デジタルリマスター 2023年9月26日

さようなら、80歳のケーブルカー(デジタルリマスター)

これに乗りたくて訪れるお客も少なくないという

お話を聞いた後だとますますこのケーブルカーに愛着がわいてきた。僕はまったく初めて乗ったのだが、お客さんの中にもこれが好きで訪れる人がいるんじゃないのか。

やはりリピーターのお客様はこのケーブルカーをよく覚えいただいていますね。先日も50年前に新婚旅行で訪れて、という方がケーブルカーがなくなると聞いてまた泊まりに来てくださいました。

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登りもやはり心配になるくらい急勾配です。
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不便さもあるが、それがまたいい

「私たちは下の寮に住んでいますから、外へ出かける時には必ずこれに乗るわけですよ。朝でも夜でも。急ぎませんよ、緑の中を登っていく、このゆったりした時間が好きなんですね。」

一緒に乗った従業員の方はこう言っていた。

「ケーブルカーには灯がないから、夜なんかは真っ暗なんですよ。でも周りの灯がほんのり景色を照らすから、それはまた落ち着くんです。」

支配人は「従業員も新しいものへの期待が大きい」なんて言っていたが、やはりみんな心ではこの車両が好きなんじゃないかと思う。

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細かい部分を見るとやはり年代を感じさせますね。
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一生懸命登っては降りる。80年間変わらない風景。

登りは下りに比べて恐ろしさはないが、ケーブルが軋み、車体がガタガタいう度に一生懸命登っていくその姿を応援したくなる。

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カーブでは車輪とケーブルを軋ませながら一生懸命に登っていきます。
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6分で上の駅に到着。
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すでに愛着が沸いてきている。
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運転制御室はこの中にあるのですが。
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これがまた年季入っているのだ。
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ロープウェイもすごいらしい

全国的にも珍しい私設のケーブルカーを紹介したが、実は箱根にはもう一つすごいのがあるのだと支配人に教えてもらった。

それは私設のロープウェイだ。

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自家用空中ケーブルカーとはいったい。

こちらは隣にある温泉旅館へと下るためだけに運転される乗り物なのだ。定員は5人。のんびりと降りていくその姿はよく整備されたクラシックカーを愛でているような気分になる。

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それにしても衝撃のフォルムだ。
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こちらも現役だからすごい。
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ケーブルカーが新しくなるまでの期間、これに乗ることができるようです。

実はあのケーブルカーの改装工事中はこちらのロープウェイで振り替え輸送を行ってくれるのだとか。これはこれで魅力的な話ではありませんか。


ケーブルカーに乗れるのは5月まで

80年の歴史を持つ私設ケーブルカーは今でも現役で稼働していた。しかしその姿を見られるのは5月いっぱいとのことなので、思い出を作っておきたい方は今のうちにぜひどうぞ。

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温泉へ向かう人と温泉から帰る人がゆっくりとすれ違う。たくさんの思い出を運んできた車両なのでしょう。

 

編集部より:本記事公開の2009年のあと、2013年8月末に対星館さんは営業を終了されたとのことです。

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