今回やりたいこと
ちょっとまだ伝わってないと思うので、説明すると
たとえば「愛してる」を左におき、重さを10とします。
5を2個置いたらぴったり釣り合うとして、「重さ5の言葉とは何か」を考えたい!
という実験だ。この場合は「愛してる」の半分ぐらいの気持ちで言える言葉を2個考えることになる。
一緒に考えてくれる後輩の山宮さん(左)と郡司さん(右)。「どうやる?」と不安を漏らす。あと簡易のてんびんも作った。てんびんって作れるんだなと思った。
「愛してる」以外にもいろんな言葉でバランスをとって見くらべたいので、まずは基準値のシートを作ることにした。
もうこの時点で人生分の「愛してる」を使い切った気がする。気持ちがずっしりしてきた。
「愛してる」が10なら「一万円貸して」は6
「愛してる」を10とした場合、0〜9には何が入るのか考えてみる。
「愛してるが10だと1はなんだろう」「うーーん、簡単に言える軽い言葉だから『しょう油とって』ぐらいじゃないか」
「じゃあ『つかれた』とかはそれ以下の0.5」「うん・へーとかあいづちはもはや0」「ひとくちちょうだいは2」コツがつかめてきた。
「言葉の重み」は言いづらかったり、言われたらずっしりくるレベルの話なのかもしれない。
「たのしそう」と映像作家の森翔太さんがはいってきた。「愛してるはたしかに10ですね。言えない…」とつぶやく。
「他人に対して『好き』もだいぶハードルありますよね」「10ではないけど、8はある」「『カラオケ行こう』も言いづらい」「でも3ぐらいかなー」
「僕はあれが言えないんですよ。たまに言われるんですけど『タメ口でいいよ』ってやつ」
「タメ口でいくかどうかは自分のタイミングで決めるから!って思うんですよ」「たしかにそうだ。4はある」「やばい、言ってしまってたかもしれない」主観につぐ主観がつづく。
絶対に賛否ある「そんなの人にもよるだろ」という表が仕上がってきた。
人見知りが集まったからか、他人をどこかに誘うフレーズがかなり上位にくる。
「言われるのはまだマシだが言うのは無理」という言葉が多い。
「あと9が難しいですね。10より低くて結構重たいやつ…」「あ!『一緒に会社やろう』はどうですか?」
「それは重たい」「めちゃくちゃに重たいな」「自分が言う方だったら手震えると思う」と笑いが止まらなくなった二人。
他にも出たアイデアをまとめ、これで一旦基準シートの完成である。表を見て満足した森翔太さんは仕事に戻っていった。
「自分ならどう釣り合わせるか」ゲーム
基準が集まったところで、表を参照しながら「自分ならこう釣り合わせる」を披露していくことになった。
まず最初のお題は
6の「引っ越し手伝って」だ。ようやくてんびんが役にたつ。
右だけにのせたのでまだバランスが悪い。てんびんだから当たり前だ。
さっき決めた表にしたがって左に「しょう油とって=1」と「旅行に行こう=5」をのせると
このように釣り合うという具合だ。本当にバランスが取れて笑ってしまう。
ちなみに「1」の重さ=チロルチョコ1つで換算しています。
釣り合えばいいので、のせるのは1ワードでもいいし2〜4ぐらいでもいい。自分なりの組み合わせで釣り合う言葉を考えていく。
まずは山宮さんだ。「ぼくは2個足して6になるやつでバランスをとります。まずは」
山宮「モーニング行こう=2.5をのせて」二人「朝食誘いづらいたしかに」「.5で刻むんだね」
山宮「汚れてもいい服で来て=3.5を置き、合計6です」
「引っ越し手伝って 6」=
「モーニング行こう 2.5」+
「汚れてもいい服で来て 3.5」
「汚れてもいい服で来てって思い起こすと人生で言うことあまりない」「たしかに言われたら緊張する」予想外の答えで笑ってしまう。
「家に汚れてもいい服なんてなくないですか?」と3.5にした理由を説明する。言われる度にまあまあずっしり感じていたらしい。面白い。
ちなみに私は「いま電話していい?=4」と「髪になにかついてるよ=2」の組み合わせで釣り合わせた。
「引っ越し手伝って 6」=
「いま電話していい? 4」+
「髪になにかついてるよ 2」
「たしかに電話していい?はかなり緊張感ある」「仕事でも友達でもちょっと緊張するよね」
念願の「愛してる」でバランスをとる
流れがわかったので念願の「愛してる=10」と好きな言葉を釣り合わせてみよう。
ラスボス「愛してる=10」だ。ちなみに後ろにはチロルチョコが10個ある。
郡司さんの挑戦。なんと3つ組み合わせて10にするという。
郡司「まずはあの本返してもらってたっけ?=4です」二人「あーーわかる聞きづらい」「言われた時も本当にドキッとするやつだ」
残りは「めっちゃ急いでる時にエスカレーターで2列になってる人に言う『すいません』=3」「おしぼりもらってもいいですか?=3」だ。この3つで愛してるに勝てるのかは不明だが体感の重さ的にはそろった。
「愛してる 10」=
「あの本返してもらってたっけ? 4」+
「めっちゃ急いでる時にエスカレーターで2列になってる人に言う『すいません』 3」+
「おしぼりもらってもいいですか? 3」
こちらは山宮さん。「座右の銘は?=4」と「人としてどうなの?=6」だ。
「人ととしてどうなの?を対面はかなり厳しい」「言われたらもう立ち上がれない」シミュレーションをしただけで心にずっしり来ておもしろい。こんなにずっしりが並ぶことも少ない。
「愛してる 10」=
「座右の銘は? 4」+「人としてどうなの? 6」
ちなみに私は「大学どこですか?=4」と「(Twitterで)#拡散希望 =6」。
「愛してる 10」=
「大学どこですか? 4」+
「(Twitterで)#拡散希望 6」
「あーーツイッターで拡散希望は本当に本当にできないですね」「気持ちはやりたい時もある」「大学も聞きづらいですね。確かに『明日休みます=4』に相当するかも」
そしてきちんと「愛してる」とバランスをとることができた。それでも10は重いように感じる不思議……。
ちなみに、10より重いものを話した結果「(親に本気で)産んでくれてありがとう」は14ぐらいあるんじゃないかという話になった。ちゃんと言えよ……という気持ちになるがたしかに相当覚悟がいる!みなさんはどうでしょうか。
重いも軽いも分類するとたのしい
表を作ったことで「ワロタ(0.2)を5個集めるとしょう油とって(1)に相当するか?」という謎会話が生まれて楽しかった。また、結構意見がわかれることもあり、人となりも見えてくる。ぜひ10より重いやつや「これは絶妙な6」とかを見つけたら教えてください。
「どうしても『引っ越し手伝って』は言いにくい」と頭をかかえる図。これは全員一致でした。
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