発端はインタビュー記事の発言
道民はダウンコートを着ない? 本当なのか。
謎の「道民はダウンコート着ない説」その発端はどこかというと、2021年10月に公開されたインタビュー記事(物わかり良さそうな人だったら恵庭を説明する~ジーンインタビュー)での僕の発言である。
そこでの会話をふりかえっておこう。それではリクエスト検証です。
こうして、「道民はダウンコート着ない説」が浮かび上がったのだ。これがうそだったら大変だ。話の流れで北海道民全てに奇妙なレッテルを貼ってしまった格好になる。場合によっては捕まっちゃうんじゃないだろうか。
でも僕は本当に道民はダウンコートを着ていないと思っている。言い張ってもいる。これにはきちんとした理論があって…
・ダウンコートはもこもこして暖かい
・でも北海道は街の暖房設備が充実している
・建物や乗り物に入る度に暑くなって脱ぐ必要がある
・もこもこが裏目に!かさばって面倒!
(・雪かきなど脱ぎ着しないだろうときはダウンコートを着る)
という流れでダウンコートを手放しがち(だと思う)なのだ。温度調節のための脱ぎ着においては、ダウンコート以外の薄いコート、たとえばピーコートやダッフルコートに軍配が上がるということである。雪国育ちの人間100人に聞いたら90人くらいが「そうだね」と言ってくれるはずだ。
僕がうそを言っているのか、そうでないのか。ライターとしての威信をかけて、ダウンコートの着用率を調べていこうと思う(自信満々に言っているようですがすげえ不安です)。
街なかでダウンコートを数えよう
ということで、北海道でのダウンコート着用率を調査する。僕の理論が正しければ、びっくりするほど着用率が低いはずである。ああ、ぜひびっくりさせたい。みなさん、びっくりする準備だけしておいてください。
今回は、街を歩いている人の服装を観察し、ダウンコートを着ている数をひたすら数えていく手法をとる。いわゆる野鳥の会方式だ。
場所は札幌駅前。ときは2021年12月16日 午後4時50分。ここから10分間、僕の目の前を通った人の数、そしてダウンコートを着ている人の数を数えることとする。
時間帯としては学校帰り・会社帰りの方々が多いようだ。しかしこの10分間、無心で数えているのみなので、正直「寒い」しか感想がないのである。
10分間、ダウンコートをカウントした結果はこうなった。
札幌駅前(2021年12月16日 PM4:50~5:00)
通行人数:282人
内ダウンコート数:102人
⇒ダウンコート着用率:36.2%
…あれ? 着用率を見てみると、全盛期のイチローの打率くらいだ。結構着ている…?
ちなみに、ダウンコートかどうかの判定はかなり甘めに行っている。一見してダウンコートかどうか判断できない着ぶくれ方をしている場合があって迷ったのだ。「それダウンコートですか」と聞くわけにもいかず、その場合はすべてダウンコートとして計上した。
ダウンコートを着ていない180人は、やはりピーコートやダッフルコートなどの薄めのコートが大半であった。若者を中心に、ふわふわしたボアジャケットを着ている人も多く見られた。
ボアジャケットはこんな感じのふわふわジャケットです
あとは10人弱、全く上着の類を纏わず、学生服やパーカーだけで頑張っている人も。コートを着ていない学生カップルが密着しながら暖をとっていて、そういうことね、と思いました。
いやいや、とはいえ、「道民はダウンコートを着ない」と言い切るにはかなり微妙な線の結果になってしまった。打率3割6分2厘のイチローに「全然打たないなあ」と言っているようなものである。
一発で結論を導けず、なんだかちょっと悔しい。うーん、物事を語るにはやはり相場を知る必要があるだろう! 他の都市のダウンコート着用率も調べて比較してみるしかない。
他の都市ではどうなのか
編集部 林さん・安藤さん、そしてデイリーポータルZをはげます会の会員の方々に協力いただいて、日本各地のダウンコート着用率を調べて比較することにした。
日本各地のダウンコート着用率よりも北海道の着用率が低ければ「道民はダウンコート着ない説」立証ということである。
こちらは本州の気温が下がることが予想された2021年12月27日夕方。気温も東京で3.4℃と、札幌とほぼ同条件だ。ルールは以下の通りに設定し、札幌でのカウント方法と極力近づくようにした。
<ルール>
・10分間での通行人数、ダウンコート着用数をカウント
・「ダウンコートか?」と迷うコートは全てダウンコートとしてカウント
渋谷・池袋・横浜・名古屋の4地点のデータが集まったので紹介しよう。
渋谷
渋谷では編集長の林さんにダウンコートをカウントしていただいた。人が多かったため、「目の前を通り過ぎた人」という条件をつけたとのこと。
若者の街、渋谷のダウンコート着用率は…。
渋谷(2021年12月27日)
通行人数:530人
内ダウンコート数:134人
⇒ダウンコート着用率:25.2%
25.2パーセント!全然ダウンコートを着ていない!
林さん曰く「若い女子はあんまりダウンを着てないですね」とのこと。シュッとしたコートやボアジャケットが人気なのだろう。若さが寒さに打ち勝っているのかもしれない。
池袋
池袋の調査ははげます会会員の方にご協力いただいた。寒い中すみません。ありがとうございました。
繁華街やら、若干のオフィス街やらといった印象がある池袋であるが、人々はダウンコートを着ているのだろうか。気温はひと桁、寒いのでみんな着ていてもぜんぜんおかしくはないが…。
池袋駅(2021年12月27日 17時)
通行人数:803人
内ダウンコート数:295人
⇒ダウンコート着用率:36.7%
札幌市は着用率が36.2%であったのでほぼ同じ…あれ?? すこ~しだけ着用率は高いが、正直それほど変わらない。
「ウールのコート、ユニクロ的もこもこを着ている人がそれなりにいた印象です!」とのことで、札幌でも東京でも、ボアジャケットのようなおしゃれ上着が流行りつつあるのかもしれない。
横浜
続いて横浜の結果を見てみよう。横浜もはげます会会員の方にご協力いただきました。本当にありがとうございます。
横浜駅(2021年12月27日 17時)
通行人数:160人
内ダウンコート数:72人
⇒ダウンコート着用率:45%
横浜はダウンコート着用率が45パーセント。ダウンコート率高めと言っていいのではないだろうか。海風で冷えるからダウンコートを常備しているのか、なんて思ったが、横浜の気温は6.2℃と若干高め。なぜだ…。
名古屋
名古屋は編集部の安藤さんに担当頂いた。ありがとうございます。
この日の名古屋の気温は3℃と、ダウンコートへの期待が高まる冷え方だ。着用率はどうだろう。
名古屋(2021年12月27日 17時)
通行人数:200人
内ダウンコート数:92人
⇒ダウンコート着用率:46%
名古屋も46パーセントとダウンコート着用率高めだ! 日本のより南側に住んでいる方は寒くなったら即ダウンコート!という判断になるのだろう。
結果をまとめると…?
ダウンコート率しらべの結果をまとめてみる。
いちばんダウンコートを着ていないのはなんと渋谷(25.2%)であった。さすが若者の街。「ファッションは我慢」とよく言うが、寒さを我慢しておしゃれを取っているのであろう。
結果、ダウンコートを着ていない順は
渋谷 < 札幌 < 池袋 < 横浜 < 名古屋
であることが判明した。
道民は、「やや」ダウンコートを着ていないのだ。
あながち間違いではなかった
ライターとしての威信をかけて行った「道民はダウンコート着ない説」の調査であるが、結果は「やや」実証であろう。渋谷が例外になっているのは、通行人の年齢層が明らかに若かったからだと考えられる。おそらくダウンコート率は若さとも比例するのだ。
今度からは「北海道民は『やや』ダウンコート着ないんすよ~」と言いふらしていこうと思う。
全国転勤アリのアパレル業の方に、コートの種類別売り上げを聞いてみたい。地域差があれば面白い。北海道だけダウンコートの売れ行きが鈍ければ、この説は「かなり」実証になるのでは!