「置くとPASS」をもって街に出よう
ちょうど遠出をする予定があったので、メンダコを連れて行くことに。
ツーショットだ。
いざ、改札へ。
「出番ですよ!」
遠いところを見ているようなメンダコの目を意識して作ったのに、こうして引っ張り出されているところは眠そうにしているだけにも見える。労働者が眠い目を擦りながら通勤する時、彼もムニャムニャ言いながらICカードを運んでいるのだ。
ここに
ぺトッと置くと
PASS!
痛快。
ただ改札を通るだけのことが、パスケースが変わっただけでこんなにときめいて感じられるなんて、工夫次第で人生はまだまだ楽しくなるんじゃないかと希望が湧いてくるから素晴らしいじゃないか。
最初こそ人前でこれを使うことに気恥ずかしさもあったけれど、何度か繰り返すうちに慣れた。慣れたというか、むしろ見せびらかしたい気分にさえなってきた。通勤客も駅員もインバウンドの外国人も、みんな私の最高に可愛いパスケースを見てくれ!
ごめん、新幹線はICカードじゃなくて切符で乗るんだ。
外を見る。新幹線に乗っている間も、かわいいものをそばに置いておくと心が和む。
後ろの袋部分には切符を挟むことができると判明。紛失防止によいな。
そして、今夜泊まるビジネスホテルに着いた。
カードキーをタッチして解錠するタイプのドアだ!
さっそく彼の出番だ。
置くとー
Pass!
まるで「開けゴマ」的な呪文のようだ。いずれにせよカードをタッチするだけのことが楽しくなるのはありがたい。タッチするのが楽しすぎて、無駄に自販機でジュースを買ったりしてしまわないよう気をつけたいと思う。
メンダコが伝わるか不安だったけれど
メンダコと聞いて「ああ、あれね」と思ってくれる人がどのくらいいるかが未知数で、それが不安だったけれど、どうやらグミのモチーフになるくらいには浸透しているらしい。「流氷の天使」ならぬ「深海のアイドル」であると。
メンダコパスケース「置くとPASS」、嵩張るのが難点だがひょっとして流行の最先端アイテムになるポテンシャルが……?
こちらは海水スポンジ味ではなく、ピーチソーダ味です。
さて、ここからは完全に後日談なのだけれど、製作と執筆を終わらせて原稿チェックを待つばかりとなったとき、林さんから驚きの事実が告げられた。
林さん「置くとパス、もうあるよ」
こーだい「え!?」
ドッペルゲンガーだ!死んじゃう!(企画が)
ただ、幸い向こうはパスケースではなく合格祈願のお守りのようだった。ひとまず安心。しかし「置くとパス」を私より先に思いついた人がいたとは。その、どこかの誰かに、親近感と軽い嫉妬を覚えたのだった。