特集 2019年6月2日

ごはんに合うフレンチ調べ(デジタルリマスター版)

すいませーん、ごはんください

ふだん、食にはほとんどこだわりなどないのですが、年に一度くらいはフランス料理のお店を予約して、ちょっと贅沢な食事に行くことがあります。

美しく彩られた前菜、スープを味わって、いよいよメインの料理を口に運んだとき、あまりの美味しさにいつも思うことがあります。

「あー、白いごはんがほしい。」

比較的濃い味つけの多いフレンチのメイン料理なら、パンだけでなく、きっと白いごはんにもぴったり合うのではないかと思うのです。

でも、そんなお店で「ごはんください」と言うわけにはいかないので、自分で試してみることにしました。

2008年10月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載しました。

1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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誰がフレンチを作るのか

さて「自分で試す」と言っても、僕にはフレンチなんて作れるわけがありません。そこで協力をお願いしたのが、僕の妹の夫、つまり義弟で、とある有名なイタリア料理店で料理人として働く早川くん。ちなみに妹も中華や和食やモロッコ料理(!)などのお店を転々とする料理人。

二人ともフレンチは専門ではありませんが、「やってみたい」と快く引き受けてくれました。

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今日の料理長、早川シェフ

ところで今回は実家で料理をしてもらったので、写真の背景が実家らしく散らかっていると思いますが、そのあたりはご了承いただけたら幸いです。

 

調理開始

企画の趣旨は「ごはんに合うフレンチのメイン」を探すことですが、早川シェフにはメインとして定番と思われる牛肉、魚、鴨、フォアグラの4種類の食材を使って、メニューはお任せで料理を作ってもらいました。

調理中、僕は手伝えることがないので、写真を撮ったり妹が出してきたパンをかじったりしながら、今まであまりキチンと話をしたことがなかった早川くんとのコミュニケーションを試みました。

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本日の食材たち
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「これでも食べてて」と出されたガーリックバタートースト(君らふだんこんなうまいもの食べてるのか)

「フレンチは初挑戦なので、緊張します」と言う早川シェフですが、義兄からの意味不明なリクエストにも関わらず、あらかじめ自宅でソースの仕込みをしてきてくれるなど、さすがプロという仕事ぶり。変なこと頼んで本当にすみません。

今日の意気込みを聞くと「おいしくできればいいな」と謙虚なコメント。

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魚(鯛)に包丁が入ったと思ったら
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あっという間に切り身に、そして小骨も丁寧に除去

 

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鴨には細かく切り込みを入れて
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慎重に塩胡椒する背中に兄貴大感激

聞けば、高校を卒業して上京してから料理を始めたそうで、専門学校などに行くこともなく、いきなりレストランに就職。その後いくつかの店で経験を積んで今のイタリアンに入ったとのこと。「でも和食がいちばん好きですけどね」と笑う料理人歴6年目の24歳。7歳も下のこんないい男を捕まえた妹よ、ほんとうにでかした!

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少しぎこちなく会話をしている間に、鴨も
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牛肉も下ごしらえ完了

 

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残った鯛のアラは焼いてダシをとって 
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メニューにはないスープを作ってくれた
賄いだー!

肉や魚の下ごしらえをするのと同時進行で、火にかかった鍋の中では、その肉や魚の味を引き立てるさまざまなソースが作られています。

その模様を、カメラを持って横から後ろから見ていると、まるで料理の鉄人のキッチンスタジアムの中にいるようで、「福井さん!」などと心の中で実況してしまいました。

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ヘラでかき混ぜてるだけなのにプロっぽい
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いくつもの鍋が同時進行

    

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いきなりオレンジを切ったと思ったら果汁を鍋へ
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ソースにオレンジも驚きだけど片手で潰す姿に惚れそう

そうこうしているうちに、すべての下準備が整ったらしく、ついにフライパンが登場。そこに、一品目のフォアグラが投入されました。

いよいよ試食です!    

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まさか実家でフォアグラを見る日が来ようとは
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フレンチだー!と一同大歓声の瞬間

 

一品目:
フォアグラとふろふき大根のミルフィーユ仕立て
ほうれん草のソース

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これを目の前にして「うまそう」とかアホみたいな言葉しか出てこない

フォアグラを使った一品目は、ブイヨンで煮込んだ洋風ふろふき大根の上にソテーしたフォアグラを重ね、ほうれん草と炒めたタマネギなどをミキサーにかけてペースト状にしたソースでいただく、意欲的な一皿。明らかに洋の食材であるフォアグラと、和の食材である大根、そしてほうれん草のソースが奏でるハーモニーはどんな音色なのでしょうか。

と、ここまでは料理の鉄人の実況だった福井アナの声で読んでください。

個人的には、フォアグラの少しクセのある油っぽい感じは、例えばウニやからすみのように、珍味としてごはんに合うのではないかと思っているのですが。

「本当はこれを2段に重ねてミルフィーユっぽくしたかった」という早川シェフ。急遽同じものを2皿作ることにしたためミルフィーユではなくなりましたが、そんなことは気にせず、いただきます!

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明らかに違和感のあるセッティング 
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さっそくいただきます

 

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急いでごはんをひとくち
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もぐもぐ……うーん……

結果から言うと、フォアグラは想像していたほどごはんに合う、というわけではありませんでした。この一皿自体は、濃厚なフォアグラとスープが染みた大根のさっぱり感がちょうどよく混ざり合って、そこにほうれん草のソースが一本筋を通して束ねる感じで、いくらでも食べられそうなほどおいしいです。特に、味の濃い同士であるフォアグラとほうれん草のソースをマッチングさせたのはすごい。早川くん、きみ本当にフレンチ初挑戦か!?

しかし、フォアグラ独特の臭みが白米の臭みと見事にぶつかるので、これが合うと感じるかどうかは好みが分かれそう。早川シェフは「ごはんイケる」とかき込んだものの、「やっぱりフォアグラにはごはんだよね、というほどではないなあ」との感想。

ごはんとの比較のためにいちおうパンも用意しておいたのですが、この味つけだと大根もまったく問題なく、相性はバッチリ。

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でも「これはヤバい、うまい」と完食の早川シェフ
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パンはまったく問題なく、おいしい

なんだか惜しい感じですが、味つけ以前に風味の問題なので解決は難しそう。ただ、ひょっとしたら新米が出る直前という時期が悪かったのかも知れません。

ごはんに合う度:    ★★
パンに合う度:     ★★★★

 

二品目:
真鯛のポワレ タイム風味のきのこクリームソース
ハッシュドポテトを添えて

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見た目は当然として香りも凶悪にうまそう

二品目は真鯛のポワレ。表面をパリパリに仕上げ、その上に同じくパリパリにしたハッシュドポテトが載っています。下には濃厚なきのこクリームのソースが敷きつめられ、見た目だけでなく香りでも惹きつけられる一品です。

ぐわああああ。これはうまそうだ!でも、クリームソースがごはんと出会ってどうなるかがまったくの未知数。

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ではいただきます
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こ、これは!(ちなみに後ろでTVを観てるのは父です)

これはうまあああああい!!

まず鯛もポテトも表面パリパリ、中から脂がじわっと出てきてそれだけでも十分うまいのに、このクリームソースとの相性が抜群。そして、ごはんとの相性もバッチリ。ひとくち食べて魚のパリパリ感を口の中で感じた瞬間、脳が「ごはんくれ!」と全身に指令を出すのが分かるほどです。

さすが真鯛!もともと和食にもよく使われる素材だけあって、魚の脂とごはんが最強のタッグを組みます。

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早川シェフ「これは合うねー」
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パンにソースをつけて食べてもおいしい

しかしきのこクリームソースがごはんとケンカしないのは意外でした。理由を考えていると、早川シェフが「リゾットに近い味だからでは?」とのこと。それだ!

もちろんパンとの組み合わせもまったく文句なし。ごはんでもパンでも、自信を持ってお勧めできる一品となりました。

ごはんに合う度:    ★★★★
パンに合う度:     ★★★★

これだけ合う合う言っているのに4つ星なのは、このあとに肉料理が2皿控えているから。「牛肉は、これを越えてくるのではないか」という全員の期待感があったからです。

 

三品目:
鴨のポワレ オレンジソース
きのこのソテー添え

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これをごはん以外の何と食べろというのだ

三品目はいよいよ肉!鴨の表面をカリッと焼いて、先ほど絞っていたオレンジを使ったソースをかけたもの。

フルーツ、しかも柑橘系のソースに若干不安を感じていたところ「鴨にオレンジソースは定番ですよ」とのことで、俄然食欲がみなぎってきます。

とにかく、表面を香ばしく焼いてある鳥の肉がおいしくないはずありません。鴨はほとんど初体験に近いですが、さっそくひとくち。

 

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最初と比べてごはんが減ってきているのに注目
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一口食べてあまりの旨さに呆れ笑い

うまい、これうまいよ早川くん!

甘くて香り高いオレンジのソースが歯ごたえのある鴨肉にベストマッチ。鴨って、あの公園とかでのんびり泳いでる鴨ってこんなにうまいのか。なんだか彼らを見る目が変わりそうです。

ところが、ごはんとの相性となると、肝心のオレンジが邪魔をしてダメでした。鴨とオレンジソース、鴨とごはんの相性はいいのに、オレンジソースとごはんがどうしても仲良くしてくれません。作る前から「オレンジソースがごはんと合わないかも」と心配していた早川シェフも、一口食べるなり「やっぱりこれはごはんじゃないね…」とポツリ。

気が合いそうだと思って、自分の友達を別の友達に紹介したのにあまり話が弾まなかった、というシチュエーションがたまにあると思いますが、まさにそんな感じです(分かりにくいですね)。

でも鴨肉を食べると、やっぱりごはんが欲しくなる。オレンジソースはおいしいけど、ごはんには合わない。味覚のメビウスの輪に突入です。

しかし、今回もパンはまったく問題なく受け入れてくれます。そういえばフルーツと甘味料の塊であるジャムとも相性がいいし、パンの懐の深さを思い知る結果となりました。

ごはんに合う度:    ★
パンに合う度 :    ★★★★

 

 

四品目:
牛ヒレステーキ 赤ワインソース 黒こしょう風味
いろいろ野菜のソテー添え

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どう考えてもごはんに合わないわけがない

はい、最後の一皿で本日の真打ち登場です。何をどう考えても牛肉のステーキがごはんに合わないはずがありません。

ちなみにソースは刻んだタマネギを赤ワインとフォン・ド・ボーで煮詰め、そしてハチミツが入った濃厚な味。ま、確認するまでもないですが、ステーキを味わいつつ、いちおうごはんとの相性を見たいと思います。

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この歳になってもステーキに最初のナイフを入れるとき緊張する
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うますぎて笑いが止まらない

あはははは、いやー、うまいねえ。

もう文句ありません。焼き加減も、肉の柔らかさも、ソースとの相性も。そして当然のことながらごはんにも最高に合う!

これに関してはその場にいた全員、満場一致で星5つ確定です。よほど突飛な味つけをしない限り、ごはんに合わないステーキなんてものはこの世に存在しない、と言い切っていいでしょう。

ノービーフ、ノーライス。

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自分の分の盛りつけはかなり雑で面白い 
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急遽作ってくれたアラ汁も超うまかった

ちなみにこのページの写真が少ないのは、鴨と牛肉があまりにおいしすぎてその場にいた全員が食べることに没頭していたからです。

ごはんに合う度:    ★★★★★
パンに合う度:     ★★★★★

というわけで、膨大な種類の中からほんの一部のメニューでごはんとの相性を調べてみましたが、きっと全部合うと思っていたところ思わぬ結果が出ておもしろかったです。特にフォアグラは合うだろうと思っていたので意外でした。鴨は、いつかこってり系の甘辛ソースでごはんを試してみたいです。

でもそれよりなにより、フレンチ初挑戦にも関わらずおいしい料理を次々に作る早川シェフの手腕に感動。これからも末長いお付き合いを、どうぞよろしくお願いします。今度お店に食べに行きます。


うまかった

というわけで、いかがでしたか。今週の「ウチの義弟自慢」。

義兄としてはただ写真撮って食べるだけの、これ以上ない取材だったわけですが、こんなことばかりお願いして信用を失わないように気をつけたいと思います。

あと、今度は「パンに合う和食」を調べるのはどうかと提案したのですが、「和食にはやっぱりごはんだよねえ」という意見で一致したので却下となりました。

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鯛をアラ汁でお茶漬けにしたらこれも超うまかった
記事に協力いただいた早川シェフのお店はこちらです。

 

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