中を歩いていきました。 

こことか、もう全然避けられないので真ん中を歩いた。

その結果…。

近年稀にみる靴の汚れ。まぁ、洗えばいいので大した問題じゃないんですが。 
そうは言っても限度はあるよね…とは思った。

ぬかるみ方もいろいろあって、大きな水たまりがあったり、斜面の谷側に土の盛り上がりが出来たりしていました。

なかなかの水たまり。実は僕、水たまりを見るのが好きだったりします。良いサイズ。
谷側(写真左側)に寄っている土の盛り上がり。

ぬかるみは御前山の周辺から、南西へ向かう尾根上に点在していました。↓ここなんか、なかなかすごい。

小河内峠周辺もなかなかでした。

広い斜面全体がツルツルの赤土で覆われ、巨大滑り台になっている個所もありました。真ん中を登るのが無理過ぎたので端っこの木に掴まりながら登りました。

滑った跡がたくさん。完全なる滑り台でした…。

予定してたコースを最後まで歩くのは時間的に厳しく、最後はショートカットして3kmほど短くなりました。半日ドロドロの登山道を歩いたせいで、靴はごらんの有様。ズボンも少し汚れてしまいました。 

汚れた靴は、帰りのバスに乗る前にキレイに洗って泥を落としました。マナー!!(中山きんに君のテンションで)

雨降って地固まるのは本当か確かめたい!

そんな登山から2か月後、12月に入ってすぐの金曜日に同じコースへ出かけました。天気は晴れ。

初冬の関東は雨の日が減り、ここ数日は降っていません。もし「雨降って地固まる」が本当ならしっかり固まってるはず。

いつもありがとう、西東京バス…。
見事な快晴。雨の山もいいけど、晴天もやっぱいいね。

山はすっかり冬で、登山道には霜柱。 

カチコチでした。

木道は溶けた雪が再凍結したっぽく凍っていました。滑る。 

勢いよく歩いていると滑るので、一歩一歩慎重に。

氷や霜柱をバリバリ踏む締めながら登っていくと、問題のぬかるみエリアに着きました。

果たして固まったのか?

ぬかるんでいた道は!固まったのか!まだグチャグチャなのか!

あれから2か月!果たしてどうなったのか!

いったんCMです。

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雨降った地は、2か月で、固まってました。

おお、固い。凍ってるせいもあるかもだけど、日当たりが良い場所も締まってました。

完全に田んぼと化していた部分も、平らで固く締まっていました。聞くところによると、人の手で整地もしたのだそうです。

平ら!歩きやすい!

落ち葉が積もったせいもあるかもしれませんが、ぬかるみはすっかり姿を消し、元の歩きやすい登山道に戻っていました(ここは過去に5,6回歩いたことがあります)。

自然の回復力と、整備してくれた人達のおかげ。
靴も全然汚れなくて快適。

同じ場所で比べると一目瞭然。

ここが、
こうなった。

少し柔らかい部分もあったけど、10月に来たときとは比べ物にならない歩きやすさでした。

滑り台になっていた坂も普通に歩けます。

この、なんてことない坂がヌルヌルのツルツルだったんですよ…。

終始快適な山歩きが出来ました。「雨降って地固まる」は、山では本当でした。確かに固まってました。

気持ちのいい登山でした!
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今日はまだまだ歩くのだ

ここからは余談です。

前回の雨登山では予定コースの最後を端折ったんですが、今回は天気がよく道も締まっていて歩きやすかったため、だいたい予定通りに歩けました。予定のコース20㎞を歩けそうな気がします。

まずは腹ごしらえ。

地べたに食べ物を置くのは野蛮なので、自作の折りたたみテーブルを持って行った。

歩いていくと、葉が落ちた木の間から湖が見えました。東京都の水瓶、奥多摩湖です。

東京のみんなが飲む水が溜まっている、大きな水たまり。

いくつかの山頂といくつかの峠(大抵、山頂と山頂の間にある)を越えて三頭山に登っていくと展望台があります。森林限界を越えない樹林の山では貴重な眺望。

良い景色を見るのも登山の楽しみの一つ。

縦走(山頂を次々に踏破していくスタイル)では、これまでに歩いたコースを見られると嬉しくなるものです。ここからは御前山が見えるんですよ。

朝登ってきた御前山が見えています。

そうか、あの山の向こうから来たのか…と感慨深くなります。

メッチャ遠くから来たな、って思った。

三頭山の南側は都民の森という名前で整備されていて、半分公園みたいな雰囲気がありますが、実はしっかりと山です。一部はかなり傾斜もあり、登りごたえがあるので来年の4月以降に行ってみてください。名前の通り山頂が3つあります。

山頂に着いたのは15:40でした。疲れていて夕方になり真顔。

なぜ来年の4月なのか?まだ寒いけど、雪もそんなに積もってないし、歩こうと思えば歩けるはず?そうなんだけど、冒頭にも書いた通り、登山口までバスが来るのが11月いっぱいなのです。あれ?今日って12月じゃない?

って事に気づきましてね。登山中に。バス、来ないじゃん、って。

三頭山はかなり整備されていて、木の階段なんかもあります。

本来なら山頂から1時間ちょっとで登山口のバス停に着くんですが、更に50分車道脇を歩いて下の集落のバス停に行かなくてはいけません。しかもバスの発車時刻は17時15分。

今の時間15:40+1時間ちょっと+50分=17:50くらい。あれ?

太陽が沈んでいく。計算が合わない。

一般的に、登山は15時に下山するか宿泊地に着くように計画を立てますが、今回は(今回も?)一般的的な登山から外れた感じになってきました。良き登山者の皆さんは決して真似をせず、余裕がある登山計画を作りましょう。

(※筆者は特別な訓練を受けて必要な装備を持っているので多少条件が悪くても行動可能です)

IMG_6221.jpg
16時すぎだけど針葉樹林が暗いのでヘッドランプを点けました。

車道に出たら、あとはひたすら頑張る。

峠を攻めてる車やバイクも走っているので注意が必要。

この道路は奥多摩周遊道路で、山を越えて奥多摩湖(奥多摩町)と檜原村をつないでいます。周遊道路が出来る前の三頭山は山奥に閉ざされ、とても日帰りできる山ではなかったのですが、今では手軽に登れる山として都民に愛されています。

そういう道路なので、なんかもう、下界が海原はるかかなた。

檜原村側。ずっと下の方まで歩いて降りることになった。

頑張りました。結果、17:15のバスが行ってしまった10分後にバス停に着きました(前回の記事もこんな話だったので、まるで成長していない)。

次のバスは18:46。1時間半後。

更に歩きました。寒いバス停でただ座って待ってるのは寒いので、1時間半歩くことにしました。 

数馬の辺りで見た石碑類。真っ暗な中で見ると、雰囲気が強すぎた。

途中で温泉(数馬の湯)に入ってもよかったんですが、歩きたかったので歩きました。巨大なコケシの横も歩きました。 

僕よりデカいコケシ。

ガードレールのすぐ横に黒くて大きな生き物がいて「ギャ!」と叫んだら、正体はカモシカでした。向こうもビックリしてました。

カモシカって、一瞬クマに見えるんですよね…。

歩いて歩いて、18:44。バス停の時刻表を見ると18:55に来ると書いてあるので、ここまでにして、行動終了。

人里(へんぼり)のバス停。今回はここをゴールとしました。

歩行距離は26.7km。日帰り登山としては、まぁまぁな距離でした。

バスがやってきたので乗車。ホッと一息、速攻で寝て起きたら武蔵五日市駅でした。バスって超良いですね! 

暖かいし、スマホ充電用のコンセントあるし、西東京バス最高かよって思った。

以上、余談でした。 

ところで、街の地面ならどうなのだろう?

余談の前に『「雨降って地固まる」は、"山では"本当でした』と書いたけど、街では雨降っても地面がコンクリートやアスファルトなので、ぬかるみ自体がありません。ぬかるみが出来ること自体が、自然がある証拠なのかも。

智恵子抄で「東京には空が無い」と言われているけど、都会には本当の地面も無いのかもしれない。

そう考えると、たまにはぬかるんだ地面を歩くのも悪くないですね。(自然保護的には微妙かも知れないけど) 


雨降って地固まるを信じて生きていこうと思った

確かに雨が降ってぬかるんでいた地面は2か月で固まっていた。前より固いかと言えば、元に戻った程度の話だし、まだ足跡が残る程度に柔らかい部分もあった。流れた土もすぐには戻らない。

雨降って地固まるには時間が掛かるし、完全に元には戻らず傷跡は残るかもしれない。それでも、悪いことが起きても希望を失わず前向きに生きていくには必要な言葉なのだろう。

僕は「雨降って地固まる」を信じることにした。

 

なにこの、ちょっと嘘くさい締め。

 

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