特集 2022年4月24日

76年前のファッション誌をもとに服をコーディネートする

「流行はめぐる」とよく言われる。

言われるたびに思っていたが、「めぐる」ことがわかっているなら、最初から昔の流行に従っておけば話が早いのではないか。

昔から流行にはかなりうといタイプだったが、起死回生の必勝法を見つけてしまったかもしれない。

家にあるものを活用しつつ、昔の流行を参考にして、トレンディな存在に生まれ変わろう!

 

どうでもいいことを真剣に分析してみる記事をたくさん書いているエンタメライター。音楽や映画が特に好き!

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流行がどれくらいのスパンでめぐるのかわからない

昔の流行を知るために、やってきたのがここだ。

東京・神保町の古書街。アパレルショップは見当たらない。

「古本ならなんでもそろう」と言われるこの街で、私は昔の流行、いや、最先端のファッショントレンドを仕入れるのだ。

雑誌の古本専門店で、女性ファッション誌を3冊ゲットした。

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古本屋に来てから気付いたが、「流行はめぐる」とは言うものの、実際にどれくらいの頻度でめぐるのかがわからない。しかたないので、とにかく古いファッション誌を買ってみた。

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これでトレンディになる準備は万端だ。

いにしえのファッショントレンドを参考に、最先端に生まれ変わろう!

昔のファッション誌には急に文豪があらわれる

まず参考にしたのは、女性誌『それいゆ』。

画家・中原淳一が作ったことでも知られる雑誌だ。

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表紙がめちゃくちゃ怖い。
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あと、元の値段がめちゃくちゃ安い(160円)

今回のメインは「昔のトレンドを参考にしておしゃれになる」ことなのだが、そのまえに昔の雑誌に書いてあることが興味深すぎたので、とりあえず中身を紹介したい。

まずは目次だ。

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こうして見るとよくわからないが...
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つまりぜんぶ結婚の話だ。

内容の80%ぐらいが結婚の話だ。あの手この手で、ひたすら結婚の話をしている。

大半は「異性で友情は成り立つか」「結婚したらどれくらいの広さの部屋がよいか」などなど、令和でもありそうな企画なのだが...

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急に、明治生まれの”文豪”がひょっこりあらわれたりするので気が抜けない。

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「ほんとうの戀愛は自分を高めるのが一つの條件で、其處に戀愛の妙味がある」らしい。いい話だが使っている漢字が難しすぎる。

さらに興味深いのが、着回し講座だ。

令和でも「着回し」は定番の企画のひとつだが、1950年にはこうだった。

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着回しは、”つくれる”。

着回しと聞いて、コーディネートを思い浮かべるのは甘えである。1950年における着回しとは、針とハサミで"つくる"ものなのだ。

さらに着回すスパンもケタが違う。1日ごとに着回しなんて野暮なことはやらないのだ。

気に入った服は、1年ごとに着回していく。これが最先端の1950年スタイルである。

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うかつに1950年をまねするとスナフキンになる

それではいよいよ、ファッション誌を参考に自分の服をコーディネートしていきたい。

とはいえ、1950年は「おしゃれ=自分で布を買ってきて作る」が当たり前。

服を作ったことすらない私が参考にするのは難しく、悩んでいると『それいゆ』の中にこんな言葉があった。

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ヴォーグや、バザァを見ると(中略)私達もその線迄かけ足をしなければならない様に思う人はいないでしようか。(中略)
あせる事はありません。

海外ファッション誌の「ヴォーグ」や「バザァ」を見てあせる事はないように、私もまた『それいゆ』を見てあせる必要はないのだ。

自分にできるところからまずはコツコツやっていこう。というわけでまずは参考にしやすそうなこのコーディネートにチャレンジする。

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スッとしていてなんかおしゃれ。

『それいゆ』の中でも特にモダンなこちらのスタイル。本文の説明をもとに、手持ちの服を組み合わせて再現していく。

このとき、忘れてはいけないのがヘアスタイルだ。

ファッションは総合格闘技。服装だけで満足せずに、ヘアスタイルまできっちり50'sトレンドをおさえたい。

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今回参考にするのはこのヘアスタイル。

どうやら1950年代は「髪の毛をそのまま下ろす」のが珍しかったようで、パーマを当てたり、アップに結ったりするのが普通だったようである。

その中でも、特に『それいゆ』に多かったのが「帽子をかぶる」だ。

令和のいま、帽子がそこまでトレンドな気はしないが、『それいゆ』が言うならそれがナウでトレンディなのだ。

「帽子」がめぐりめぐっていまの流行になると信じて、家の中でコーディネートに使えそうな帽子を探してみる。

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とりあえず帽子を見つけた。
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ちょうどいい羽根も見つけた。
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くっつけた。

たまたま家にあった羽ペンの羽根を、そのあたりの帽子にテープでくっつけた。

おしゃれになる予定だったのに、すでにクオリティに難のあるアイテムができあがってしまってかなり不安だ。

が、ここは『それいゆ』を信じよう。

そして出来た「家にあるアイテムで再現した1950’sファッション」がこれだ。

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「モノクロしか着れないスナフキン」みたいなファッションができた。これは本当にトレンディなのだろうか。

自分ではフェアな評価ができなかったので、周りの人に聞いてみた。

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がんばって誘導尋問したのに「昔っぽい」と繰り返し言われた。

思っていた展開と違ってだんだん不安になってきたが、最先端のトレンドをいくというのはそもそもリスキーなものなのだ。

諦めずに信じてこのまま突き進もう。

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続いてはこちら。説明書きによれば、ボタンをつけずに安全ピンにしても「面白い」。

雑誌の本文に「面白い」と書かれている時点で不安だが、これならすぐに参考にできそうだ。

髪型はこちらのスタイルを採用。

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確かにこういう三角布のヘアアイテムってあるよね!

こういう昔のヘアアイテムは、映画などでなんとなく見たことがある。

『それいゆ』と記憶を頼りに、家のハンカチーフをひっぱりだして、トレンディに仕上げたのがこちらである。

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完全に清掃スタッフだ。最先端ファッショントレンド感はかけらもない。

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見えにくいが、胸にはきっと清掃に使うのであろう安全ピンが輝いている。

何がだめなのかわからないが、何かが致命的にだめなファッションになってしまった。1950年のトレンドは、私にはまだ早いのだろうか。

76年前にも「人への贈り物を粗品というのはいかがなものか」と言われていた

『それいゆ』がハイファッションすぎたので、もう少しカジュアルな雑誌として、『スタイル』を参考にすることにした。

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さらにさかのぼって1949年。表紙もちょっととっつきやすい。
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価格も『それいゆ』の半額以下の60円。

『スタイル』も、『それいゆ』と同じように結婚の話がかなり多い。

が、突然「歌い方講座」が始まったり、頑張りたくない人のための朝の手抜き講座が始まったり、『それいゆ』よりちょっと意識低めのありがたい雑誌だったようだ。

そんな『スタイル』の中でも驚くべきなのがエチケット講座だ。

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贈り物を差し出すとき「粗末な品でございますが」などといふのはくだらない自己卑下だといふ話がちかごろの常識である。

「ちかごろの常識」が、どれくらい「ちかごろの常識」だったのかわからないが、少なくとも76年前にも「粗品っていうのはどうなんだろう」と思っていた人はいたらしい。なんだか元気が出る話である。

『スタイル』には人生相談コーナーもあり、恐ろしいほど長文の相談が寄せられていた。

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「婚約していた男性が、知らぬ間に他の女性と結婚した。泣き寝入りしかないのだろうか」という女性からの相談。ご存命なら102歳の方である。
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「今年から家庭裁判所といふものができました」という1949年にしかできないアドバイスが。

回答欄に書かれた「今年からできた家庭裁判所」というセンテンス、あまりにもパンチがありすぎる。まさに1949年にしかできないアドバイスだ。

家にあるアイテムで再現したら意味のわからない物体ができた

そんなカジュアルファッション誌の『スタイル』の中で、今回参考にしたいのがこれである。

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春のブラウス特集のひとつ。

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真っ白なブラウスに、赤いサッシュを大きく結んだら、あなたはその夜の女王様です・・・

その夜の女王様ってなんだ。なんだかわからないが私もなりたい。ブラウスにサッシュを結んだら、私もその夜の女王様になれるだろうか。

手持ちのアイテムを見てみると、ブラウスとスカートはいいとして、問題は「赤いサッシュ」だった。

そんな都合がいいものはなかったので、たまたま家にあった着物用の赤いひもをひっぱり出す。

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すごい長い。
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結んでみると...
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意味のわからない物体ができた。

完全に意味のわからない物体を首につけている人になってしまった。

が、ここで引いたらトレンディな存在にはなれない。一旦このまま押し切ってみよう。

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「意味のわからない物体を首につけたレストランスタッフの写真」が撮れた。

想像とまったく違ったが、少なくとも意味のわからない物体を首につけたレストランの女王様になれて満足だ。

1950年頃のファッショントレンドのコツかつかめてきたのかもしれない。

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何かわからない写真ばかりが撮れる

最後に参考にするのは『すたいるぶっく』だ。

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終戦からまだ1年しか経っていない頃の雑誌。元の値段は価格破壊の「25円」。

こちらはファッション誌というよりも、ほとんど手芸誌らしい。

というか、この時代のファッション誌はどうもほぼ手芸誌だったようなのだが、その中でも『すたいるぶっく』は、かなり手芸誌よりのものだったようだ。

さっきまでの2冊と違い、読み物はほとんどなくひたすらコーディネートのイラストを載せている『すたいるぶっく』。

この中で、特に参考にしたいのがこれだ。

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1946年のオフショルダー。攻めのファッションスタイルである。

これがトレンドの最先端だというのなら、やってやるしかないだろう。

手持ちの服をあさって、『すたいるぶっく』を再現しよう!

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完全に「肩の桜ふぶきを見せつけている人」の動きである。趣旨が見えない。これは何の写真なのか。

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似てはいる。

いろいろファッションを試した結果、最先端のトレンドをつかんでおしゃれになるというよりも、家にある手持ちのアイテムで謎の写真を撮るイベントになってしまった。

が、この撮影のおかげで、一生着なさそうな服やアイテムに光を当てることができた。きっと、アイテムの方も喜んでいるに違いない。


やっているうちに楽しくなってしまって、変な写真ばかりを選んだのだが、ちゃんとやればちゃんとおしゃれになるコーディネートもけっこうあった。

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要は、変なアイテムで再現しようとしなければよかったのだ。

とはいえ、好きなアイテムで好きに楽しむのがファッションの醍醐味のはず。

そう思うと、「好きなものを選んで着る」のがいつの時代も一番トレンディなのかもしれない。

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