特集 2023年6月5日

スクーターでバンコク−チェンマイ700キロを2日で走ってきた・バイクで行くタイ後編

バンコク―チェンマイ行き2日目

さて、2日目である、今日はカムペーンペットから最終目的地のチェンマイまで一気に行く。その距離、341キロ、所要時間は4時間ほどとでている。

若干遅めの出発だったが、順調に国道1号線を北上する。

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こんな感じの風景が続きます
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カフェで休憩するぞ

出発した頃は天気がよかったものの、走るごとに雲ゆきがあやしくなり、ついには雨が降ってきた。
カッパを着込んでいるので大丈夫ではあるけれど、荷物やカメラが濡れるのは忍びないので、途中カフェに立ち寄り、雨が止むのをまった。

タイの雨は暫く待てば止むことが多い。 

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カフェにたちよる

アイスティーを注文して、ぼんやり雨が止むのをまっていたところ、ぼくよりすこし年上と思しき白人男性が「表に止めているバイクは君のかい?」と話しかけてきた。英語だったのでよく分からなかったが、ぼくの乏しい英語力で理解するとたぶん、そういう質問だったと思う。イエス、バット、レンタルモーターサイクル。と、適当な英語で答えたが、なんとか通じた。

「僕はこれからチェンマイまで行くんだが、君はどこにいくのか?」と聞いてきたので「ぼくもチェンマイまで行くんですよ!」とすこし話が盛り上がった。

彼はイングランドからやってきて、タイをバイクでツーリングしているという。ビックスクーターに乗っており、僕みたいな思いつきで一番安いレンタルバイクを借りて長距離ツーリングしちゃうやつとは違い、ちゃんとした「旅行」をしているといった感じだった。

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イギリス人の彼のバイク。PCXでございますね

 

雨もやんで、アイスティーも飲みきったので、僕は彼に挨拶して先に店を出た。

さすが、外国人は気軽に話しかけてくるな、精神構造がだいぶん違うな〜などと感心しつつ「レンタルモーターサイクル」じゃなくて「レントモーターサイクル」と言うべきだったのかな〜などと、しょうもないことを考えながら軽快にバイクを飛ばしていたところ、ヤバいことに気づいた。

ガソリンが底を尽きそうになっているのだ。

こういう場合、スピードを出したほうがいいのか、エンジン止めてガソリン温存したほうがいいのか、初心者なのでよくわからない。どうしたものか。

しかし、気づいたころにはもう遅かった。だだっ広い農地が一面にひろがる場所でバイクのエンジンが止まってしまった。

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バイク止まった……

一瞬、世界が無音になった。

いつかはやらかすだろうなとは思っていたものの、よりにもよって異国の地でガス欠か……グーグルマップで検索すると、次のガソリンスタンドまで3キロほどあるという。

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ガソリンメーターがEを指したままうんともすんともいわなくなったバイク

3キロ。歩いていけない距離でもないのが微妙だ。

雨はすっかり上がって、刺すような熱い日差しが照りつける道を、100キロぐらいあるバイクをえっちらおっちら押して行かねばならない。

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初歩的なミスですな〜

仕方がない、押していくしかねえと、覚悟を決めバイクをしばらく押してあるく。

200メートルほど押して歩いていると、1台のバイクが路肩で停止しているのが見えた。よく見ると、さっきカフェで声をかけてくれたイギリス人だった。

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よーく見ると、木の下にバイクが止まっている。イギリスからきた彼だ!

彼は「ヘイ! どうしたんだ!」と声をかけてくれた。

異国の、しかも人気のない片田舎で、ガス欠になり心細かったぼくは、状況を聞いてくれただけでも嬉しかった。「あ〜、ガス、エンプティー(笑い)(バイクを押すジェスチャーで)ゴートゥーザガスステーション」とバツが悪いのがなるべく伝わるように言った。

すると、彼はしばらく考えた後「しょうがねえな……ガソリンスタンドまで乗っていくか?」と言ってくれた。

なんなんだ、このジェントルマンは。おれの窮地を救ってくれるために天が遣わしてくれたのか……。せっかくの好意なので、甘えさせてもらうことにして、彼のPCXの後ろに乗り込んだ。

バイクで3キロなんてすぐだ。

ガソリンスタンドに着くと、ガス欠になったのでガソリンをちょっとだけ売ってくれとお願いしたら、スタンドのおばちゃんが、ペットボトルにガソリンを入れてくれた。

タイのガソリンは、色が緑色なのが印象的だった。

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ガス欠なんて、おっちょこちょいだな! ハハハ!(と言っているような気がした)

ぼくはここで、彼の名前を聞いてないことに気づいた。

「アイム、マサ……ワッツユアネーム」

「フィリップだよ!」

「おー、フィリップ。ベリー・ベリーサンキュー!」と、頭の悪そうな英語で感謝を伝えると、にっこり笑ってくれた。

ガソリンを手に入れると、ガス欠のバイクが置いてある場所までまたフィリップのPCXの後ろに乗って戻った。スクーターにガソリンを入れるとバイクは問題なく動き始めてくれた。

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スマホをとりだし、翻訳アプリでアドバイスをくれた

フィリップは、スマホを取り出し、翻訳アプリで「ガソリンメーターが半分以下になったらもうそこで給油した方がいい」と、アドバイスをくれた。

そう、Eの下に行くぐらいまで「まだいける」とか粘ったりするから、こうなるんだよな。

フィリップはそういうと、サムズアップしてツーっと颯爽に去っていった。

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そしてチェンマイに到着 

チェンマイは、タイ北部の盆地にあり、タイ南部の平野部とは、そんなに高い山ではないものの、山によって区切られている。そのため、国道に山越え区間がある。

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あれー、怪しいぞ

フィリップに助けてもらった場所はものすごく晴れていたけれど、山に近づくにつれ、雲ゆきがあやしくなり、ついに雨が降ってきた。

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雨宿りできない場所でこの雨はきつい

いままで、パーキングエリアなどにうまいこと逃げて雨を避けていたのが、ついに逃げられない場所できつい雨が降ってきた。

カッパを着込み、頑張って峠越えをしたのだが、カメラが壊れそうなので、この区間は動画の記録を残していない。

次の動画記録は、峠を越えて雨が止み、チェンマイの郊外に入った所からスタートしていた。

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タイの天気はいつもこうだ
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チェンマイ郊外の環状道路に入った
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だんだん町がデカくなる
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チェンマイのお堀だ

チェンマイは、空から見ると、四角い堀に囲まれた旧市街と、その外側に発展した新市街があるということは、グーグルマップで事前に予習していたわけだけど、実際に堀を渡ると、これがあの! と、やっぱりなってしまった。

もう、ゴールまではすぐそこだ……。

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迷いつつ遂に到着

目的地のホテルは旧市街の入り組んだ路地の中にあった。

2日目は移動距離359キロメートル。所要時間7時間15分。

1日目と合わせると、移動距離は747キロメートル、バイクの移動のみの所要時間は13時間45分だった。

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無表情だが、やりきったという気持ちです

⏩ バイクごと寝台列車に乗って帰る

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