特集 2022年6月30日

45年前にブラジルで発行されていた移民向け日本語雑誌が、パラレルワールドの日本みたい

月刊セクロなる昔の雑誌に目がいき心奪われた。

見たこともない古雑誌に出会った。日本語の雑誌だが、どんな雑誌だろう?と検索しても、古すぎるのか詳しい情報が見つからなかった。

雑誌の名前は月刊セクロ。

ブラジル・サンパウロでおよそ45年前に発刊された雑誌だ。古いだけではなく、海の向こう、いや、地球の裏側で発刊された日本人移民向けの雑誌だった。

僕は夢中になって読み進めた。

変なモノ好きで、比較文化にこだわる2人組(1号&2号)旅行ライターユニット。中国の面白可笑しいものばかりを集めて本にした「 中国の変-現代中国路上考現学 」(バジリコ刊)が発売中。

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値段は40クルゼイロス。地方定価43クルゼイロスとあるが、おそらくブラジル日本人移民が多いサンパウロが40クルゼイロスでそれ以外が43クルゼイロスだと思われる。

50年近く前のブラジルの日本人移民向け雑誌

1975年頃の雑誌というだけでも面白いのに、さらに地球の裏側の日本の移民がブラジルで発刊していた日本語雑誌であり、二重で面白い。面白いに決まってる。

当時30歳の人が記事や漫画を書いていても、今では75歳ということになる。

いったいどんな内容なのだろうとページを開いていく。

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今の雑誌と同じように、目次もあり広告もある
「みそ汁とごはんで、今日は日本食。」うんうん、大事だよなあ
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当時のブラジル在住日本人向けの記事だが、どれもあまりに興味深い。

それぞれの号をパラパラとめくる。

日本の雑誌同様、記事と日本語の広告があって、中には漫画もある。

記事の内容は有名人スキャンダル、酒と食事、色に溺れた男女の話と定番だ。探検系もあり、本当に「一行はアマゾンの奥地に行ってみた」記事がある。

加えてブラジル在住ならではの苦労話や記録の話がある。今も外国で発刊される日本人向け雑誌にはよくあるネタだ。

食事は今も昔も定番ネタ

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「日本ブラジル飲み食い比べ」「値段變(変わ)らぬ日本食」
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当時日本さながらの店がブラジルのサンパウロにできていた。ガチ中華ならぬガチ日本だ。
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当時のサンパウロの東洋人街「リベルダーデ」地図!
バロンデ・イグアッペとR.アメリコ.デ.カンポスという通りに日本料理屋が集中する。
今はどうなんだろう。
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「最初にすみ始めたころは味噌や醤油もなくて手作りだった」という外国ならではの苦労話も。今でも納豆が手に入らず自作する在外邦人はいる。
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「一行は珍味を探しにアマゾンに向かった」これができるのがブラジル在住者の強みである。

「ブラジルは物価は安いけれど、日本食の値段は物価高の日本と変わらない。昼食は日本のサラリーマンランチ(800円)並みで、生魚は高くて、かといって板前の腕がいいわけでもない」と書かれている。今も世界中で日本人が愚痴りそうなことが書かれている。

それにしても当時の日本円で800円となると、今よりも高いのではないだろうか。

また当時の日本料理屋の習慣で、頼んでなくてもあれもこれもとどんどん料理の小皿を出してくるので、結果高くつくといったことが書かれていた。

いつの時代も、海外の日本料理屋のちょっと異なる習慣に合わせる努力が必要みたいだ。

いったん広告です

約50年前の在外邦人人間模様

ネットがない当時、人間関係でいいたいことはおそらく食事の席や、ご近所さん同士で噂話として発散していたのだろう。そしてこの雑誌でも。

日本的な人間関係が嫌とか、若い人は駄目だとか、奥さんが素敵だとか、女房には文句は言わせないとか、現地で騙されたとか、今でもありそうな話がもりだくさんだ。

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「ドロドロの人間関係の日本がいや!」でキラキラしたエリート一家がブラジルに。
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日系ブラジル人の若者がせっかく日本に留学してもアルバイト三昧とは、最近の若いもんは……的な記事。いつの時代も最近の若いもんははあるものだ。
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ブラジル人女房バンザイ記事。現地の人にいろいろ仕事で助けてもらう中で、うまくいって職場結婚に、という展開はよくあるらしい。移民の国なのか、奥様もたどればイタリア系というケースも。
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息子の現地人との結婚に驚く在外邦人あるある。歴史は繰り返す。
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二世はブラジルになじみ、日本からやってきた日本人両親は悩み馴染めず閉鎖社会の中で暮らすという指摘。


家電メーカーがブラジルでも強かったあの頃

月刊セクロの広告を見ると、ソニーやナショナル(現パナソニック)やNECやサンヨーなどの家電メーカーの名前があった。テレビはまだ白黒テレビとカラーテレビがどちらも売られている、と書かれていた。

あとは飲み屋の広告や、業務用の工作機械、それにブラジル国内旅行や日本帰国のための旅行社の広告が目立った。地球の裏に移動するには途中で何回も乗り換えねばならず、費用も時間もかかるのだ。

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ブラジルと共に歩んだソニー。
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家族の幸せの場にあるナショナルは今のパナソニックだ。
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仁丹もブラジルで売られていた。
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男性の社交場の広告は多いが、一方で女性向けの化粧グッズの広告も。

他にも場所や時代を感じる記事あれこれ

他にも有名人のブラジル秘話的な記事があるんだが、なにせ50年近くも前で、よく知られてそうに書かれている人でも、アントニオ猪木の真相記事くらいしかわからないのだ。

それ以外の当時のブラジル日本人社会を感じるおっ!と思えた記事を紹介しよう。

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ブラジル競馬を紹介する記事。日本人の競馬ニーズは地球の裏でも。
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スマホはないが電卓はある。電卓での即興手品を紹介する当時ならではの記事。
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バブルで盛り上がった80年代は結果的に景気後退を招くと予測も。心配にこしたことなし。
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1999年12月31日、人類滅亡の予言も!

外国在住の興味関心や悩みは今も昔も変わらなかった

50年弱の月日が経過した雑誌だが、今の外国在住日本人と当時のブラジル移住日本人で、悩むことや関心事はほとんど変わっていなかった。日本国内における外国人との共生のヒントや知恵も、実はこの雑誌にあるかもしれない。

日本にいるブラジル人の多くが日系ブラジル人だ。彼らに会って話を聞くと、この雑誌のことを思い出して語ってくれるかもしれない。

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