ドーラン塗って、眉毛をつぶして、カラーコンタクトまで入れて。結局、マネキンっぽくはならなかった。元々の顔の造り？ みたいな所から間違っているんだと思う。僕の顔はマネキン向きじゃないのだ。
でも、僕は満足だ。
マネキンになれなくたって良いじゃないか。僕は人なんだ。そうだ、人なんだ。人として人と出会い、人として人に迷い、人として人に傷ついたりしている。 人として人と別れたりするけど、それでも人しか愛せないのである。
マネキンになりきって
しかし、この顔とこのカツラで夜の渋谷に繰り出す勇気はない。なるべく顔が隠れるように、コートのフードを深めに被る事にした。
ヒクソングレーシーの入場シーンをイメージしている。
このヒクソングレーシー作戦は大成功だった。
誰からも笑われることなく、目的地まで到達する事が出来た。もしかしたら後ろ指を指されていたのかもしれないが、こっちが笑われている事に気付かなければ問題ない。
このお洒落なマネキンたちに混ざって違和感がなければ、僕のマネキン化計画は成功と言える。
お手本のマネキンを確認する。
よし、このお洒落マネキンたちに紛れ込んでみよう。
事前に、お手本のマネキンと同じ服を購入していたのだ。
「ショーウインドウのマネキンが着ているのと同じ物を」と頼み、同じTシャツと同じネルシャツをゲットしたのである。
それを考慮した上で、もう一度見ていただきたい。
どうだろうか？
まだマネキンには見えない。
そういう人は、薄目でぼんやりと見ていただきたい。
まだ見えない場合は、モニターから3メートルくらい離れて見てください。
3メートル離れてもマネキンに見えない。
そんなあなたは正しいと思います。
だって、見えないもの。
