デジタルリマスター 2022年6月21日

伊勢崎は『ヤキマンの町』らしい(デジタルリマスター)

「焼きまんじゅう」。その名のとおり「まんじゅうを焼いたもの」とお思いだろうが、私たち群馬県人にとってそれは特別な意味を持つ。

これこそ、ちまたでいうところの「地方B級グルメ」の名にふさわしい食べ物ではないだろうか。

そんな群馬県人の心に(だけ?)響く焼きまんじゅう。その焼きまんじゅうを愛好会を作ったり祭りにしたりして、堂々「ヤキマンの町」と名乗る、群馬県伊勢崎市。その町を訪ねて、口の周りを甘味噌ダレまみれにしてきました。

2006年3月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

前の記事:太田胃散でカルメ焼きを作る(デジタルリマスター)

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他県人よ、これが「焼きまんじゅう」だ!

どうだ、こういうビジュアルなのだ。五平餅とかの感覚に近いかもしれない。
江戸時代から親しまれてきた、群馬の数ある粉食文化の一端を担う食べ物。それが焼きまんじゅう。

以下、基本的特徴を箇条書きにすると、

・3個ないし4個が串にささっている。
・まんじゅうは、素のまんじゅうを蒸したもの。
・甘ーく味付けした味噌ダレを付けながら焼く。
・冷めるとすごく固くなる。
・味噌ダレなのに、なんとアンコ入りもある。

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関東らしい、味の濃そうな見た目ですな。
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焼くのはほんとに素まんじゅう。

昔は実家でも、母がよく近所の焼きまんじゅう屋で買って来てよく食べていた。正直、私はそこまでは焼きまんじゅうフリークではなかった(そんなこと言うと以後の記事が書きづらい気もするが、まあそれは置いといて)。焼きたてのを1個分けてもらってほくほく食べるとうまかった、という記憶はある。

本当に、どこにでもある、普段着の食べ物だと思っていた。が、上京して周囲に「焼きまんじゅう」の話をしても、通じたことはただの1度もなかった。「何それ」で終わった。

さすが免許取得率全国一

自分にとっては、新たに「焼きまんじゅう」発見の旅に出る、という気分である。

浅草から急行りょうもう号で1時間20分、太田で普通列車に乗り換え25分。伊勢崎駅からは、高校時代からの友人でもあり、伊勢崎に勤めるKさんに車での道案内をお願いする。他、「焼きまんじゅう?知らん」という他県人のI氏に取材同行してもらい、ぜひ味の感想など聞いてみることにしよう。

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関東平野の果て。伊勢崎市内を走る。
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曇っているのがまた群馬らしい。

ちなみに上の写真のキャプションは、上京してからこっちの友人が言っていた「群馬の印象」だ。「群馬っていつも曇り、って感じがする」と。

私が言うのはいいが、他県人には言われたくない。この気持ち、わかるかい?

それにしても、Kさんに車出してもらって本当によかった。事前にインターネットで店の場所など確認していたのだが、いかんせんここは群馬だ。広い。店と店の間がそうとう離れている。車移動が基本の町だ。てくてく「食べ歩き」にはちょっとハードルが高い。

車を走らせていると、ぽつぽつと「焼きまんじゅう」の看板が目に飛び込んでくる。

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たこ焼き・うどんなどにナチュラルに混じって。
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ここは「名物」を意識。看板の形状も、まんじゅう。
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駄菓子屋的な店も普通に焼いてます。
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これはパチンコ屋、本文と関係なし。地方のパチンコ屋は「?!」と思わず振り返りたい造形ばかりだ。

ちなみに、Kさんに「伊勢崎は焼きまんじゅうの町なんだって!」と聞いたが、「そうなん?!へぇ・・・」という答えが返ってきた。

この取材、大丈夫か。

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まんじゅう屋、その名も……

Kさんのよく行くというお店に寄ってみることにした。その名も……

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大甘堂(だいかんどう)さん。

実に堂々としているネーミング、大甘堂。しかしノレンには堂々と「焼まんじゅう」とだけ書いてある。

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入店。忙しく焼き上げ中、快く撮影に応じていただく。
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まんじゅう串より大きな刷毛。

堂々としているのはメニューもだ。お店で出しているものは以下、4種のみ。メニューの少ない店って、すごく惹かれます。

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す饅頭は、焼く前の状態のもの。
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お茶をいただきつつ待つ。

以後まわるお店も、だいたいメニューはこんな感じ。そして多くの場合、お店の中で食べていける。そしてだいたいが、お茶はセルフサービスだ。

今後の腹の調子を考え(何せ焼きまんじゅうだけを食べ続けるので)、まず普通の何も入ってない焼きまんじゅうと、あん入りを1串ずつだけ頼んでみた。

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こんな感じです。

ここで地元民らしい、細かいことを申したい。自分の地元桐生で食べていた焼まんじゅうの串は、確か細くて断面が丸い串だったと思う。なので、串のまま食べようとすると、くるくるまわっちゃってた、ような気がする。

こちらでは平たいしっかりとした串。そして、和菓子に使う竹フォークを巨大にした、ようなものがついてくる。これで切り離して食べることもできるのだ。

焼きたては香ばしく、「ああ、私は今、小麦粉のまんじゅうを味噌ダレで付け焼きしたものを食べてるんだなあ」という思いがふつふつと沸いてくる。

……ってそのまんまじゃないか?と思われるかもしれないが、そういう無我のうまさもあると思う。あるのだ。

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隣に地元の子が座り、店内は満席となった。「よく来るの?」と聞いたら、このお店のお孫さんでした。照れる一同。
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平日の午後、ひっきりなしにお客様。

あん入りというのは桐生では食べたことがなかった。「あん~?味噌ダレにぃ~?」と初めはキワモノかのように躊躇したのだが(失礼!)、これが意外と、意外と合うんだな、味噌の焦げに。あっ!あん入り断面図はここでは写真撮り忘れた!よって次の店で!

大甘堂
伊勢崎市曲輪町36-5
月曜休
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2件目行きます!

「もう一軒、職場の子が言ってたお店があってねぇー」と、連れてってもらったのが「堀田饅頭店」さん。ここも、「饅頭屋」と書いてあれば県外の人なら「普通の饅頭屋か」と思うところだが、でかい看板のとおり、「焼きまんじゅう」のみで勝負の店である。

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ああ堂々。
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このお店も余裕の駐車スペースあり。
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落ち着くお店です。 遠方からもわざわざお客さんが来てました。
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焼かれるのを待つ素まんじゅう。

同行のI氏はすでに 「焼きまんじゅう、けっこうはまりそうだ・・・」 と、ほぼ絶賛状態。恐る恐る連れて行ったわけだが、そうか、受け入れてもらえたか。中でもアンコ入りが気に入ったようで、全員一致であん入りを1串頼んだ。

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このテカリ具合。美少女キャラのお目々のようだ。

外はカリッと、中は下の写真のとおり、ほんとにアンコ詰まってます!味噌ダレにアンコ!でもこれがけっこういいんだいねー!(精一杯の群馬弁)

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このあとのお茶がうまい。

お茶といえば、焼きまんじゅうには玄米茶より緑茶があう、と思う。それも濃いのが。それだけ味にいろいろインパクトがある、ということでもあるわけだな。

堀田饅頭店
※編集部注 2022年6月:閉店したようです

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3件目も大盛況、そして愛好会元締め氏にお会いする

さて、焼きまんじゅうめぐりも佳境に入ってまいりました。というのも、今度は日を改め、別件で帰省した折りにまたKさん(とその子供)にお付き合い願い、「忠治茶屋本舗」にお邪魔してお話を聞く、という気合の入れようだ。自分でもこの情熱がよくわからない。

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どこから見ても焼きまんじゅう屋さん。
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いかにも茶屋という風情。ノレンにはダブルで「やきまんじゅう」。
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道路の反対側にも焼まんじゅうノボリ。

取材は2時から、ということになっていたが、それを大変恐縮に思うくらい、ひっきりなしにお客さんが来ていて、めいめい頼んだ串が焼かれるのを待っていた。

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囲炉裏のまわりで食べたり待ってたり。
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焼いてないまんじゅうは売り切れ。

普通の素の串2本、あん入り串1本を注文。

来ました。このシズル感はどうだ。どーん!

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でかいのがあん入り。直径10cmくらいある。
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お茶はやっぱりセルフで。
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パカスカ食べるKさん親子。

素の焼きまんじゅうが好き、というKさんの娘(小3)は、1本半ペロッといってしまった。私はあん入りを巨大竹フォークで割って、切り口をしげしげ眺める。

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ピントも甘くてすいません。

もともとそれほど焼きまんじゅうに思い入れのなかった自分だが、このあん入りのは、「甘みやタレに埋もれたい!」というときには是非食べに帰りたい、と思った。皆さんも、「味噌ダレ+アンコ」という取り合わせ、だまされたと思って食べに来んさい、焼きたてが一番だでの (これ群馬弁じゃないけど)。

と、そこに、「いせさき焼きまんじゅう愛好会」の、ここ忠治茶屋代表、櫻場さんが現れた。

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これを見たくて来たんです

実は、以前インターネットで地元情報など探しているとき、「上州焼饅祭(じょうしゅうやきまんまつり)」という記事が目に留まったのだった。でかい焼きまんじゅうを神社に奉納して焼く、という祭。見てみたい!と思っていたのだが、すでに終わってた。毎年1月11日の、初市&鏡開きの日に行なわれていたのだ。悔しい。でかいものを作る、って、それだけでおかしいじゃないか。

というわけで、話を聞き、写真だけでも見せてもらいに、事務所にお邪魔しました(以下の写真は、櫻場さんにお借りしたものです)。

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巫女さん(ミスひまわり)登場。
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素まんじゅうをまずお祓い。奥に4つ白いものが並んでいるのがおわかりになるだろうか。
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年男・年女が、まんじゅうに祈りを込めて1字ずつ入魂。

このまんじゅうは、普通の焼きまんじゅうの300倍、直径55cm。それを3mの串に刺す。

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串に刺していらっしゃるのが櫻場さん。

そこに、巫女さん(ミスひまわり)がタレを塗り、炭火で焼いていく。ひっくり返すのがすごく大変だ。

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うーん、でかい。塗っている道具は・・・普通の竹ホウキでしょうか。
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うーん、焼いてる焼いてる。

そして焼きあがったら、包丁を使わず手でちぎって、集まった人たちに配るのだ。このお祭を神社に奉納、ということになる。りっぱな神事だ。

と思ったら、このお祭、第1回目は平成15年にやったばかり。なんだろう、この、いかにも江戸時代あたりから続いてそうな雰囲気。そこをお尋ねすると、

「まあ、回数はもう関係ないわけですよ。でーっかいまんじゅう作っちゃって、みんなでまじめに神事としてやっちゃって、楽しむ。みんなでそうやって遊んで楽しいこと増やせばね、町を好きになる人も増えるんじゃないかな、って、いろいろやってるんですよ」

うん、わかる気がする。例えば自治体の主導で、とか、イベントプランナーに頼んで、というやり方もそりゃあるんだけど、肝心の本人たち、土地の人たち自身が楽しまないと、そのときは良くても、その後続いていかない気がする。

実際、上記の神事のときも、お堂の中でのお祓い中は外で待ってるお客さんに内容がわからないのでは、ということで、拡声器で実況しようか、という意見が出たが、櫻場さんはそれを制したそうだ。「見えなくたっていいじゃないか。神事なんだし、待ってればいいじゃない」

なかなか言えることじゃないと思う。

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新潟の山古志村への慰問(場所は長岡の仮設住宅)も、住民の方に実際に焼きを体験してもらった。

そもそも、群馬県内には前橋や館林を始めとしていたるところに焼きまんじゅう屋はあるわけだが、伊勢崎が一番お店の件数が多いそうだ。

愛好会も200人を超えた。まだまだ埋もれた名物が町にはある、それでばかばかしいことや他から見たらつまらないようなことでも、まじめにやって、町を楽しくしていければ、と言う。なんだか、デイリーポータルZのことと重なる部分もあるような気がして、「そうだよなあ、自分の楽しいことをまじめにやっていこう!」と、単純に自分のことにも感化されて帰って来ました。

忠治茶屋本舗
伊勢崎市上蓮町657
0270-32-0124 火曜休


櫻場さんに聞いたところ、伊勢崎市内で生産される焼きまんじゅうの量は、推定1日2万串ではないかとのこと。それが1日ですっかり売り切れる。

そしてたぶん、県外での消費はほぼない(言い忘れたけどこの辺の理由は、焼き立てがやはりうまいのと、ナマのままでもほぼ日持ちがせず、遠方への配送に向かないことによるらしい)。

そして群馬県民は現在200万人である。そして焼きまんじゅうは伊勢崎だけで生産されるわけではない。

ということは、群馬県民は1日に、100人に1人以上は、「必ず」1串の焼きまんじゅうを平らげるということになるのだ。改めて自分の故郷に戦慄し、かつなぜか尊敬心が湧いてきたのだった。

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