特集 2024年1月13日

沖縄の餅「ナントゥ」との距離を縮めたい

昨年大晦日に放送されたテレビ東京のドラマ『孤独のグルメ』では沖縄が舞台で、主人公の井之頭五郎が正月用の「餅」を渡されるシーンがあった。
その「餅」がチラッと映ったのだが、なにやらこんにゃくのような黒っぽくて白ごまがのった四角い「餅」に違和感を覚えた視聴者も多かったのではないだろうか。ドラマ内では明確に言及されてはいなかったが、時期的にもあれはおそらくナントゥだと思われる。

ナントゥはもともと沖縄で正月に食べられた餅菓子で今では年間を通じて購入できるのだが、おやつにしては大きいし、黒くて子どもウケしないし、目にはするものの手に取ることはなかった。距離感としては話したことのないクラスメイトぐらい。でもテレビで全国区デビューしてしまったアイツといつまでもこれではいけない。そろそろ距離を縮めていこうと思う。

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正月に食べるナントゥ餅

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まずはそのナントゥを見てほしい。お正月に食べる餅と言えばお雑煮に入ったお餅や鏡餅など白いお餅を想像しがちだが、ナントゥの姿はなかなかのインパクトがある佇まいである。

これはいったい何なのか。戦前の沖縄首里の様子に触れたエッセイスト、古波蔵保好さんの『料理沖縄物語』という本から引用したいと思う。

沖縄には鏡餅を供える風習がなく、切り餅もなかった。当然雑煮で新年を祝うということもなく、正月に食べる餅としては「なっと味噌」だた一つである。少量の味噌と砂糖で味つけされた餅だ。

この「なっと味噌」がナントゥのことである。

モチ米を挽いて、風味を与えるための味噌を混ぜ、甘みをつける必要で砂糖を加えるのだが、ほかに「ふぃふぁち」という香料を入れると、かすかな辛みが生じてより沖縄的な餅菓子となる中略)以上の材料を取り合わせて、厚さ2センチ、海苔半帖ほどの大きさにのばす。伸ばした表面に、落花生を花びらに見立てて二輪の花を散りばめ、飾りをつけたうえで「さんにん」という生姜に似た植物の葉にのせ、蒸し上げるという段取りだ。

 沖縄では餅といえば、もち米を粉にしたもち粉を水で練って蒸したものがほとんどである。「ふぃふぁち」はヒハツという香辛料(八重山ではそばにかける薬味として使われている)、「さんにん」は月桃という植物で独特の香りがある草のこと。まとめればナントゥは味噌と砂糖を入れて蒸し上げた餅のことである。ちなみに「ナントゥ」は「年頭」の意味だそうで、まさに年始のお餅という名前となっている。

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余談だが、『料理沖縄物語』では那覇市にある辻という歓楽街の遊女たちが正月前にナントゥを持って挨拶に来るという話にもさらりと触れられており、当時は修羅場にならなかったのだろうか…などと余計な心配をしてしまう。

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そんなお正月の餅ナントゥだが、今では年間を通して沖縄菓子の専門店やスーパーで販売されている(お正月時期限定で製造販売するメーカーも)。しかし身のまわりで日常的にナントゥを食べるという人はおらず、お正月時期でも「正月といえばナントゥ!」といった雰囲気は特に感じられない。

それでも販売され続けているということは、知らないところでものすごい需要があるのかもしれない。 

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食べ比べてみよう

ナントゥについて説明しているうちにちょっとしんみりしてしまった。本題である。

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ナントゥとの距離を縮めるためにいろんなナントゥを買ってきたので食べ比べてみたい。

 

「餅の店 やまや」
のナントゥ

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まずは那覇の牧志公設市場にある「餅の店 やまや」という老舗餅屋のナントゥだ。やまやは旧暦12月8日に食べるムーチーという餅もおいしいらしく、ムーチーの日にはお店の前に長蛇の列ができている。

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もちの表面には『料理沖縄物語』にあったようにピーナッツが花のように配されている。

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ナントゥの味を表現するのが難しいのだが、個人的には「ゆべし」が近いような気がする。結構しっかりと味噌の風味があって、甘塩っぱい。あとピーナッツがシャリシャリした食感でなかなか新鮮である。

松原製菓のナントゥ

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続いては同じく公設市場にお店がある松原製菓のナントゥ。こちらもピーナッツがつけられていて食感のアクセントがすごい。お店の札には「味噌・砂糖・生姜」を練り込んだと書かれていたのだが、あんまり生姜の味はしなかった。

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裏にくっついた月桃の葉が取りにくくて困る。

「上間モチ店」
のナントゥ

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こちらはうるま市のファーマーズマーケットで売っていた「上間モチ店」というお店が作っているナントゥ。沖縄は餅をそんなに食べない文化なのにお供え物には餅を供えたりするので現役の餅屋が多い気がする。

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先の二店舗に比べて味はあっさり目。ただ、めちゃめちゃ分厚くてコンニャクみたいなプルプル感だった。お腹が膨れる。

「イナミネもち食品」
のナントゥ

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「イナミネもち食品」のナントゥ。イナミネもち屋は県内のスーパーに売り場があり、ナントゥの他にもアガラサー(蒸しパン)などの沖縄菓子を販売している。

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こちらも分厚くてプルプル感がすごい。味はあっさり目で俺は餅を食べているぞ!という感じがすごい。…だんだんナントゥが分からなくなってきた。

くんじゃんナントゥ

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最後は国頭村で作っているらしい「くんじゃんナントゥ」。

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食べてちょっとびっくりしたのだが、これは(多分)味噌が使われておらず、黒糖と生姜の味がすごい。ナントゥ界のニューウェーブなのか、それとも地域によってレシピが異なっているのかは不明だがちょっと毛色が異なるナントゥだった。 


ナントゥが海を渡る日は来るのか

ということで今回は沖縄のナントゥについて紹介したのだが、沖縄そばをはじめタコライスやサーターアンダギー、ちんすこうなど数々の沖縄の食べ物が海を越えて沖縄県外に進出する中、ナントゥには残念ながらその気配はない。

だからこそ今後は沖縄観光に来るひとつの目的として、「ナントゥを食べる」も入れてみてもいいのではないだろうか。地味ではあるが、ハマる人にはハマる味わいだと思う。
それでナントゥかお願い!(どうしても言いたかっただけである)

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