カウントダウン状態だ
というわけで、最初やや疑問形でとらえたトルコライスも、長崎でトルコライスを食べまくっていたら、いつのまにかカツカレーよりも身近な存在になっていた。
全国にトルコライス・ブームの炎が燃え広がるのはもう時間の問題ではないかと思う。
●お店データ (一部)
・ツル茶ん/ハッスルハート(場所)
・銀嶺(場所)
※編集部注 2022.05 下記店は閉店してしまったようです
・アストリア浜町店
・グリーンバンブー
トンカツ、ピラフ、スパゲッティ。この3つを一つの皿に盛ったものを「トルコライス」という。
トルコライスは長崎名物である。
長崎名物と言えば、ちゃんぽん、カステラが有名だが、こんな名物もあるのだ。
なぜこれが長崎名物?なぜトルコ?
といろいろ謎も多いこの食べ物。
今回は長崎在住ライターという地の利を活かし、この魅力のすべてを徹底紹介したいと思う。
※2006年1月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
意味も無く迫っててすみません。
これがトルコライスである。
上の写真だとカツカレーと何も変わらないように見えるが、カツの後ろにはスパゲッティがしっかりと隠れている。
写真は、トルコライスの名店として長崎で有名な「ツル茶ん」という喫茶店のトルコライス。こちらの記事でもお世話になった店だ。
トルコライスは、「大人版お子様ランチ」などとも言われる。“今食べたいもの”を強引にひとつの皿に盛ったような感も漂う、一見無秩序にも見えるこのスタイル。これがどういうわけか、長崎ではどの洋食屋でもメニューにあるほどメジャーな存在。
トルコライスには、それを初めて見た人をもグイグイ引きこむ魔力がある。B級グルメのA(エース)。って、一体AなのかBなのか?BなのかAなのか、AなのかBなのか…… こんなフレーズが頭の中でグルグルと呪文のように無限ループを続け、気がつくと無意識のうちにトルコライスをオーダーしてしまう恐るべき技だ。
ツル茶ん/ハッスルハートのトルコライスはご飯部分がバターライス+カレーというパターンだったが、一般的にはこの部分はピラフが多い。ピラフはドライカレーになるパターンもあるし、炒飯になるパターンもある。サフランライスというパターンもある。
スパゲッティ部分はナポリタンスタイルが一般的だが、これまた具あり・具なし、バターだけであっさり味付けしたもの、逆にケチャップたっぷりの濃厚タイプなどさまざまなバリエーションがある。
カツ部分は最もバリエーション豊かな部分だ。薄いトンカツが基本だが、ハンバーグだったり、焼肉だったり、フライだったりいろんな変化が見られる。すべてトルコライスだ。
以下、その豊かなバリエーションを写真で追ってみよう。
写真の数を見てもらってもわかるように、実は私はトルコライスが大好きで、かなりあちこちのトルコライスを食べ歩いている。
が、私などが足元にも及ばないくらい、トルコライスに闘志を燃やしている男がいる。次のページでは彼にスポットを当ててみよう。
こ、このうまそうな写真、どうだろうか?
こちらはトルコライス専門ブログ「トルコライス マニアックス」を製作(趣味で)している神崎貴彦さん撮影によるもの。
本人曰く、 「日本で一番トルコライスを食べた男を目指してます」 とのこと。
目指すも何も、もう既に一番じゃないか?という疑問もあるが、なんというか、いろいろな意味で取り組み方が本気な点がすごい。
写真は私みたいに1、2枚撮って終わりでなく、各パーツごとに念入りに撮影する。
彼がどんな風にトルコライスを食べ撮影しているか、同行して見てみることにしよう。
写真上のカメラを構えているのが神崎さん。今はお店の外観を撮影している。背景がちょっと変だが、気にしないでほしい。
この日訪れた店は、長崎歴史文化博物館の中にあるレストラン。この博物館はかつての長崎奉行所を再現しているのがウリ。一瞬入るのをためらってしまうほどの仰々しい造りとなっているが、無料で中庭まで入れる。
上が神崎さんの撮影ポーズ。
片手でカメラを、片手でフォークを手に撮影。カメラメーカーは彼のために左手でシャッターを押しやすい一眼レフのカメラを開発するべきだと思う。
私が半分以上食べた段階でも彼はまだ撮っていた。食べ終わった後、撮影画像を見せてもらって驚いた。なんと、95枚も撮っていたのだ。それも同じトルコライスの画像ばかり…。
「照明が暗い店内での撮影の場合、ピントを外したりブレたりしてることがあるので、念のためいつも多めに撮ってます。」
とのことだが、それにしても…
カツをフォークで刺した同じような写真が、こんなにたくさん並んでいるのだ。
↓
まるで間違い探しのようだ。連写の使い方を間違えてる気がする。いやむしろこれが本来の連写の使い方なのだろうか。
(よく見ると微妙にカツの角度が変化しているのがわかる)
スパゲッティだって、まるで人物撮影のようにいろんなポーズやしぐさを写し撮る神崎さん。
こうして撮ったさまざまなカットの中から、最も魅力的に写った1枚をブログに掲載している。トルコライスに対する、並々ならぬ愛情が感じられるではないか。
恐れ入りました。
トルコライスを出す店は長崎全域に星の数ほどあるのだが、その中でも特に絶大なる支持を得ていた店が最近閉店してしまった。
アストリア・新大工店。
どうだろう、この外観。
熊本にある温泉宿に泊まった時、そこのご主人が
「昔ながらの落ち着く雰囲気を出す為に、わざと屋根にコケを生やしたり、通路にニワトリを放したりしてるんですよ。」
とおっしゃっていたが、アストリア新大工店もまた
「ひょっとして巧みな演出か!?」
と思わせる完璧なフォルムだった。
店内はこんな感じ。店の端に立って撮った写真なので、これで全部。客席も狭いが、おばちゃん達の作業スペースも驚くほど狭い。この狭い店内にて、 実にシステマティックにトルコライスが作られていた。
一方でスパゲッティを盛り、もう一方で今揚げたカツを盛る。客の目の前で行われるこの巧みなコンビネーションに、思わずニヤリとなる。
そして出てくるトルコライスがこちら。↓
見てのとおり、かなりズバッと来る感じのコテコテのトルコライス。
玉子で閉じた薄めのカツ。
遠慮なくかけられたソースとケチャップ。
しっかりと味付けされたスパゲッティ・ナポリタン、具なし。
サラダに添えられた赤いハム。
けして上品さはないのだが、
「俺、本当はこういうのが食べたかったんだ」
と気付かされるような、そんな味だ。
こんな名店が、昨年12月に閉店してしまった。
「体力の限界!」
というのが閉店理由だそうだ。千代の富士の引退を思い出した。
アストリアには浜町店というのもあるので、そちらでまだ食べることができます。が、ハムが乗ってないなど、ディテールが微妙に異なる。 (このハムがまたB級感を醸し出していて好きだったのだが。。) また、店内の雰囲気はまったく異なり、浜町店ではテーブルが並ぶいわゆる普通の(食べやすい)店内となっています。 |
もうひとつ、すごい名店があった。
訪れた人誰もが大絶賛する店。それがこちら。
↓
一見、田舎の定食屋のようなルックス。元々寿司屋だった店舗を改造して作られたそうで、店内はカウンターしかない。カウンターしかないが、超本格的な洋食(エスカルゴとか)が出てくる不思議なお店。ここでは3種類のトルコライスがメニューにあったがいずれも絶品で、私の周りにも大勢のファンがいた。
が、なんと昨年、突如火事で消失してしまった。
元々ここのマスターは神戸で店を構えていたのが、阪神大震災で被害を受け長崎にやってきたという。
それが今度は火事とは、なんという運命だろうか。
そのグリーンバンブーが場所を変えリニューアル・オープンすることになった。これは行かねばなるまい。
前述のトルコライス マニアックスの神崎さんは「トルコライス探検隊」なるコミュニティも作っており、時々トルコライス食べ歩きツアーを行っている。
その探検隊が、トルコライスの名店であるグリーンバンブー復活の日に行かないわけがない。実は私もそのメンバーなので、一緒にリニューアルオープン初日に行ってきた。
この日は平日の昼間だというのに9人も集まった。日本もなかなか自由な国ではないか。
新店舗は元ラーメン屋だったところを居抜きで使っており、やっぱりカウンターメインなのが昔からのファンとしては嬉しい。
注文したのはマスターの気に入った肉が手に入らない日は作らないというトルコステーキ。9人全員で同じものを頼んだ。
この肉が!この肉が!
とろけそうなほど柔らかいのだ。
上にかかってるソース、バターライスとのマッチングも絶妙。
トルコステーキとは、カツの代わりにステーキが乗ったバージョンである。もうだんだんトルコライスの定義がわからなくなったりもしてるが、まあいいか。
探検隊メンバーも皆、久しぶりに食べるトルコステーキの味に舌鼓を打っていた。
トルコライスに、もはやトルコという国の面影はどこにもない。いや、最初からまったくない。そもそもトルコは国民のほとんどがイスラム教徒の国で、豚肉は絶対に食べないというから、いわゆるトンカツがドーンと乗ったライスなぞあり得ないのだ。
そのトルコライスが、さらにどんどん進化を続けるもんだから、ますます話はややこしい。ここグリーンバンブーでは、以下のようなトルコライスも出している。
これはオリジナリティあり過ぎだろう!
と思うが、これがまた絶妙にうまいのだ。
「どうしてこういうスタイルになったんですか?」
と、ずっと前に聞いたことがあった。が、それに対する回答は、たしか
「野菜がたくさん食べれていいでしょう。」
だった。
それは私が期待したのと違う方向性の答えだが、そんなことはもうどうでもいいや。うまいし。
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